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真田十勇士

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巻ノ百四十七 吉報その五

「殿のお帰りを」
「そうしてくれるか」
「はい、では」
「ご武運を」
 長沢は微笑み己の主に応えた、そうしてだった。
 後藤は島津にも挨拶をしそうしてだった、幸村達と共に駿府に向かう用意に入った。その用意はすぐにはじまり。
 旅支度も整った、そこで幸村は夜に屋敷で大助に話した。
「さて、無事にな」
「これで全て整いました」
「うむ、だからな」
「すぐにですね」
「明日の日の出と共にな」
 こう大助に話した。
「ここを発つ。よいな」
「わかりました」
「そしてな」
 大助はさらに話した。
「行くのは拙者とお主に十勇士達にな」
「後藤殿、長曾我部殿、明石殿ですな」
「合わせて十五人、一騎当千の猛者達がな」
「十五人となると」
「思う存分戦える、そしてな」
 そうしてというのだ。
「勝てる」
「はい、間違いなく」
「だからな」
「憶することなく」
「向かうぞ、そしてな」
「今度こそ大御所殿の御首を」
「いや、勝てればよい」
 幸村は大助にこう答えた。
「もうな」
「勝てればとは」
「そうじゃ、言った通りじゃ」
「勝てばですか」
「それでよい」
「勝つにはです」
「大御所殿の御首をか」
「取るのでは」
「それだけが勝ちのあり方ではない、この度はな」
「そうなのですか」
「そうじゃ、大坂での戦はそうでなければ勝てなかったが」
 あの時はというのだ。
「しかしな」
「この度はですか」
「そうじゃ、戦ってもな」
 そして勝ってもというのだ。
「それが勝ちではないのじゃ」
「どうもそれは」
 大助は父の言葉に首を傾げさせた、そのうえで父に問うた。
「わかりませぬが」
「それは戦の後でわかる」
「その時にですか」
「勝ってからな」
「左様ですか」
「うむ、そなたにも言っておく」
「それでは」
 大助は父の言葉を聞いてだ、確かな顔で応えた。
「楽しみにさせて頂きます」
「その時をじゃな」
「はい、父上に教えて頂くことを」
 次の戦では家康の首を取っても何故勝ちとはならないのか、その必要はないのか。そのことをというのだ。
「楽しみにしております」
「ではな、しかしな」
「それでもですな」
 このことは大助もわかってすぐに応えた。
「それはそれがしにわかるのは」
「勝ってこそじゃ」
「左様ですな」
「勝たねばじゃ」
 それこそとというのだ。
「わかることではない」
「ですな、では」
「うむ、勝つぞ」
「さすれば」
「お主にはあらゆる武芸を仕込んできた」
 まさに十八のそれをだ、幸村だけでなく十勇士全員で大助にそれを仕込んできたのだ。特に水練と馬術、手裏剣に忍術をだ。 
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