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90部分:ニーベルングの血脈その二十二


ニーベルングの血脈その二十二

 次に予定通り総攻撃にかかった。だがどの入口も警護の兵士達の数はまばらなものであった。
「中にいるのか?」
「そうではないでしょうか」
 ジークムントの横にいる兵士がそれに応えた。
「そうでなければ。これだけ警護が緩いのは考えられません」
「向こうもわかってるってことか」
 ジークムントはまた言った。
「こっちが来るってな。だがいい」
 それでも彼は行くつもりであった。
「仕掛けるぜ」
「はい」
 彼は部下達を連れて中に入った。エリアを一つ一つ押さえながら先へ進んでいく。
 基地の中のことは既にその捕虜から聞いていた。トラップ等も潜り抜け、激しい銃撃戦を展開しながら少しずつ先へと進んでいく。
「焦るなよ」
 ジークムントは側にいる部下達に対して言った。
「今はな。いいな」
「はい」
「ここで焦ったら何にもならねえからな」
 そう言いながら前の通路を見据えていた。
「敵は何処にいるかわからねえ。地の利はあっちにある」
「だからこそ」
「慎重に行くぜ」
「了解」
 エリアを少しずつ、部屋を一つずる、着実に押さえていく。次第に基地の奥深くへと入って行った。だがやはり敵の数が少なかった。これがジークムントには気になることであった。
「少なくねえか?」
 彼は周りにいる部下達にこれを言った。
「少ないですか」
「ああ。何かな」
 彼は首を傾げてこう言った。
「妙にな。ここはメーロトの本拠地だな」
「はい」
「その割にはな。少な過ぎる」
「奥にいるということでしょうか」
「さてな」
 だが彼はそうはとらえていなかった。
「若しかすると。この基地にはもうあんまり残っていねえのかもな」
「逃亡したのでしょうか」
「そうかも知れねえが。何か引っ掛かるんだ」
 これも彼の勘であった。
「他の場所に撤退していると」
「だがメーロトの奴はここにいるな」
「どういうことですか?」
「奴は俺が来るのを待っている。そんな気がするんだ」
「この基地で」
「ああ。だから行くぞ」
 部下達に顔を向けて言う。
「いいな、目標は司令室だ」
「はい」
「そこにいる筈だからな」
 こうして彼等は基地を少しずつ押さえ、先へ先へと進んでいった。そして遂に司令室の前にまで辿り着いた。
「さて、と」
 ジークムントはその部屋の扉の前に立ち声をあげた。
「ここだな」
「ですね」
 後ろにいる部下達がそれに応える。
「行くぞ、いいな」
「はい」
「メーロト、遂に最後の時だ」
 扉に爆弾がセットされる。
「覚悟は出来ているな」
 扉が吹き飛ばされる。彼はその爆風を前で受けながら呟いていた。
 扉がなくなった。その中が露わになっていた。そこに一人の男が立っていた。
 
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