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真田十勇士

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巻ノ百四十一 槍が折れその四

「大御所殿の御首を取れるわ」
「ではですな」
「今は遮二無二攻め」
「そうして大御所殿に迫る」
「そうしていきますか」
「そうじゃ、まだ敵は多いが」
 彼等と家康の馬印の前にはまだ多くの敵がいた、彼等も必死で戦っている。
「それでもじゃ」
「何とか迫り」
「そのあと一押しで、ですな」
「大御所殿に槍を浴びせ」
「そうして」
「そうなる、拙者の分身達も戦っておる」
 六人の彼等もというのだ。
「その者達と共にじゃ」
「攻めていきますな」
「このまま」
「そうしていきますな」
「そうじゃ、しかし拙者の分身達も」
 七耀の術で出した彼等のこともわかっていた、自分の分身であるだけに自分の身体の様にわかっていた。彼等の状況が。
「かなり傷付いてきたな」
「左様ですか」
「これまでの戦で」
「そうなってきておりますか」
「無茶をしておる」
 それがはっきりわかる攻め方だった、幸村から見ても。
「それでじゃ」
「殿の分身達もですか」
「傷付き」
「そうして」
「倒れるのが近い」
 そうした状況だというのだ。
「拙者自身はまだまだ戦えるがな」
「我等もですが」
「しかし兵達がです」
「疲れが見えてきました」
「倒れる者達も増えてきました」
「そうなってきております」
「そうじゃな、ここで右大臣様が出陣して下さらないと」
 そうならないと、というのだ。
「兵達がな」
「疲れていき」
「やがて限界に達して」
「そうして」
「攻められなくなる、我等十一人だけでは限度がある」
 どうしてもというのだ。
「だから是非じゃ」
「右大臣様には出陣させて頂きたい」
「そうなのですな」
「戦に勝つ為には」
「何とか」
「そろそろご出陣の頃じゃが」
 城の方をちらりと見た、だがそこに秀頼がいることを示す馬印、秀吉のものだったそれは見えはしない。
「まだか」
「まさかと思いますが」
「茶々様がでしょうか」
「ここでまたです」
「何か言われたのでしょうか」
「有り得るのう」
 幸村もその可能性は否定しなかった。
「あの方が」
「若しそうならば」
「この戦敗れますな」
「右大臣様が出陣されないなら」
「兵達の士気が上がらず」
「そうなって欲しくはない、若しそうなれば」
 幸村にはわかっていた、その場合どうなるかが。
「戦は明日我等が破れてじゃ」
「終わりますな」
「城が陥ちて」
「そうして」
「そうなる、だからな」
 それでというのだった。
「ここはじゃ」
「茶々様には何とか」
「今ばかりは我儘を言われないで欲しい」
「そうですな」
「そうじゃ、今日それを言われると」
 いつもの様にというのだ。 
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