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魔女の付き人(仮)

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刹那の邂逅

 
前書き
最近メルヘヴンのアニメに熱中しています
久し振りにアニメを見たらOpやEd、そしてostも素晴らしく、やはりメルヘヴンは面白いアニメだと実感するこの頃

今作3話目です
昨日に続き連続投稿です
ではどうぞ 

 
 無事、ギンタ達は伝説のARMバッポを手に入れた。
 誰一人として怪我を負うことはなく、彼らはバッポが眠っていた神殿から帰還することに成功する。

 見れば自称紳士であるバッポは今、今宵の遣い手兼相棒であるギンタと戯れている。
 ウィスはドロシーと今後の活動の方針を話し合っていた。

「本当にウィスは私と一緒に行動しないの?」
「ああ、少し確認(・・)したいことがあるからな。」

 既にウィスはドロシーに対する言葉遣いを改めている。
 もう他人行儀は必要ないと考えてのことだ。

「それにしても言葉遣い変わったわね、ウィス?」
「嫌なら直すが?」

 どちらもウィスの素だがもう必要ない。
 あくまであの敬語口調は距離感を測るためのものだ。

「ううん、そっちの方が私の好みだわ。」

 それは良かった。
 それにしてもドロシーは随分と大胆な発言をする。
 
「それにしても気になることって何?」
「この世界(・・)そのものについて…だな。」

 一度、この世界について深く調べる必要がある。
 世界に満ちる潤沢なる魔力と神秘。

 だがそれと同時に存在する邪悪なる魔力。
 ドロシーの様に善なる魔力の持ち主とは相反する存在である邪悪なる魔力の存在。

 そして遥か遠方から感知できるドロシーと類似する魔力の持ち主である女性の存在。
 だがその女性の魔力は酷く汚され、善なる存在からは乖離している。
 彼女に纏わりつくはこの世界で最も邪悪な人でもなく、生物でもない、概念的な存在。

 一度その女性と出会う必要があるだろう。

 ドロシーは軽快で人を食った様な女性であるが、何かの信念の元生きている。
 まだ推測の域を出ないがウィスが現在進行形で感知し続けているこの女性と何か関係しているような気がしてならなかった。

 ドロシーと似た魔力の持ち主、つまり彼女はドロシーと近親者がである可能性が高い。
 あるいは姉妹の可能性も浮上してくる。

「この世界について…?」

 見ればドロシーはウィスの言葉ぬ要領を得ることができず、首を傾けている。
 そんな彼女にウィスは意味深な笑みを浮かべ、背を向けた。

 ウィスは杖を地面へと軽く打ち鳴らす。
 
 途端、眩いまでの白銀の光が周囲に迸った。
 
 その光はウィスの周囲を円を描くように循環し、包み込み、その輝きを強く増していく。
 白銀の光は強く迸り、幾度も循環し、周囲を幻想的に照らし出す。
 
 やがてその白銀の光は即座にウィスを包み込み、途轍もない速度で天へと昇っていった。

 そして天へと昇る最中その光は突如消え失せる。
 ウィスの姿は既になく、先程までの輝きが嘘のようにその場には閑散とした光景が広がっていた。

 ウィスは瞬く間に宙へと飛翔し、この世界を知るべく飛び立っていった。










「うーむ、やはりウィスはただ者じゃないわね……。まあ、そういう所もミステリアスで良いんだけど。」

「良いなー、俺も連れていって欲しかったなー。」

「それを言うなら儂もあ奴に遣って欲しかったわ!あのウィスという男の魔力はこの場の誰よりも澄み切っておったのじゃからのう!」







♕♔♘♗♖♙







 天を飛翔し、大気を突き抜け、ウィスは目的の場所へと飛んで行く。
 既にドロシー達の姿は遥か彼方。

 数多の雲を突き抜け、大陸の上空を越え、ウィスは遂に目的の場所へと辿り着いた。

 ウィスは宙より降下し、眼下のそびえ立つ白亜の居城の前へと降り立つ。

「何だ、手前ェは!?」
「此処に一人で来るということは余程の命知らずか…」
「余程の馬鹿と見える。」
「けけっ!この人数差で勝てると思っているのか?」

 門番であるならず者達がウィスに吠えてくる。
 やはり弱い者程よく吠える。

「貴方方に用はありません。怪我をしたくなければ素直にそこからどいてください。」

 ウィスにとって彼らは最初から眼中にない。
 この場に赴いた目的はとある一人の女性と出会うことなのだから。

 しかし当然、ウィスの勧告に止まる彼らではなくウィスへと勢い良く飛び掛かってきた。

「…忠告はしましたよ。」

 恨むなら相手の実力を履き違えた自分を恨め。

サービスは無論無しだが、恨まないでくださいね?

