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第55話 ヴァンフリート星域会戦 前編


謀略の限りを尽くします。
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第55話 ヴァンフリート星域会戦 前編

宇宙暦794年  帝国暦485年 3月21日

■自由惑星同盟ヴァンフリート星域

この頃帝国は大混乱の真っ最中であるが、態々同盟軍がフェザーンのスパイ経由で同盟軍の狙いがイゼルローン要塞攻略の為にヴァンフリート星系に集結する予定であるとリークしたために帝国軍としても未だ軍がサイオキシン麻薬事件のために混乱しているが迎撃の為に進出せざるを得なかったのである。

同盟軍は帝国軍がイゼルローン回廊から出てこないと困るために、リーファ達の悪知恵による偽情報を流していた。今回同盟軍はイゼルローン要塞攻略のために空前絶後の新兵器プラズマシューター砲艦ヘカトンケイルを持ってイゼルローン要塞を攻略すると流したのである。

そしてヘカトンケイルがヴァンフリート星系で組み立てられた後でイゼルローン回廊に入れば要塞の完全攻略が可能であると、フェザーン経由で詳しい情報が流れてきたのである。フェザーンもシャフト大将情報漏洩の件もあり、今帝国の機嫌を損ねる訳にはいかないと必死に情報を収集したのであるから、帝国軍もその情報を信用せざるを得なかった。

同盟軍の兵力は5個艦隊7万5000隻が参加するとの情報で帝国側も同盟軍の覚悟を知り、非常に苦しい台所事情を考えながらも同数を用意しなければ成らなかったが、サイオキシン麻薬から始まった、軍内部の大混乱により、帝国軍正規艦隊18個艦隊と言っても、実際に稼働可能な艦艇は遙かに少なくなっていた。

しかも、カストロプ公爵を筆頭に後ろ暗い貴族が自領に引きこもり怪しい行動を取りつつあるために、彼等に対処するための艦隊を残さなければ成らない為に、実際の所、正規軍艦艇と将兵の根こそぎ動員に近い状態と成っていた。

正規艦隊18個艦隊の内、貴族出身の将官が多数検挙されたり、連座等で職を辞した為に実際に動ける兵力は10個艦隊程度と成っていた。しかも戦力的に纏まりがない状態でオーディンを出立しなければ成らない状態で有った。

結局、ミュッケンベルガー元帥が率いた艦隊は、使い物に成るか判らないが、皇帝より命じられて参加させざるを得ないグリンメルスハウゼン艦隊を含めても、かき集めた7個艦隊7万8000隻で、数のみは同盟軍を凌駕するが内情は各艦隊から比較的まともな戦隊を抜き出して作られた混成艦隊であり実力や練度において何処まで行けるか判らない状態で有った。

同盟軍側は実際には空前絶後の新兵器など存在せず、ヴァンフリート星系で迎撃を行うべくハイネセンを出撃した同盟艦隊はエルゴン泊地、シャンプール泊地に到着し帝国軍がヴァンフリート星系に侵攻して来るのを手ぐすね引いて待ち構えていたのである。

実際の同盟艦隊は、宇宙艦隊司令長官ロボス元帥率いる総司令部直属の2個分艦隊6000隻、アレキサンドル・ビュコック中将の第5艦隊1万5000隻、ホレイショー・アップルトン中将の第8艦隊1万5000隻、ウランフ中将の第10艦隊1万5000隻、セルゲイ・ボロディン中将の第十二艦隊1万5000隻、4個艦隊、総数6万6000隻  兵員851万4000人であった。同盟軍は一般兵に至るまで士気が旺盛であった。

それに対して帝国軍はこの数ヶ月の動乱で機動部隊の大半が機能不全となり、イゼルローン要塞に駐留するゼークト艦隊を除けば、現存する纏まった艦隊はミュッケンベルガー艦隊だけと成っていた。その為正規艦隊や地方隊から指揮系統がまともな戦隊を抜き出し、その数だけは5万2000隻に達した。此を5分し、5個艦隊を編成した。その後グリンメルスハウゼン艦隊を加えた。

