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これこそ親分

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第三章

 大沢は武村を二発殴ってもう一発というところでナインに止められた、既に日本ハムナインもベンチから出ていて阪急側も応戦に出ていて乱闘となった。
 この結果大沢は罰金と十日の出場停止処分を受けウィリアムスも処罰を受けた、だが大沢はその処分の後でこう言った。
「頭へのボールは命に関わるだろ」
「はい、確かに」
「だからですか」
「監督も怒られたんですね」
「ああ、三球投げてきたから三発殴ってやるつもりだった」
 つまり同じだけというのだ。
「けれどそれが出来なかったな」
「ナインが止めましたね」
「三発目で」
「しかしやられたらやり返せだ」
 このことは強く言った大沢だった。
「人間として間違ったことは許せねえしな」
「だから武村投手を殴られましたか」
「選手への危険行為だったからこそ」
「そうだよ、暴力はいけねえがな」
 大沢もこのことはよくわかっていた。
「けれど監督は自分のチームの選手を守らないと駄目だろ」
「さもないと監督じゃない」
「そういうころですね」
「そうさ、だから俺はあいつを殴った」
 大沢は確かな顔と声で言った。
「そして責任を取ってってことだ」
「そういうことですか」
「じゃあ今回の処分もですね」
「こうして受けるのさ」
 ここでは笑って言った大沢だった、そして実際に彼は十日の出場停止処分を受け七試合出られなかったその間のチームのことはコーチ達に任せた。
 そのうえでチームに戻り再び采配を執った、このことは大沢は暴力を振るったとして批判されかねないものだった。
 だがチームに戻った彼にだ、ファン達は喝采を浴びせた。
「選手を想う人だな」
「しっかりと責任も取ったしな」
「それを覚悟で動いた」
「肝っ玉も心もある人だな」
「監督はああじゃないとな」
 こう言って大沢に喝采を浴びせた、この件はかえって大沢の名声を高めることになった。そうしてだった。
 大沢はこの時から人気監督となり采配や育成、何よりも侠気が注目される様になった。そのはじまりとなった事件が乱闘であってもそれこそがいい、大沢らしいと言われた。そう考えるとこの事件はよい事件であったということか。


これこそ親分   完


                 2017・10・12 
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