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空に星が輝く様に

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109部分:第九話 遠のく二人その三


第九話 遠のく二人その三

「女友達なんだよ」
「ふうん、そうだったんだ」
「いい奴だぜ」
 何気にどういった関係なのかも言ってしまった陽太郎だった。彼自身は気付いていないが。
「明るくてはっきりとしていてな」
「けれどそうした人がいるのなら」
 赤瀬は陽太郎のその言葉を聞いてだ。その巨大な身体の上にある顔をいぶかしげにさせてだ。そうしてそのうえでこう言うのであった。
「椎名さんが行くのかな」
「椎名がって?」
「四組ってあまりまとまっていないんじゃないかな」
 こう言うのだった。
「ひょっとしてね」
「あれっ、そうなのかよ」
「僕がこの目で見たわけじゃないけれどね」
 これは断るのだった。
「ただ。それでもね」
「四組はごたごたしてるのかよ」
「三組とは違ってね」
 この三組は少なくとも平和だった。クラス委員の椎名の頭脳と統率力故である。確かに彼女のそうした能力はかなりのものである。
「そうみたいだね」
「そうか。意外だな」 
 陽太郎は首を傾げさせながらまた言った。
「まとまってるって思ったんだけれどな」
「まあ中に入らないとわからないけれどね」
「あいつ。まあ佐藤な」
「うん」
「あいつがいるからまとまってるって思ってたんだよ」
 こう赤瀬に話すのだった。
「それでな。大丈夫だって思ってたんだよ」
「佐藤さんってそんなに凄い人なの?」
「はきはきしていて面倒見がよくてな」
 彼が知っている星華のことを話す。
「それで仕切りも上手いしな。俺の中学校じゃあいつが出て来たらもうそれでどんなややこしい話もまとまってたんだよ。部活でもそうだったしさ」
「部活?剣道部じゃないよね」
「ああ、それ俺だから」
 今話している相手ではないのだというのだ。
「佐藤のことなんだよ、そのな」
「その佐藤さんだね」
「ああ。女史バスケ部でな。確か今もそうだったよな」
 言いながら自分の中で思い出していた。話の整合も自分の中で確かめてもいた。
「高校でもそうだって言ってたしな」
「そうなんだ」
「そうだよ。まあそれでな」
「うん」
「女史バスケ部もかなりよくまとまってたんだよ」
「その佐藤さんのおかげでだね」
「ああ、そうだなんだよ」
 こう言うのだった。
「それでなんだよ」
「成程ね」
「しかし。そうはいかなかったんだな」
 あらためて言う陽太郎だった。
「あいつがいるならまず大丈夫なんだけれどな」
「何でも女の子の間がよくないらしいんだ」
 赤瀬はここでこう話した。
「その女の子の間がね」
「余計にわからないな。っていうか四組ってそんなアクの強い奴いるのか?」
 陽太郎は赤瀬が見下ろすその下でだ。腕を組んでいぶかしむ顔になっていた。幾ら考えてもどうしてもわからない、そうした表情であった。
「そこまでな」
「いるんじゃないかな、やっぱり」
「そうなのかよ」
「まあ四組は四組でね」
 赤瀬は話をここで打ち切りにかかった。
「椎名さんが動いているのは彼女に任せてね」
「それはいいか」
「うん、他のクラスの人間が口出しできないしね」
「他のクラスだからな、結局はな」
 陽太郎は赤瀬に対して述べた。学校にもテリトリーがありだ。その外のテリトリーには中々入ることができないのだ。目に見えない壁というものだ。
「じゃあ俺達は見ているだけか」
「友達が困っているのなら別だけれどね」
「そうだよね。そういうことでね」
「ああ、じゃあな」
「うん、それじゃあね」
「さて、それで赤瀬」
 陽太郎はあらためて赤瀬に対して言ってきた。
 
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