帝国軍は宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥直属の1万4000隻、グリンメルスハウゼン艦隊1万2000隻、ロイター艦隊1万2000隻、シュトラウス艦隊1万3000隻、ヴァイトリング艦隊1万1000隻、ネーリング艦隊8000隻、クルツバッハ艦隊8000隻 で7個艦隊 総数7万8000隻 兵員1014万1000人となった。その中に准将に昇進したラインハルトの姿も有った。彼は原作通りにグリンメルスハウゼン中将艦隊に配属されていた。

原作でいけば、同盟軍は艦艇2万8900隻 兵員336万7500人 ビュコックの第5艦隊、ムーアの第6艦隊、ボロディンの第12艦隊であったが、この世界ではムーアが地方へ飛ばされているためにウランフの第10艦隊が代わりに参加していた。更にOVAでは第8艦隊も参加していたので参加が決まった。

又艦艇数が6万6000隻と3万7100隻も多いのは、ここ数年の戦乱において同盟軍の損害が原作よりも少なくなっている事、又捕虜交換で300万人の捕虜が帰国した事による、同盟の生産力の強化と帝国側捕虜にかける予算が要らなくなったことなどの要因と、第5次イゼルローン攻略戦などの戦果により、軍事作戦における国防委員会の予算措置が通り易くなった事もある。

今回のヴァンフリート星域での戦闘は、同盟軍の望みうる最高の布陣で戦うために用意された戦場であった。戦い辛いはずのヴァンフリート星系に帝国軍をおびき寄せるために、新兵器の情報を流したり、態とヴァンフリート4=2に向かう輸送艦を視認させたり、電波を発したりしたのであるから。帝国軍がヴァンフリート星系へ誘き寄せられるのも必然であった。

同盟艦隊が総司令部に各艦隊が一個分艦隊3000隻を供出した編成の5個艦隊正面戦力6万隻、後方総予備戦力1万5000隻で来ると言う偽のリークで編成を知ったために、原作では3万2700隻 兵員406万8200人であった帝国軍は、艦艇7万8000隻 兵員1014万1000人と大幅に増強されていた。

この時ミッケンベルガー元帥率いる帝国軍宇宙艦隊はグリンメルスハウゼン艦隊を持て余し気味であったが、正面戦力が6万対6万6000という数の勝負であれば負けないとの自負で戦うのであり、グリンメルスハウゼン艦隊を一歩下がった位置に置いて正面決戦を意図したのであるが、実際には俄作りの混成艦隊でしか無かった。

帝国は更にヘカトンケイルを破壊または捕獲しなければ成らないために、その事も神経を使う事であった。実際はヘカトンケイルなど無いにもかかわらず、虚栄に踊らされているのである。

宇宙暦794年 帝国暦485年 3月21日 午後2時40分

進撃する両軍が射程距離に入ると同盟側ロボス元帥、
帝国側ミュッケンベルガー元帥の命令が艦橋に響いた。

「ファイヤー」
「ファイエル」


帝国軍艦隊
ミュッケンベルガー艦隊  ○   
グリンメルスハウゼン艦隊 ◎  
ロイター艦隊    。
シュトラウス艦隊  ×
ヴァイトリング艦隊 △
ネーリング艦隊   ⊿
クルツバッハ艦隊  ▽

同盟艦隊
ロボス総司令部  ■
第5ビュコック  □
第8アップルトン ◇
第10ウランフ  凸 
第12ボロディン 凹


=====================================
       イゼルローン要塞方面

                 ◎                 
        △  ○ 。 

   ▽⊿           ×


        凸   □ 
 
    ◇           凹
          ■

          
      エルゴン星系方面

======================================

第5艦隊VSミュッケンベルガー艦隊、ロイター艦隊 2万4000隻VS2万6000隻
第8艦隊VSネーリング艦隊、クルツバッハ艦隊 1万5000隻VS1万6000隻
第10艦隊VSヴァイトリング艦隊 1万2000隻VS1万1000隻 
第12艦隊VSシュトラウス艦隊 1万2000隻VS1万3000隻

