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リング

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68部分:ローゲの試練その二十二


ローゲの試練その二十二

「一月か」
「はい」
 出迎えたフルトヴェングラーがそれに答えた。
「司令が消息を絶たれて。一月が経っておりました」
「そうか、そんなにか」
 ローエングリンはそれを聞いて呟いた。
「その間。何があったかと心配しておりましたが」
「御無事で何よりです」
 カラヤンも言った。見れば皆心から安堵の表情を浮かべていた。
「心配をかけたな」
「いえ、それはいいです」
 だが部下達はそれには構わなかった。
「司令がおられぬ間は。我等が責を果たしておりましたし」
「ローゲの助けもありましたし」
「そうか、ローゲもか」
 ローゲが何であったのかわかった今となってはいささか複雑な気持ちもある。しかしそれは顔には出さない。
「御苦労だったな、皆」
「私もそのローゲの言葉に従ったのだ」
 ローエングリンの横にいたトリスタンがここで言った。
「言葉に」
「そうだ。同盟を打診されてな」
「ふむ」
「我々は共に帝国と戦う立場にある。是非共手を結びたいと」
「実際の交渉はワルター提督が行われましたが」
「それで私の軍とカレオール博士の軍が共にあるわけか」
 見ればそこにいたのはローエングリンの部下達だけではなかった。見たこともない顔の者達もいた。彼等はトリスタンに顔を向けていたのであった。
「成程な」
「司令」
「博士」
 部下達はそれぞれの上官に対して問う。
「これからどう為されますか」
「これからか」
「それはもう決まっている」
 二人はそのそれぞれの部下達に答えた。
「ラインへ向かう」
 二人は同時に言った。
「ラインへ」
「そうだ、そこで帝国を滅ぼす」
「そしてクリングゾル=フォン=ニーベルングを」
「ではすぐにでも」
「全軍補給と再編成が整い次第出撃する」
 ローエングリンは指示を下した。
「よいな」
「はっ」
 こうしてローエングリンはトリスタンと共にヴァルハラ双惑星の一つ、ラインへと向かうことになった。死から甦った彼は今運命の渦の中に入ろうとしていた。今その渦は彼だけでなく他の多くの者達も巻き込もうとしていた。
 その渦の先にあるものは何か、それはまだ誰も知らなかった。だが渦は確かに何かを導き、誘っていた。ローエングリンは今その中に入ったのであった。


ローゲの試練   完


                  2006・3・19
 
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