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戦国異伝供書

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第六話 都への道その九

「一体どういう方かな」
「それがしもそう聞いておりましたが」
「実は学問に励まれ武芸の鍛錬も怠らない」
「そうした方ですな」
「しかもじゃ」
 柴田はさらに話した。
「そうした新しいことを考える方であったのじゃ」
「それが殿でしたな」
「それがわからなかった、しかしな」
「今はですな」
「違うつもりじゃ」
 こう羽柴に話した。
「まさに殿はこれまでにない方、天下人たるに相応しい」
「そうした方ですな」
「その殿の言われることならな」
「柴田殿もですな」
「励んでいくぞ」
「ではそれがしも」
 羽柴も柴田に対して言った。
「働きまする」
「その様にな。あと実はわしはお主や慶次は好きではない」
「それはお調子者だからですか」
「そうじゃ、特に慶次はずっとああじゃ」
 羽柴本人だけでなく彼のことも話すのだった。
「いつも怒っておるが」
「あの御仁はああした御仁かと」
「傾奇者か」
「はい、あくまで」
「全く、政は学ぼうともせず戦の時にしか動かぬ」
「そうした方ですな」
「又左はあれで政も励むが」 
 慶次の叔父でありかつては慶次にも負けぬまでの傾奇者と呼ばれた彼のことも引き合いに出して話した。
「あ奴はな。悪戯もするしのう」
「そう言えば先日また」
「そうじゃ、わしが楽しみにしておった餅を全部食ってじゃ」
「書置きを残されていましたな」
「ご馳走になり候とな。名前まで書いてな」
 そうしていたというのだ。
「それで追い掛けてあの頭をしこたま殴ってやったわ」
「ははは、あの御仁らしいですな」
「笑い話ではない、全くあ奴はじゃ」
「今も悪戯ばかりしてですな」
「困った奴じゃ」
 怒った顔で言う柴田だった。
「あれ以上身を立てるつもりもないしな」
「それは全くありませぬな」
「千石もあれば充分と言ってな」
「左様ですな」
「もっと欲を出してもいいと思うが」
 それがというのだ。
「政には関わらず傾き続けておるわ」
「そして今も」
「全く、賊の征伐なら動くが」
 実際に信長も慶次をそちらで使っている、そうして民達が賊に困らない様にしている。
「しかしな」
「それでもですな」
「あ奴は困った奴じゃ、だからじゃ」
「お好きでないですか」
「悪戯をする度に怒っておるのじゃ」
 そして殴っておるというのだ。
「それがもう何年も続いておるわ」
「慶次殿とも長い付き合いですか」
「あ奴がまだほんの子供の頃から知っておるわ」
 そして付き合っているというのだ。
「そうしておるわ」
「では慶次殿は子供の頃から」
「ああじゃ、悪戯ばかりしておる」
「そして傾いていますか」
「そうじゃ、その傾きもどれだけ続くか」
 それこそと言う柴田だった。
「わしも気になっておるのじゃ」
「ではしかとされないなら」
「また怒る」
 その時はというのだ。 
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