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リング

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204部分:ラグナロクの光輝その五十八


ラグナロクの光輝その五十八

「やはり」
 パルジファルはそれを見上げて呟いた。
「行く先も決定です」
 そのうえで言った。
「右側面を叩きます」
「友軍の動きは」
「今ヴァルハラへの入口に入ろうとしています」
 パルジファルの部下から報告が来た。
「戦場への到着は我々が敵の右側面に達する直前です」
「そこでもいいタイミングですね」
 パルジファルにとってはよいことづくめであった。
「主力に目がいき、火力がそちらに向けられるその瞬間に」
「その時こそ」
「そうです。何もかもが整ってきました」
「後は戦場に向かい」
「時が来たならば撃つ」
 何時になくパルジファルの声が簡潔で強いものになった。
「まずは全艦艇による一斉射撃です」
「了解です」
「そして次は」
「次は」
「同志達と共にです」
「ラグナロクを切り開くと」
「間も無くギャラルホルンが鳴ります」
 パルジファルの艦隊は帝国軍の右側面に向かっていく。その動きは順調に行われていた。
「そこから全てが」
 そして今右に到着した。主力も今ヴァルハラに姿を現わそうとしていた。
「帝国軍の全艦艇が我が軍の主力に艦首を向けております」
「はい」
 パルジファルは部下からの報告に頷いた。
「そして七匹の竜も」
「そちらに向いていますね」
「ええ。それに対して我が主力は」
「六隻のケーニヒ級を前に出してきていますね」
「そうです。ですが」
「わかっています」
 ファゾルトのことも。彼には全てわかっていることであった。
「では我が軍も今のうちに」
「はい」
「攻撃準備に取り掛かりましょう」
「ですね。それでは」
 パルジファルの艦隊も密かに攻撃準備に入った。その前では帝国軍が攻撃態勢に入ろうとしていた。
「全艦攻撃準備完了」
 報告がまた入った。
「敵艦隊攻撃陣形を整えております」
「七匹の竜も前面に展開しております」
 遂にギャラルホルンが鳴ろうとしていた。そしてそれはパルジファルの手にあった。
「では」
 パルジファルはゆっくりと右手を掲げた。そこに全ての神経を集中させる。
 目の前の帝国軍は今まさに友軍へ攻撃を仕掛けようとしていた。彼の軍には気付いていない。
 誰かがゴクリと息を呑んだ。その音さえ聞こえてくるような。それ程までに緊張した空気が支配していた。
 その中において。今ギャラルホルンが鳴った。
 
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