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真田十勇士

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巻ノ百四十五 落ちた先でその六

「ご安心下され」
「それではな」
「はい、では」
「まず国松と会い」
 秀頼は加藤に述べた、加藤家の家臣達だけでなく幸村親子と十勇士達も共にいて秀頼の前に控えている。
「そしてな」
「長曾我部殿、明石殿とも合流されて」
「薩摩に入りたいが」
「おおせのままに」
 加藤は秀頼に謹厳な面持ちで応えた。
「島津殿にはその様に伝えます」
「頼むぞ」
「勿体ないお言葉。ですが」
「お主のことか」
「それがしは豊臣家の家臣でした」
 だからだとだ、ここで加藤は秀頼にこのことも話した。
「ですからやがてはです」
「幕府には」
「取り潰されるでしょう」
「そうなるか、やはり」
「福島家もそうでしょうが」
「しかしか」
「その前に忠義を果たせそうで何よりです」
 主である秀頼を救ってというのだ。
「このことで悔いはありませぬ」
「そう言ってくれるか」
「はい、では」
「合流の後でな」
「薩摩に」
「入ろう」
「真田殿もですな」
 幸村にも顔を向けて問うた。
「その様にですな」
「したいですが」
「お願い申す」
 加藤は幸村にも話した。
「そしてです」
「右大臣様を」
「お護り下され、そして」
「それがしもまた」
「思いを果たされましたな」
「一つの。そして」
「もう一つの願いを」
「果たしまする」
 幸村は加藤に答えた。
「必ず」
「多くは言えませぬが応援させて頂きます」
「そうして頂きますか」
「それがしには他のことは出来ませぬが」
 それでもというのだ。
「武士として」
「戦にですな」
「勝たれることを」
「それでは」
 幸村も応えた。
「その様にさせて頂きます」
「それでは」
「はい、しかし思えばです」
「ここに至るまでですか」
「色々ありました」
 幸村はここで己のこれまでの人生、そして戦のことを思った。それは実に多くのことがあったものだった。
 それでだ、こう言うのだった。
「山もあれば谷も」
「大坂での戦も」
「あと一歩で大御所殿の御首を取れましたが」
 それでもというのだ。
「それも適わず」
「そしてですな」
「ここに辿り着きました、ですが後悔はありませぬ」
 戦には勝てなかった、だがそれでもというのだ。
「そうなるにはやることがあるので」
「それこそがですな」
「次の戦です」
 まさにそれだというのだ。 
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