 ウィスは左手を前方へと突き出し、親指で抑え込んでいた中指をはじき出す。
 そして、高速で人数分だけ指を突き出し、無数の不可視の衝撃波を放った。



 途端、周囲の大気が震え、震撼し、波紋状の衝撃波が生じ、周囲のあらゆるものを吹き飛ばすことになった。



 



♕♔♘♗♖♙







「世界を…、世界を浄化しなければ……。」
 
 白亜の居城の深奥にて一人の女性が漆黒のドレスに身を包みながら、うわ言の様に一人で呟く。

 機は熟した。
 先の大戦で深い眠りについたファントムも漸く復活する。

 ファントムが復活すれば自身の大願も必然的に成就するだろう。
 この世界を浄化し、世界を救済するのだ。 

 そのためには……

「先ずはスノウを手に入れなくては……」

 その女性が踵を返し、この場から立ち去ろうとした刹那……







 部屋の扉が勢い良く弾け飛び、粉微塵と化した。

 周囲に爆風を撒き散らし、門兵諸共無様に転がり込でくる。
 皆一様に身体に大きな凹みを刻み、満身創痍の状態だ。
 
「ゲホ…ゲホッ!」
「うぅぅ…痛ェ…、痛ェよぉ……。」
「一体…、何が…?」
「申し訳ございません…。し…侵入者です…!」
「そんなの見れば分かるわ。」

 その女性は冷めた目で吹き飛んできた門兵を見下ろす。
 


「失礼。」

 現れるは一人の男性。

 右手に奇抜な装飾が施された杖を有し、首回りには大きなリングをぶら下げている。
 その身にダークカラーのローブ姿を着込み、深紅の瞳で此方を射抜いていた。
 髪の色は黒である。

