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195部分:ラグナロクの光輝その四十九


ラグナロクの光輝その四十九

 その時が遂に来た。グラールの艦首にロンギヌスが備え付けられ、兵も整ったのであった。
「これでよしですね」
「はい」
 パルジファルはドックにいた。その周りを直属の部下達が取り囲んでいた。
「既にムスッペルスヘイムまでの星系は全て掌握しております」
「艦隊も整え終えました」
「全ては備わりましたか」
「その通りです」
「最早後は総帥の御指示だけです」
「わかりました」
 彼はそれを聞いたうえで頷いた。そして言った。
「全軍ムスッペルヘイムへ向けて進撃です」
「はっ」
「そして目指すは」
 部下達は敬礼の後で問う。その答えは決まっていた。
「ヴァルハラです」
 それ以外にはなかった。パルジファルの言葉はもう誰もがわかっていた。だが言わずには全てがはじまらないものであったのだ。そして彼は言った。全てを進める為に。
「宜しいですね」
「無論です」
「では最後の戦いに」
「はい、行きましょう」
 遂にライプチヒから無数の艦艇が出港した。目指すはムスッペルスヘイム。激戦の末に奪取し、クリングゾル=フォン=ニーベルングとはじめて対峙した運命の場所であった。今七人は大軍と共に向かっていた。グラールの会議室に七人が集まっている。
「いよいよだな」
「うむ」
 七人は会議室で円卓に座している。そこで互いの顔を見ながら話をしていたのであった。
「ムスッペルスヘイムへ」
「そこにワルキューレ達もいるのだな」
「先程彼女達から連絡がありました」
 パルジファルが六人に対して言った。
「そうか」
「それで何と」
「ムスッペルスヘイムにて落ち合い、そのままヴァルハラへ向かおうと」
「当たり障りのねえ言葉だな」
 それを聞いたジークムントが述べた。
「だが。それだけではないだろう」
 トリスタンが次に言った。
「そうだな。そこはどうなのだ」
 タンホイザーがパルジファルに問う。
「総帥に聞きたい」
 ジークフリートも。
「このままヴァルハラに向かうのか」
「それとも策があるのか。どうなのか」
 ヴァルターとローエングリンもパルジファルに問うた。六人の視線はパルジファルに集中していた。
「主力はこのままヴァルハラに向かいます」
「ふむ」
「主力はか」
「ですが。一部は別行動を取り違うルートでヴァルハラへ」
「待て」
 だがそれを聞いたローエングリンが声をあげた。
「今別のルートでと言ったな」
「ええ、それが何か」
「ヴァルハラへの道は一つしかない筈だが」
 ジークフリートの目をいぶかしむものであった。
「ムスッペルスヘイムから一直線に続く道しかない」
「そしてその道は完全に押さえている」
 トリスタンがジークフリートの言葉に述べる。
「だからこそ我々は今ムスペッルスヘイムに向かっている」
「そう、確かにその筈だ」
 タンホイザーがそれに頷く。
「それが今になって別の道があると卿は言った」
「それは一体どういうことなのか」
 ヴァルターもいぶかしむ目であった。その目でパルジファルを見据えている。
「ムスッペルスヘイムから意外にも道はある」
「それはかなり大きなことだぜ」
 ジークムントの目が光っていた。
「戦略上で。勝つか負けるかってレベルでな」
「どうなのだ、それは」
「一体その道とは」
「それはワルキューレの方々が御存知なのです」
「彼女達が」
「はい」
 パルジファルは六人に答えた。
 
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