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空に星が輝く様に

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25部分:第三話 入学その一


第三話 入学その一

                  第三話  入学
 卒業式が終わりそれぞれの春休みが終わって。陽太郎は八条高校の制服にはじめて袖を通した。中学の制服とはまた違っていた。
「どうなの?」
「何か違うね」
 微笑んで母に応える。八条高校の制服は様々なタイプがあるが彼は青い詰襟にしたのだ。青い七つボタンの丈の長い詰襟の制服だ。丈は膝まである。
「やっぱり」
「あんたって長ラン派だったのね」
 母は彼のその青い長い制服を見て言うのだった。見ればカラーも長い。
「それが意外だわ」
「長ランって?」
「丈の長い制服のことよ」
 それだというのである。
「今じゃ応援団位しか着ないけれどね」
「そんな制服もあるんだ」
「そうよ。短ランと同じでね」
「ああ、それは知ってるよ」
 これは陽太郎も知っていた。学生服のことは誰でも知っていることだった。
「不良が着るあれだよね」
「あんたそっちの方が似合うと思ったんだけれど」
「俺服は長い方が好きだから」
 これは彼の好みだった。
「だからこれにしたんだけれど」
「超長ランにはしなかったのね」
 また陽太郎の知らない言葉を出す母だった。実際に彼は母親の出す単語を聞いてその耳を疑う様な顔になっていた。
「何、今度は」
「だから。長ランより長い制服よ」
 それだというのである。
「それのことよ」
「そんなのもあるんだ」
「あるわよ。そうなの、あんたそれはいいのね」
「流石にそこまではね」
 いいと答える彼だった。
「あまり長過ぎても面倒だし」
「それでいいわ。大きさは大体一メートル十ってところね」
 その学生服の丈である。
「今じゃ古いかも知れないけれどまあいいわ」
「いいんだ」
「いいわ。それでだけれどね」
「ああ、それで?」
「頑張って行って来なさい」
 息子の背中を自分の右手でぽん、と押しての言葉だった。
「いいわね、高校三年間ね」
「ああ、わかってるよ」
「成績は多少悪くてもいいけれどいじめは絶対にしない」
 斉宮家の家訓であり教育方針である。
「いいわね、それは」
「それだけは何がってもしないさ」
「いじめを見たら立ち向かう」
 それも言う母だった。
「それだけは心に刻み込んでやっていってね」
「わかったよ。じゃあ今からさ」
「行ってらっしゃい」
「行って来ます」
 彼は一人でそのまま家を出た。そのうえで八条高校に向かうその電車に乗るのだった。そしてその最寄の駅には彼女がいた。
「あっ、佐藤」
「おはよう、斉宮」
 星華だ。少し笑って挨拶をしてきた。だが陽太郎は彼女の顔が赤らんでいることには気付かない。気付いているのは笑っていることだけだ。
「今日からね」
「そうだよな。今日からだよな」
「あのね」
 ここで自分から言ってきた星華だった。
「この制服どうかしら」
 自分の制服を見せるのだった。驚く位に短いスカートに黒いハイソックスだ。そしてブレザーの色は黒である。ネクタイはリボンである。
「これにしたけれど」
「いいんじゃないのか?」
 思ったことをそのまま告げた陽太郎だった。
「それで」
「そう、いいのね」
「似合ってるよ。っていうか」
「っていうか?」
「きわどくないか?かなり」
 特にその短いスカートを見ての言葉である。ハイソックスがそれを余計に目立たせている。それを見ながらそうして語るのだった。
 
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