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リング

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37部分:エリザベートの記憶その十五


エリザベートの記憶その十五

 艦内は迷路の様であった。道は曲がりくねり所々に部屋が存在する。そして物陰や部屋の隅から帝国軍の兵士が襲い掛かる。だがタンホイザー達はそんな彼等を各個撃破し、徐々に確保するエリアを広げていった。
 目指すは艦橋であった。だがその前に来てタンホイザー達はこれまでにない頑強な抵抗を受けた。そこに敵の精鋭達がいたのである。
「やはりここを通すつもりはないか」
「どうやらその様で」 
 ハインリヒがそれに応える。
 見ればバリケードを築き守りを固めている。そして皆破壊力のあるビームライフルを装備している。それでタンホイザー達を寄せ付けまいとしていた。
「一見堅固だな」
 タンホイザーはその敵陣を見て言った。
「どうされますか」
「何、あれはあれで攻略の仕方がある」
 彼は落ち着いた声でこう述べた。
「それでは一体」
「グレネードだ」
 タンホイザーは言った。
「それで吹き飛ばす」
「しかしそれでは」
 それにヴァルターが異議を唱える。
「我々にも被害が出ませんか」
「いや、大丈夫だ」
 だがタンホイザーはそれは否定した。
「この距離では。こちらに損害は出ない。精々爆風の残りが少し来る位だ」
 見れば結構な距離があった。そのグレネードにしろ手で投げたのでは届かない様な距離であった。
「いいな、ランチャーで撃つ」
 タンホイザーはまた言った。
「それで敵を一掃するぞ」
「上手くいけばいいのですが」
「安心しろ」
 タンホイザーの声は自信に満ちたものであった。
「必ず成功する。わかったな」
「わかりました。では」
 部下達も彼を信頼することにした。そしてグレネードを放った。
 グレネードは放物線を描いて敵の陣地へ飛ぶ。そしてその中で爆発した。
「ウワッ!」
 爆風がタンホイザー達を襲う。だがそれだけだった。
 爆風が去った時そこには敵の屍だけが残っていた。タンホイザー達は怪我一つなく、そこには敵の屍だけがあった。作戦は成功であった。
「上手くいったな」
「まさかとは思いましたが」
 部下達はまだ信じられないでいた。
「計算通りだったな」 
 しかしタンホイザーは自信があった様である。平然とした顔であった。
「距離も威力も」
「そうだったのですか」
「そうだ。こうなることは予想していた」
 彼はそう述べた。
「では行くぞ。そしてニーベルングを」
「はい」
 彼等は立ち上がった。そして先に進もうとする。だがそこで立ち止まってしまった。
「むっ」
 目の前に新たな一団が姿を現わしたのである。
「公爵、あれは」
 見れば軍服に身を包んだ彼等とは全く違う身なりの男達であった。粗野な身なりの者が多い。
 その手にはまちまちの武器がある。それを見ただけで彼等が正規軍ではないのがすぐにわかった。
「ワルキューレか」
 タンホイザーはそう呟いた。
「彼等も来ていたのだったな」
「どうされますか?」
 ヴォルフラムが問う。
「彼等は」
「いや、待て」
 だがタンホイザーはこう言ってまずは衝突を避けた。
「彼等とは今は共闘関係にある」
「ですが」
「いいな。攻撃をすることは許さん」
 タンホイザーは強い声で部下や兵士達に対して言った。
「まずは話をしたい」
「わかりました」
 タンホイザーはまずは話し合いをするつもりであった。見ればワルキューレの方でもそうらしい。彼等の中から一人の青年がゆっくりと前に出て来た。
 金色の髪に紫の瞳を持った端整な男である。緑の上着と黒いズボンの上から赤いマントを羽織っている。腰には拳銃がありその細い身体によく合っていた。そしてその顔立ちもまた精悍であり実にその端正さを引き立てていた。額にある紫のホクロが印象的であった。
「卿がワルキューレのリーダーか」
 タンホイザーも前に出た。そして彼に問う。
「如何にも」
 そして彼はその問いに答えた。
「私の名はジークフリート=ヴァンフリート」
 彼は名乗った。
「ワルキューレのリーダーだ」
「そうか」
 タンホイザーはそれを聞いて頷いた。
 
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