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雷獣

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第三章

「困った時の何とやらで」
「ネタを授けて下さいって」
「お願いしたら?」
「そうだね。もう本当にどうしてもネタが出なくて」
 文芸部の方も演劇部の方でもとだ、隼一郎は杏に困り果てている顔で答えた。
「僕も参っているし」
「だったらね」 
 それならと言う杏だった。
「お願いに行ってみましょう」
「そうだね、じゃあ四天王寺に行こうかな」
「あそこ?」
「聖徳太子由縁のね」
 そこにというのだ。
「行ってお願いしようか」
「ああ、聖徳太子って学問も凄かったしね」
「頭凄くよかったからね」
 だからだというのだ。
「もうここはね」
「太子様にお願いして」
 そうしてというのだ。
「授けてもらおうかな」
「それじゃあ行きましょう」
「えっ、杏ちゃんも行くんだ」
「言い出しっぺが行かなくてどうするのよ」
 それこそとだ、杏は隼一郎に何を今更言っているのかという顔で返した。
「そうでしょ」
「それで言うんだ」
「そう、それでね」
 さらに言う杏だった。
「いいわね」
「一緒にだね」
「ええ、行きましょう」
 こうしてだった、隼一郎は杏と一緒に四天王寺まで行ってそのうえで聖徳太子にネタを授けてくれる様にお願いに行った。まさに困った時の神頼みだった。お寺に行くがそこはもうそうした気持ちになっていた。
 だが隼一郎は文芸部の部活の時にふとこの話も漏らしてそれを佳乃に聞かれてしまった。すると佳乃はこう彼に言ってきた。
「だったら私もね」
「先輩もですか」
「君にいつも言ってるから」
 会誌の作品を出して欲しいとだ。
「だからね」
「それで、ですか」
「ええ、私も行って」
 そしてというのだ。
「そのうえでね」
「お願いにですか」
「ついて行くわ。大阪はいつも行ってるし」
 近所にある大都市だからだ、神戸だけでなくこの街にも行っているのは佳乃だけでなく隼一郎も杏も同じだ。
「それでね」
「じゃあ三人で、ですね」
「行きましょう。とにかく本当にね」
「はい、作品をですね」
「出して欲しいから」
 出してくれる様言う佳乃もかなり辛いのだ、それでというのだ。
 こうして三人はある休日に神戸ではなく大阪に行った、そこの四天王寺でお参りをしてお願いをしたが。
 ここでだ、佳乃はこう隼一郎と杏に言った。
「少し難波に寄らない?」
「難波にですか」
「あそこにですか」
「ええ、あそこに行ってね」
 そうしてというのだ。
「織田作之助さんに縁のある場所に行って」
「ネタをですね」
「探してみない?」
「そういえば難波は」
 杏が言ってきた、三人は丁度四天王寺から地下鉄での移動に入ろうとしていたところだ。大阪の地下鉄は大阪市全土を巡っていてその外にも及んでいるのだ。 
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