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リング

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202部分:ラグナロクの光輝その五十六


ラグナロクの光輝その五十六

「人間なのです。そして彼等が」
「ニーベルングを倒す」
「そう、そして新たな国を築くのです」
「これまでのしがらみを越えた国を」
「アースとホランダーの血を合わせ、そして他に多くのものを包み込んだ国を」
「私達が築くことが出来なかった国を」
「築くのです」
 パルジファルはさらに言った。
「彼等がね」
「そうなのですか。では我々は」
「悲観することもありませんが」
 悲しい顔を見せようとしたワルキューレ達に対して述べた。
「貴方達もその中に入ればいいだけですから」
「中に」
「はい。これからはアースもホランダーもなく」
「全ての者が同じこのノルンの中で」
「生きればいいのです。それが銀河なのですから」
 哲学的な、あまりに悠久な言葉であった。
「それが」
「そうです。ユグドラシルがそうであるように」
「ユグドラシル」
 世界を司る大樹である。その巨大なトネリコの木はこの世の全てであるのだ。その中に神々も人も巨人達もいるとされている。大樹の周りには海がありそこに世界を取り囲む大蛇ヨルムンガルドも炎の巨人の国ムスペルスヘイムも存在している。当然海の神エーギルの館もある。
「全ての者がそこに暮らすことの出来る世界が訪れるのです」
「彼等の手によってですか」
「ラグナロクの果てに」
「そして今我々はラグナロクに足を踏み入れました」
「そうです」
 パルジファルはまた頷いた。
「それが今なのです」
「最後の戦いに」
「アースやニーベルングといったしがらみを解き放つ戦いです」
「それが今はじまるのですか」
「これに若し敗れたならば」
 彼はさらに語った。
「新たなる国はそれまでと同じものです」
「ニーベルング族の国」
「そしてまた輪廻は繰り返し」
「果てしない抗争が繰り広げられる」
「クリングゾル=フォン=ニーベルング。彼はそれに気付いていません」
 それがニーベルングの限界であると。今語った。
「彼の心はあのアルベリヒの心と融合している為」
「それに気付くことはないと」
「そうです、だからこそ彼は自分の種族のことしか考えられないのです」
 その時点で七人とクリングゾルは大きく異なっていたのだ。
「銀河のことも。全てはニーベルングの為」
「自らの種族の覇権の為」
「そのしがらみが断ち切られなければならない時が来ているとも知らず」
「その覇業を掴もうとする」
「私は彼に勝利を譲る気はありません」
 そのうえで言った。
「次の銀河の為に」
「次の銀河の為に」
「そうです。ですから」
「勝利を掴まれると」
 パルジファルはそこまで聞いて言った。
「その通りです。ではこの道を越えて」
「はい」
「出来ることなら帝国軍の側面に出たいのですが」
「側面にですか」
「はい」
 パルジファルの言葉に答えたノハブリュンヒルテであった。
 
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