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リング

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189部分:ラグナロクの光輝その四十三


ラグナロクの光輝その四十三

「それからです、我々が最後の進撃を開始するのは」
「力を蓄えてからか」
「はい、ですがワルキューレの方々には約束通り道案内をお願いします」
「ヴァルハラまでの道を押さえてもか?」
「ルートを手中に収めても」
「その通りです」
 パルジファルの言葉に迷いはなかった。
「兵とは軌道です」
 彼はそう言ったうえでまた述べた。
「軌道か」
「はい。ヴァルハラまでのルートは確かにわかりました」
「うむ」
「ですが。ワルキューレ達はそれとは別の道を使っていると思われます」
「ニーベルングの道とは別にか」
「そうです。それによくお考え下さい」
 彼はさらに言った。
「ニーベルングは奸智にも長けた男です。道を教えるということは」
「既にその道の全てを知っていて」
「対処も出来ているということか」
「そうです。従ってその道を使うことは極めて危険です。おそらくそこにファフナーやファゾルトを配しているでしょう」
「あの男の性格からすればそうだな」
 ジークフリートがそれを聞いて述べた。
「今までが今までだ」
「だとすればだ」
「はい」
 パルジファルは今度はトリスタンに顔を向けた。
「今わかっている、ニーベルングが明かしたのも含めて全ての星系の占拠はニーベルングを攻める為ではないのだな」
「そういうことになります」
「では逆か」
 ヴァルターがそれを聞いて言った。
「ニーベルングの軍勢を抑える為か」
「そういうことです」
「そしてワルキューレ達に先導されヴァルハラへ入る」
 ローエングリンが述べた。
「卿の作戦はそれだな」
「おわかりになられましたか」
 タンホイザーを見て言葉を返した。
「成程な。またしても裏をかくか」
「けどよ、それでも問題があるぜ」
「それは」
「ファゾルトとファフナーだよ」
「それですか」
 ジークムントはまだ安心していなかった。彼は帝国軍の切り札であるファゾルトとファフナーについて警戒をしていたのであった。彼の視点は正しかった。
「バイロイト、そしてニュルンベルクを破壊したことからもあの竜の力が絶大なのは明らかだ」
「確かに我々にはミョッルニルがある。これでファフナーに対してはとりあえずは安心だが」
 七人はすぐにファフナー、そしてファゾルトに関しての話に入っていた。これを破らなければ連合軍に勝利がないのは彼等が最もよくわかっていた。
「それでも。ファゾルトがまだいる」
「それにファフナーも強化されていて一体とは限らない。それへの対処をどうするか」
「ミョッルニルだけでは無理でしょうか」
「おそらくはな」
 六人はパルジファルにそう返した。
「ファゾルトについてはまだわからない」
「おそらくファフナーの強化型だとは思うが」
 これも予想に過ぎなかった。結局ファゾルトに関しては何もわかっていないのが実情であった。いささかどころかかなり不安のある状況であった。
「ミョッルニルだけで足りるだろうか」
「他にも備えが必要なんじゃねえか」
「ううむ」
 パルジファルは同志達の言葉を耳にして考え込んだ。
「そうですか」
「だがまだ時間がある」
「ヴァルハラまでの星系の占拠と並行して新兵器の研究を進めていこう。ファゾルト用にな」
「わかりました。それでは」
「うむ、そして軍の再編成だな」
「ええ」
 やるべきことは山の様にあった。最後の戦いを前にして彼等は備えをしなくてはならなかった。その為には。全てを無駄にすることは出来なかったのであった。
 暫くは戦いもないまま進んだ。星系の占拠は順調であり艦隊の編成、増強も補給路や基地の整備も進んでいた。だが。新兵器の開発だけは遥として進まなかった。
「参りましたね」
 パルジファルにとってそれは憂慮すべきことであった。
 
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