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儚き想い、されど永遠の想い

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92部分:第八話 進むだけその九


第八話 進むだけその九

「なかったです」
「なかったですか」
「ですが意識して見てみると」
 どうかというのだ。真理の目はまだその空と海の結ばれるところにある。
 その果ての一つの青は白をも思わせる清らかさがある。その清らかなものを見ながらだ。真理は義正に対してこうも話したのだった。
「あの、よかったら」
「よければですか」
「また来たいのですが」
 こう話すのだった。
「宜しいでしょうか」
「そうですね。私もです」
「八条さんもですか」
「また来たいです」
 笑顔でだ。真理の言葉に応えたのだ。
「この空と海の二つの青が一つになった青を」
「また見たいと思われるのですね」
「私もそう思うようになりました」
 義正はこの言葉をだ。今度も出したのだった。
 そして微笑んでだ。真理に顔を向けて述べた。
「では次は森で」
「そしてその次にまたですね」
「ここにしますか。須磨の砂浜に」
「はい。青を見ましょう」
「青だけではないですし」
 義正はふとだ。足元が目に入ってだった。こう言ったのだ。
「白もありますから」
「砂浜ですね」
「この砂浜も奇麗ですね」
「そうですね」
 真理はこのことにも笑顔であった。砂浜にもだ。
「青だけではないですか」
「おそらく森もです」
「森も?」
「緑だけではないです」
 森といえば緑だ。しかしだ。そこは緑だけではないというのだ。
 それは何故か。義正は真理にこのことも話した。
「一つだけの世界では。世界は成り立たないですから」
「一つだけではですか」
「複数の世界が同時にあって」
「それでなのですね」
「はい、その世界は成り立ちます」
 そうだというのだ。義正は真理にこうした話もした。
「一人では生きられないのと同じです」
「一人ではですか」
「はい、生きられません」
 義正はこう考えていた。一人だけでの世界は成り立たない。それはだ。幼い頃から多くの人と接して生きていたからわかることだった。
「とてもです」
「だから。森もなのですね」
「緑の世界だけではなく」
「他のものも」
「海は青と白です」
 その海の青だけでなくだ。砂浜の白もだというのだ。
「ですから森もです」
「しかし森にある他のものとは」
「それも見ましょう」
 まだわからないがだ。それでもだというのだ。
「森に行ってそれで」
「そうしてわかるのですね」
「海もそうですね」
 義正は今彼等がいるだ。海の話をしたのだった。
「最初は海だけだと思っていましたね」
「はい。砂浜はあると思っていても」
「あまり意識してはいなかった」
「海が主だと思っていました」
 そしてだ。砂浜は従だとだ。そう思っていたのだ。
 しかし実際はというとだ。それが違っていたのだ。
「海も砂浜も同じだったのですね」
「そして空も」
「三つのものが一つになって」
「それで海となるものだったのです」
「そして砂浜も空も」
 言い換えればだ。その二つもであった。御互いになのだ。
 
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