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たったそれだけ

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第二章

「すぐに中に人がいれば救助するぞ」
「凍えているかも知れないですしね」
「その人達の救助も想定していましょう」
「では暖かい飲みものや食べものも用意しておきましょう」
「出動する隊員達にも」
「そうしていくぞ、では出動だ」
 司令自ら司令室を出て除雪作業にあたった、すぐに重機も投入され自衛隊も除雪作業に参加した。だが。
 雪が降っている地域はあまりにも多く自衛隊が重機を投入してもだった。
 復旧出来る場所には限りがあった、重機の数は限られていて投入出来る場所には限りがあった。それでだった。
 ある場所では自衛隊員達は重機なしで除雪作業にあたるしかなかった、彼等はそれでもめげずにだった。
 スコップを手にしてだ、人力で除雪作業にあたった。
「重機がないなら仕方ないからな」
「ああ、スコップでやっていくぞ」
「こうなったら人力だ」
「もう人の力と数でやっていくぞ」
「雪はかなり多いがな」
「やらないよりずっといい」
 やらないならゼロだ、除雪作業は全く出来ていないということだ。
「それならな」
「ここでどんどん雪をどけていこうな」
「雪は多いけれどな」
「何とかやっていくぞ」 
 こう言い合いそうしてだった。
 自衛隊員達はスコップを使って必死に雪かきをしていった、そうして僅かではあるが雪をどけていった。
 その彼等を見てだ、手空きの者は総出で出動している青森県の職員達は驚いていた。
「やっぱり違うな」
「ああ、俺達だって雪国育ちで雪かきには慣れているけれどな」
「冬はいつもだからな」
「それでもな」
「自衛隊の人達は違うな」
「プロだよ」
 彼等はというのだ。
「雪かきの速さと勢いが違うな」
「どんどん雪をどけていっているぞ」
「凄いな」
「やっぱりこうした時は自衛隊だな」
「あの人達がいてくれて助かるぜ」
「全くだよ」
「けれどあの人達だけに任せられるか」
 彼等にも県の職員としての誇りがあった、それでだった。
 ここで県民の為に働く誇りと義務を燃え上がらせて彼等も除雪作業に励んだ。そうしてそのうえでだった。
 彼等も除雪作業に邁進した、極寒の大雪が降り注ぐ中で。それである程度であるが道の雪はどけられその分市民生活は復旧した。
 だがそれでもだった、東京のマスコミのある報道番組の製作スタッフの者達はこの話を聞いてだった。
 暖房が効いた暖かい会議室でだ、冷笑して言った。
「何だ、それだけか」
「本当に自衛隊は大したことないな」
「全くだな」
「金のかかる装備やら持っててもな」
「それだけしか雪かき出来なかったのか」
「能無しだな、あいつ等」
 こう言い合ってだ、彼等の報道番組でこう言ったのだった。
「自衛隊も除雪作業に参加したんですがね」
「たったあれだけしか除雪出来なかったですね」
 こう言った、しかし。
 言った瞬間にだ、視聴者特に東北や北陸とりわけその大雪が降っている青森の人間が怒りだしたのだった。 
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