同盟軍第5艦隊には総司令部と第10艦隊、第12艦隊から3000隻ずつ増援を送っている状態で有り、同盟軍は凸型陣、帝国軍は凹型陣で戦火を浴びせている。

そんな戦闘の中で最左翼のグリンメルスハウゼン艦隊は完全に動かない状態で有り、
ラインハルトのイライラ具合が益々高まっていくのであった。


宇宙暦794年 帝国暦485年 3月21日 午後5時30分

■自由惑星同盟軍宇宙艦隊総旗艦アイアース

アイアース艦橋では、宇宙艦隊司令長官ロボス元帥以下スタッフが、戦闘の推移を戦術コンピューターの図面を見ながら、指示を出していた。

今回のスタッフは宇宙艦隊司令長官ロボス元帥、宇宙艦隊総参謀長グリーンヒル大将、次席参謀コーネフ中将、後方参謀キャゼルヌ准将、情報参謀ビロライネン准将、艦隊運行参謀フィッシャー大佐、ドールトン少佐、参謀ワイドボーン大佐、ヤン大佐、アッテンボロー大佐、ラップ中佐などであった。

この動き難く交互通信のし辛いヴァンフリート星系に同盟軍は隕石に多数の通信中継器と航路灯台を配置する事で、嘗てダゴン星域会戦で同盟軍が行った自宅の庭先での戦闘を再現する事が出来るのである。

更に、各艦隊を原作のように繞回進撃をさせる事も出来るが、総司令部は悠然と長距離砲撃による戦闘のみを指令している。敵が押してくれば引き、引いていけば押すの、一進一退の戦闘に見えるが、同盟側は手を抜いた戦闘を行いローテーションで最前列部隊を交代させながら、戦っている。

超距離では命中してもシールドに攻撃が弾かれるが犠牲は少ないのである。更に同盟軍は後方に補給部隊を待機させ一会戦ごとに補給を素早く受けられるようにしたのに対し、帝国はイゼルローン要塞に帰還しないと大規模な補給を受けられないという弱点を突くため、エネルギーや弾薬の消費させるために無駄な長距離攻撃をダラダラと続けているのである。

5時30分になり動かなかったグリンメルスハウゼン艦隊がやっと動き出したが、同盟側は既にその事を予見していたために、戦闘に殆ど参加していないボロディンの第12艦隊分艦隊が軽く応対をする状態である。例えラインハルトが幾ら気張っても僅か200隻程度では戦局に全く影響を与えないのである。

又グリンメルスハウゼン艦隊は各戦隊がバラバラで移動するために完全な烏合の衆になっていた。
ラインハルトがタンホイザー艦橋でキルヒアイスと戦闘談義をしている最中に同盟側は戦線を後退させ始めた。それに勢いづく帝国軍混成艦隊であるが、突っ込んだところで追いつけ無い状態である。

フィッシャー大佐渾身の艦隊運用で同盟艦隊は一糸乱れぬ動きで整然と後退を始めている。
同盟艦隊は3月24日までひたすら帝国軍を引きずり回している。同盟側はいよいよ百隻ずつ7隊七百隻の艦艇によりダミーを使った繞回進撃を行い始めた。その時本隊は小惑星帯に順次後退しながら予め作っておいた補給ポイントで補給を行っている。

しかし、帝国軍は交互連絡が取れない状態で有るため、同盟軍の動きを捉えられずに同盟軍囮に惑わされながら、自らも繞回進撃を行い始めた。

3月25日同盟軍の囮総司令部隊は通信波を発した。
『第10艦隊旗艦盤古応答せよ!』
『第12艦隊旗艦ペルーン応答せよ!』
『第5艦隊は何処に居る!』
お約束通りの偽電を流し続ける。


帝国軍はヴァンフリート星域の外縁部を彷徨しながら同盟艦隊を探しまくるが、中々発見できない、何故なら同盟艦隊は囮以外は補給ポイントを出た後、小惑星帯にアンカーを打ち込み完全に隠れていたのであるから。レーダー等の乱れやすいこの星域では、発見が殆ど不可能になっていた。

帝国軍総司令部が傍受した電波の中には『P・S・HKは4=2にて建造中指示を仰ぐ』という物もありそれをヘカトンケイルと推測したシュターデンの進言でグリンメルスハウゼン艦隊は、電波の発せられた第四惑星宙域を調査するために向かう事になった。此がリーファの悪辣な罠とも知らずに。
 
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