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真田十勇士

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巻ノ百四十八 適わなかった夢その五

「他の家の武士道と違ってじゃ」
「それで潔く死ぬのではなく」
「何があっても生きてそうしてじゃ」
「最後の最後まで、ですな」
「己がすべきことを果たすのじゃ」
「左様ですな」
「拙者達は誓った、右大臣様を何があってもお護りしてな」
「武士の道をですな」
「最後まで歩もうとな、その中でな」
「この度の。最後になるであろう戦でも」
「うむ」
 まさにというのだ。
「死なぬ」
「死ぬ時と場所は同じですし」
「このこともあってな」 
 それ故にというのだ。
「我等はな」
「生きまするな」
「そうする、もっとも薩摩に帰ってからはな」
「どうされますか」
「ははは、ここは思い切ってな」
 笑って言う幸村だった、戦が終わり薩摩に戻ればどうするかということについては。
「旅に出るか」
「旅にですか」
「うむ、出るか」
 こう言うのだった。
「そうするか」
「旅ですか」
「本朝の外にな」
 笑みを浮かべての言葉だった。
「そうするか」
「本朝の外ですか」
「琉球や明、呂宋にも行くか。天竺もよいし汗血馬がいたという西域もよいし南蛮もな」
「あそこまで、ですか」
「行くか。とかくな」
「本朝の外にですか」
「出たいとも思っておる」
 こう言うのだった。
「拙者はな」
「十勇士達と共に」
「うむ、そうしてな」 
 そのうえでというのだ。
「様々な国も見てな」
「ご見識もですか」
「高めたい、この世での生が終わるまで」
「この世のあらゆるところを見て回って」
「そうして見識を高めてな」
「武を振るう時もあれば」
「戦いそうしてな」
 そのうえでというのだ。
「そのうえでな」
「武も磨かれますか」
「そうしていきたいと思っておる」
「そうですか、本朝を出ることもですか」
「考えておる」
「それはまた」
「お主は考えていなかったか」
 大助のその目を見て問うた。
「そうしたことは」
「はい、本朝の外を出ることは」
「これまで本朝は歩いて回った、確かに広いが」
「本朝の外はですか」
「遥かに広いという、その広い世界をな」
「歩いて見て回られて」
「色々知りたい、そして武士の道をな」
 幸村が歩いているそれをというのだ。
「極めたい」
「そうですか」
「そうしたい、ではな」
「戦に帰られたら」
「考えておる、ではな」
 まさにと話してだ、そのうえでだった。
 幸村達は船で海を渡りそうしてだった、周防から再び真田の忍道に入りそうしてだった、そのままひたすらだった。 
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