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真田十勇士

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巻ノ百四十四 脱出その一

               巻ノ百四十四  脱出
 大坂城の天守閣にも火が及びだした、家康は巨大で壮麗なその天守閣が燃えるのを見つつ呟く様に言った。
「あれこそまさにじゃ」
「豊臣家の滅びですな」
「それを示すものじゃな」
「まことに」
 こう大久保も応えた。
「それがしもそう思いまする」
「間もなく終わる、そしてな」
「もう大坂の城も大抵です」
「抑えたな」
「後は山里曲輪だけですが」
「その山里曲輪もな」
「多くを抑えました」
「糒蔵だけか」
 秀頼のいるそこだと言うのだった。
「後は」
「そうなった様です」
「さて、間に合うか」
「真田は」
「このことは言うでないぞ」
 家康は大久保に釘を刺した。
「よいな」
「承知しております」
 大久保もはっきりと答えた。
「そのことは」
「ならよい、あと少しでな」
「あの者が来てですな」
「右大臣を助ける、そしてじゃ」
「それをですな」
「わしはあえてじゃ」
「見逃しますな」
 こう家康に問うた。
「そうしますな」
「そう決めておった、ではな」
「はい、おそらくすぐに糒蔵から火が出て」
「火薬にも火が点いてな」
「派手に爆発して」
「跡形もなくなるが」
 それでというのだ。
「もうそれでじゃ」
「右大臣殿は腹を切られた」
「そうなった」
 まさにそれでというのだ。
「その様にな」
「してですな」
「何もせぬ、あと国松殿はな」
 秀頼の子である彼はというと。
「斬られたことにせよ」
「そうしますか」
「何ならその辺りの人を殺めでもした悪童の首を刎ねてじゃ」
 そうしてというのだ。
「国松殿は死んだ」
「その様にですな」
「してもよい」
「ですか、では」
「その様にしてじゃ」
「右大臣共も国松殿も」
「それでよい、そして修理にはな」
 大野修理、彼はというと。
「あの者には褒美をやりたい」
「腹を切らせてですか」
「主への忠義に殉じた武士としてな」
「そうしてですな」
「死なせる、それこそがじゃ」
「あの者への褒美となりますか」
「そうじゃ、ではじゃ」
 家康は大久保にあらためて述べた。
「あと一歩な」
「城を攻めていきますか」
「あと千にも真実を話しておく」
 秀頼、夫である彼のことをというのだ。 
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