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オークの農業

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第五章

「田植えはな」
「もうそれを忘れたらね」
「百姓じゃない、だからな」
「植えてそしてだね」
「ああ、いい米作ろうな」
「そうしようね、この畑には芋を作って」
「道にはあぜ豆だ」
 これを作るというのだ。
「そうしないとな、あと溝や道も見ておくか」
「冬の間に見たんじゃないかい?」
「いや、もう一度だ」
 念の為にというのだ。
「壊れているところがあったらなおすな」
「冬にもそうしてだね、御前さんは働き者だね」
「そうしたらそれだけよくなるからな」
 それでというのだ。
「だからだ、そうしていくんだよ」
「そうだね、百姓仕事はね」
「働けば働くだけよくなるからな」
「だから頑張るんだね」
「そうするんだよ、だから今年もな」
 春が訪れて百姓仕事が本格的にはじまったからというのだ。
「頑張るさ、二人にもなったしな」
「それじゃあね」
 女房も笑顔で頷いてだ、そしてだった。
 太作と共に働いた、太作はその女房と共に熱心に働いた。そうしてこの年も百姓として頑張ることにした。
 そうしてだ、彼はその日の仕事が終わってから女房に言われた。
「余裕があったら菜種も植えてみないかい?」
「油を採るあれか」
「そうしないかい?」
 女のオークの顔、牝の猪の顔で言うのだった。
「二人になったんだし」
「そうだな、出来たらな」
「この村あれ植えてる人も多いし」
「うちもか」
「余裕があったらね」
「やってみるか」
「それじゃあね」
 女房は太作の椀に御飯を入れつつ話した、白米でおかずは皮で獲れた魚や野菜を入れた汁ものと漬けものだ。
「そっちもやってみようね」
「ああ、しかし米だけじゃないんだな」
 ここで太作はしみじみとした口調で言った。
「百姓仕事でやることは」
「御前さん前は猟師だったんだね」
「ああ、その頃は田んぼと多少の畑仕事だけだってな」
「百姓のすることだって思ってたんだね」
「それが違うな」
 こう女房に言うのだった。
「本当に」
「色々あるだろ」
「ああ、そうだな。しかしな」
「その色々やることがだね」
「いいな、大変だけれど楽しいさ」
「じゃあね」
「ああ、明日も頑張るな」
 女房に笑顔で応えた、そうしてこの日はじっくりと休み次の朝起きて晴れだったので畑仕事に励んだ。彼はもう完全に百姓になっていた。


オークの農業   完


               2018・2・14 
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