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リング

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84部分:ニーベルングの血脈その十六


ニーベルングの血脈その十六

「ここからだ」
 彼は集結する自軍を見て言った。
「ナイティングに向かう。いいな」
「了解」
 部下達はそれに頷いた。
「メーロトの軍と会ったら・・・・・・。わかっているな」
「倒す」
「そうだ。おそらく奴等にはナイティングの手前で出会うことになるだろう」
 丁度彼等は補給の為に帰るところである。これはジークムント自身が狙っており、予想されていることであった。
「そしてそこで決戦を挑む、いいな」
「はい」
「ナイティング近辺の地形も調べておけ」
「わかりました」
「大体戦う場所はわかってるがな」
 彼にはこれからのことがおおよそ予想がついていた。
「まずは調べておいてくれ。いいな」
「はっ」
 参謀達がそれに応えた。
「そしてメーロトの軍だがな」
 ようやく敵に関して言及してきた。
「奴等の疲弊はかなりのものだろう。だが決して侮るな」
 再度こう念を押した。
「敵は強いってことは念頭に置いておけよ」
 油断の危険性はわかっていた。だからこそ部下達に対して念を押す。
「では全軍進撃だ」
 そのうえでまた進撃命令を出した。
「ナイティングまで向かうぞ、いいな」
 彼は艦橋に立ち指示を下していた。その軍は一直線にナイティングを目指していた。
 まずはその進撃は順調であった。敵の姿もなく進路の帝国軍は次々と降伏し、伏兵もいなかった。
「敵がいませんね」
「補給を妨害してきた結果だ」
 ジークムントは部下の言葉にこう返した。
「物がなければ戦争はできねえ」
「はい」
「だからだ。連中は戦うことが出来ずにナイティングまで退いていやがるんだ。もっともこれも狙っていたがな」
「そうだったのですか」
「メーロトの軍はただでさえ多い。その余裕はかなりのものだな」
「ええ」
「普通にやったんじゃ絶対に何かしてくる、そう読んでいた」
 この進撃に関しても考えていたのであった。これはジークムントの軍事センスによるところが大きかった。
「だからな。色々とやってたんだ」
「最初からナイティングでの決戦に敵の戦力を集中させることも考えておられていたのですね」
「まあな」
 彼もそれを認めた。
「やるんなら一回で決めたいしな」
「一回でですか」
「そうだ。何回もチマチマやるのは俺の流儀じゃねえ」
「流儀って」
「誰であろうとな、それに無理にでも引き摺り込んでやり合ってやるのさ、そして勝つ」
「勝つのですか」
「そうさ、戦争ってのは勝たなきゃ意味がねえだろ」
「確かに」
 それ意外に言うことはなかった。
「いいか、ここが本当に正念場だ」
 ジークムント自身の言葉からそれがよくわかった。
「全軍このままナイティングに向かう、そして敵を殲滅するぞ」
「了解」
 ジークムントは全軍を率いナイティングに向かう。その間やはり敵の攻撃はなく、彼等は順調に兵を進めていった。遂にナイティングまで僅かの距離にまで迫った。ここで報告が入った。
「前方に敵艦隊」
「数は?」
「十個艦隊を優に越えます」
 報告は続いた。
「そして全艦こちらに艦首を向けております」
「やる気だってことだな」
「間違いないかと」
「よし、そっちも最初からそのつもりだ」
 ジークムントは意を決した顔でこう述べた。
「全軍いいな」
「はい」
 部下達はそれに頷く。
「攻撃態勢に入れ。一気に行くぞ」
「一気にですか」
「敵軍はおそらく鶴翼の陣を敷いている筈だ」
 彼はこう読んでいた。
「違うか」
「少しお待ち下さい」
 部下達はそれに応えてすぐに調べる。ローゲを使ってそれをモニターに出した。見れば確かにその通りであった。ジークムントの読みはあたっていた。
「その通りです」
「何と」
「簡単な話だ」
 部下達は驚いていたがジークムントは至って冷静であった。
「敵の方が数は多いな」
「はい」
「そして向こうは物資不足に悩んでいる。ならば一気に勝負をつけたくなるのが感情ってもんだ。しかも本拠地までもうすぐだしな」
「それで鶴翼陣なのですか」
「敵は俺達を包囲して一気に押し潰すつもりだ」
 彼はまた予想を立てた。
 
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