| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真田十勇士

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

巻ノ百四十九 最後の戦その五

「そしてじゃ」
「その大手門から」
「城の中に入るのじゃ、さて」 
 ここでだ、長曾我部は。
 己が手に持っている槍を見てこうしたことを言った。
「わしの槍も唸る時が来たな」
「ですか、ではそれがしは」 
 明石は自身が持っている弓矢を見て言った。
「弓で以てです」
「戦うな」
「そうします」
 まさにというのだ。
「そしてそのうえで」
「最後まで戦いじゃな」
「勝ちまする」
 こう長曾我部に答えた。
「その時はお任せ下され」
「ではな」
「はい、まずはです」
「城の正門、大手門にな」
「参りましょうぞ」
「間もなく大手門が見えて参りますぞ」
 先頭を行く幸村が二人に言ってきた。
「いよいよ」
「左様か、ではな」
「戦をはじめまするか」
 二人は幸村のその言葉に笑顔で応えた、そうしてだった。
 二人も他の者達もそれぞれの得物を出した、そのうえで見えてきた大手門に向かっていった。そのうえで。
 大手門の前に来た、だがその前に柳生がいて幸村に言ってきた。
「真田左衛門佐殿でありますな」
「もう官位は持たぬ身」
「あえて敬意を払ってでござる」
 柳生は幸村にこう返した。
「そう呼ばせて頂きました」
「左様でありましたか」
「そしてです」 
 柳生は幸村にさらに言ってきた。
「ここから先は」
「通せぬと」
「左様、若し通られるとならば」
 柳生は刀を抜いた、そのうえで幸村にさらに言った。
「それがしがお相手致す」
「では」
「待たれよ、真田殿」
 長曾我部が前に出て言ってきた。
「ここはそれがしが引き受ける」
「そうされますか」
「相手にとって不足はなし」
 自慢の槍を出して言うのだった。
「天下の剣豪柳生殿が相手ならば」
「では」
「貴殿等は先に行かれよ」
 こう幸村に言うのだった。
「城の中に」
「わかり申した、それでは」
「柳生殿、ここはじゃ」
 長曾我部は槍を手にしたままその柳生に言った。
「わしが相手をさせてもらう」
「おお、長曾我部殿が」
「そうじゃ」
 こう言うのだった。
「不服か」
「いえ」
 柳生はその長曾我部に礼儀正しい声で応えた。
「滅相もない、天下の豪傑であられる長曾我部殿が相手ならば」
「相手にとっては」
「十二分でござる」
 そうだと言いつつだ、柳生は剣を抜いた。
 そうして構えてだ、長曾我部にあらためて言った。
「お相手させて頂きます」
「ではな」
「心残りは全ての方をここで足止め出来なかったことでござるが」
「それはわし一人でよしとせよ」
「そう言われますか」
「これから死合うのじゃからな」
 こう言ってだ、長曾我部も槍を構え柳生と対峙に入った。幸村はそれを見て他の者達に対して言った。
「では我等は」
「うむ、城の壁を飛び越えてな」
「そうして入りましょうぞ」
 城の中にというのだ。
「そうしましょうぞ」
「承知致した、では」
「これより」
 一行はすぐにだ、城の城壁を跳んで越えた。すると空からだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