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憑く相手

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第一章

               憑く相手
 近頃電々犬は不本意だが高天原から送られてきた神の一柱、何でもアメノウズメとかいう女神によく言われていた。
「あんたに悪気がなくてもよ」
「わしが気に入った相手はじゃな」
「そう、栄えるけれど」
「その後で滅びるか衰える」
「そうなるのよ」
「難儀なことじゃのう」
 電々犬は愛用の煙管で煙草を吸いつつ女神に応えた。
「わしはただじゃ」
「気まぐれにだね」
「人間の世界を歩き回ってな」
 そのうえでというのだ。
「人を見て街に入って国を巡ってな」
「そうしているだけよね」
「そうじゃ、悪気なんぞじゃ」 
 そうした気持ちはというのだ。
「一切ないんじゃ」
「それは私もわかっているけれど」
「わしのせいで罪のない人や街や国が滅んだり衰える」
「それよ。栄枯盛衰は確かにあるわ」
 世にとだ、女神はそれは言った。
「けれどあんたが興味を持って勝手に人や国が衰えるとね」
「勝手に栄えてじゃな」
「私達としては都合が悪いのよ」
 高天原の神々にしてはというのだ。
「だからそこは気をつけて欲しいのよ」
「わしは何かに興味を持ってはいかんのか」
「そこまでは言わないけれど」
「いや、結局そうなるじゃろ」
 煙管を吸い続けながらの言葉だ、外で大きな岩の上に座って自分の傍に立つ女神に話していっている。
「そちらの話だと」
「それはそうかも知れないけれど」
 女神もそう言われると否定出来なかった、いつも明るい感じの表情もこの時ばかりはどうにもという顔になっている。
「けれどね」
「興味を持つ相手は選べか」
「そうなるわね」
「そうか、じゃあどんな相手ならいいのじゃ」
 電々犬の方から女神に問うた。
「わしが興味を持つ相手は」
「栄えさせて衰えさせる相手は」
「そうじゃ、誰がいいのじゃ」
「そう言われると困るわね」
 女神の方も考える顔になって腕を組んで述べた。
「私にしても」
「その辺りの適当な人や国は駄目じゃな」
「さっき言った通りね」
「では誰じゃ」
「そうね、明らかにこれは駄目だっていう」
 女神は考え抜いたうえで電々犬に答えた。 
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