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104部分:第八話 ファーストデートその十二


第八話 ファーストデートその十二

「あいつあれでも俺のこと慕ってくれてるしさ」
「それにしても妹さん小学校一年ですよね」
 月美は今度は陽太郎の妹の学年を確認してきた。
「そうですよね」
「うん、そうだけれど」
「十歳ですか」
 年齢のことも話した。
「結構離れてますね」
「そうなんだよな」
 陽太郎もこのことは否定しなかった。視線を少し上にやっての言葉だ。
「実際。結構気にしてるんだよ」
「すいません、気にしてました!?」
「ああ、俺じゃなくてさ」 
 彼自身ではないというのである。
「あの、妹が」
「妹さんがですか」
「お父さんみたいだって言うんだよ」
 笑いながらの言葉だった。
「これがさ。幾ら何でも大袈裟だよな」
「お父さんって」
「ああ、親父はちゃんといるから」
 このことは断るのだった。前以てである。
「それでも言うんだよ。小さいお父さんみたいだってさ」
「年齢が離れていても。それでも」
「ないと思うだろ?十歳違うだけでさ」
「二十歳ならともかく」
「だよなあ。幾ら何でもさ」
「はい、本当に」
「大袈裟だと思うけれど実際にそう思ってるんだよ」
 こう妹のその年齢を気にしているということを話すのだった。
「気にし過ぎだよ。ちょっと離れてるだけじゃないかって思うんだけれどさ」
「実際に十歳離れた兄弟っていますしね」
「いるよね」
「ええ、います」
 こう陽太郎に対して答える月美だった。
「それでその妹さんにですね」
「ザッハトルテ買うよ」
「私もですし」
 話はザッハトルテに戻った。それにである。
「それじゃあ今から一緒に行きましょう」
「じゃあパン屋でそれ買って」
「買って?」
「家まで送るよ」 
 微笑みを彼女に向けて。そのうえでの言葉だった。
「西堀の家までさ」
「それは」
「いや、危ないしさ最近」
 純粋に好意から出た言葉である。やましいことはなかった。
「だからさ」
「そうしてくれるんですか」
「うん。ああ、西堀が嫌だったらいいよ」
 その場合はいいというのだった。
「その時はね」
「御願いします」
 これが月美の返答だった。
「それじゃあ」
「いいんだ、それで」
「はい、御願いします」
 また答える月美だった。
「それで」
「わかったよ。じゃあ送らせてもらうね」
「私の家まで」
「その駅だよね」
 陽太郎は今度は月美の家の場所を尋ねた。
「パン屋さんのある。そこだよね」
「はい、そこです」
 月美はにこりとして陽太郎の今の問いにも答えた。
「そこにあります」
「そうだったよね。そうか、それで歩いていけるの?」
「歩いて十分程です」
 月美は時間も話した。
「それ位です」
「近いね」
「駅から少し離れた場所の住宅街にありまして」
 そこに自分の家があるのだというのだ。
 
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