 その人物は杖を打ち鳴らし、この惨状と化した場に悠々と入室してきた。
 
「…貴方は?」

 門兵などもはや見向きもせずその女性は件の人物であるウィスを見やる。

「私の名前はウィス。本日は貴方に会いにきました。」

 邪魔をしてきた門兵達は軒並み吹き飛んでもらった。
 眼前の女性はウィスを測りかねているのか何も言葉を発さない。
 
「…やはり似ていますね、貴方は。」
 
 ウィスは彼女に構うことなく、言葉を続ける。

「その身から放たれる魔力の質に、ピンクの髪。そして顔付きもどこか似ています。やはり貴方を見ているとドロシーを連想します。」 

 漆黒のドレスにその魅惑的な肢体を包み、ドロシーを強く連想させる女性。
 口元は漆黒のマスクで覆い、表情は伺い知れない。

「まさかドロシーの"姉"である貴方がこんな場所にいるとは思いもしませんでしたよ。」

 そう、彼女こそドロシーの実の姉であり、血を分けた姉妹。

「そうですよね。元カルデア所属の魔女、"ディアナ"?」

「…何故、それを?」

 目を見開き、僅かに驚いた様子で"ディアナ"はウィスを見据える。

「そんなに驚くことはないでしょう。私はただ調べただけです。」

 杖を使用すれば過去の事象を知ることなど容易だ。
 そして魔力を感知すれば彼女の居場所を割り出すのもどうということもなかった。
 だがそんなことよりも……

「そう、その眼、…その眼ですよ。」

 この目を自分は知っている。

「貴方は今の世界の有り様に絶望し、世界を救済しようとしている者の目をしてします。」

 ウィスが回顧するは一匹の獣の存在。
 誰よりも人類を愛していたがゆえに死という結果を許容できずに人類の可能性を認めなかったモノ。

「世界を浄化し、悲劇無き世界を創生しようと必死ですね、貴方は?」

 ウィスは彼女の深層心理を読み取っていく。

「…そこまで、知っているとは驚きだわ。」

 ディアナは驚嘆と共にウィスに対する好奇心を刺激される。
 此方の企みと大願を此処まで熟知しているとは。

「それで、貴方は私を止めに来たのかしら?」

 いつでもARMを発動することができるようにディアナは身構える。

「いえ、まさか。私はそんなことをしに来たのではありません。」

 ウィスがこの場に赴いたのはただの確認だ。
 そう、彼女、ディアナの在り方を知るための。

「では、何故此処に?」

 そしてウィスは確信する。
 ディアナを狂わせた元凶の存在を。

「先程言いましたよね?私はただ貴方に来ただけだと。」
 
 彼女は元々優しい心の持ち主なのだろう。
 だが邪悪なる元凶が全てを狂わせた。

「別に私は貴方の行いを否定するつもりはありません。」

 よくよく感知すれば彼女は邪悪なる存在に強く影響を受けてしまっている。 
 彼女の深層心理に根付く思いが意図的に増幅され、本人の気付かない内に暗示に似た何かを掛けられてしまっているのだ。

「…。」

「その信念も、願いも、あり方も…。」

 口を動かしながらウィスは感知範囲をより鮮明に、深く広げていく。
 そして遂に見つけた。

 この世界、否、ギンタの世界の悪意と憎悪によって生まれた悪の塊を。
 今はある一人の人間の内に入り、その悪意を撒き散らしている。

「…。」

「例え誰もが貴方を否定しようが、私は貴方を肯定します。」

 世界を救済したいという思いが間違っていることなどありえない。
 彼らの思いも間違ってなどいなかったのだから。
 故にウィスはディアナの在り方を肯定する。

 そして、彼女を正気に戻し、正しい道に引き戻すのはドロシーの役目だ。
 自分はあくまで彼女の手助けをし、きっかけを与えるだけ。

「……さて、私が確認したいことは終わりました。これで私は失礼させて頂きます。」

 ウィスは踵を返し、この場から立ち去ろうとする。
 正に台風の嵐。
 何の告知も無くこの場を訪れ、かき乱し、帰ろうとしている。





「…ねえ、ウィス。貴方、私の下へ来ない?」

 そんな中、ディアナは突如ウィスを勧誘する。
 
 ディアナはウィスに此方を害するつもりがないことを理解した。
 その在り方、強さ、悪とされる自分さえも受け入れる許容性。

 その全てがディアナを刺激した。
 ディアナは元来、欲深い人間であり、己が欲しいと思った物は何としても手に入れようとする魔性の女性だ。

 そう、世界から忌み嫌われ、憎まれている自分を受け入れてくれたウィスをディアナは強く欲したのである。
 故にディアナはウィスを手に入れ、己の物にしようとウィスを勧誘する。
 
だが……

「お断りします。」

 ウィスはそんな彼女の提案を丁重に断る。

「…それは、何故?」

「強いて言えば……」







「今の私は貴方よりもドロシーの生き方に惹かれているからですよ。」

 彼女が数多のARMを手に入れ、世界を走り回っているのは彼女が深く関係しているのだとウィスは推測している。
 
 普段は軽快な様子で振舞っているが、彼女が心の隅では誰かに甘えたいことをウィスは知っている。
 そう、人は誰一人として一人では生きてはいけない生き物なのだから。

 無論、ウィスもその一人。
 今はただウィスはドロシーという一人の女性を支えたい。

「それでは、ディアナ。またお会いましょう。」

 そして今度こそ、ウィスは杖を打ち鳴らし、彼女の下から立ち去った。
 白銀の光を迸らせ、ギンタとドロシーの魔力が感じる場所へと飛翔していく。
 









 そして、一人取り残されたディアナは……

「私よりも…、あの子に惹かれている…。」

 実の妹であるドロシーに嫉妬にも似た感情を抱いていた。

「……ウィス、貴方をいつか絶対に手に入れてみせるわ。」

 こうしてウィスは人知れず再び独占欲が強い女性に狙われることになった。 
 

 
後書き
ディアナもかなり好きです
アニメで見たらヤバイくらいの美人でした
まあ、ドロシーが一番好きだがな!

感想と評価よろしくお願いします('ω') 
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