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空に星が輝く様に

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38部分:第四話 桜の木の下でその一


第四話 桜の木の下でその一

                 第四話  桜の木の下で
 陽太郎の一年三組ではもうホームルームがはじまっていた。クラスの役員を決めるそのホームルームだ。
 担任は顔中髭だらけの大柄で黒く濃い毛を短くかった中年の先生だった。身体つきもがっしりとしていてそれはまるで熊の様であった。
「俺の名は浅見天海だ。数学の教師だ」
「えっ、数学!?」
「嘘っ・・・・・・」
 一年三組の面々はその髭だらけの男が数学の教師と聞いて思わず声をあげた。
「その顔で!?」
「そんな戦国大名みたいな顔で」
「そうだ、数学だ」
 しかし先生はその髭だらけの顔をにやりとさせて言うのであった。
「そして美術部の顧問だ」
「嘘みたいっていうか」
「嘘でしょ」
「ねえ」
「その顔で」
「顔は関係ないぞ」
 しかしここで先生の方から言ってきた。
「人間顔じゃないぞ」
「まあそれはそうですけれど」
「それでも」 
 それでもなのだった。まさにそれであった。
「柔道部とかじゃなくて」
「美術部っていうのは」
「違和感ありまくりですよ」
「しかも数学の先生ですか」 
 何処までも意表をついた先生であった。
「何ていうか」
「有り得ないんですけれど」
「いや、本当に」
「有り得なくとも現実だ」
 先生は見事なまでに言い切る。
「先生は美術部の顧問で数学を教えている」
「ううん、受け入れ難いんですけれど」
「昨日はちょっと聞いただけでしたけれど」
「何か」
「あと趣味は酒だ」
 今度は自分の趣味についても話してきた。
「それを絵を描くこと、読書に音楽鑑賞だ」
「柔道とかじゃないんですか?」
「あとプロレス鑑賞とかも」
「というか酒以外は」
「やっぱり違和感凄いんですけれど」
「絵は油絵で読書はラディゲやスタンダールだ」
 その内容についての話にもなる。
「そして音楽はモーツァルトやベルリオーズだ。どうだ?」
「だから本当ですか!?」
「モーツァルト!?」
「その顔で」
「その身体で」
 皆実に容赦がない。とにかく違和感に満ちているというのである。そしてそれは誰も否定できなかった。先生以外はそうであった。
「何ていうか」
「ここまでギャップのある先生なんて」
「お酒以外は全然納得できません」
「酒はカクテルやワインだ」
「えっ!?」
 また唖然となったクラスの面々であった。
「ええと、どぶろくとか焼酎じゃなくて」
「カクテルにワインですか!?」
「本当ですか?」
「そうだ。大好きだぞ」
 こう言う先生だった。
「これでわかったな。あと嫁さんは一人だ」
「ああ、結婚されてるんですね」
「それはちゃんとしてるんですか」
「子供は男が一人。もう二人は欲しいな」
 何気に望みも話してきた。
 
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