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儚き想い、されど永遠の想い

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83部分:第七話 二人きりでその十三


第七話 二人きりでその十三

 だからこそだ。今は即答したのである。
「今ここで」
「わかりました。そのお言葉受けました」
「有り難うございます」
「その約束を胸にです。今は」
「御別れですね」
「暫しの別れですね」 
 微笑みになった。その笑みで言ったのである。
「また御会いするまでの」
「それまでのほんの」
「そうです。では」
「はい、では」
「さようなら」
「また。御会いしましょう」
 二人で言い合いだ。今は別れたのだった。
 真理はそのまま屋敷に帰った。そうして己の部屋に入った。するとすぐにだ。
 扉をノックする音が聞こえてきた。その音に顔を向けて応えた。
「どうぞ」
「はい」
 婆やだった。彼女が入って来たのだ。
 そのうえでだ。こう彼女に言ってきたのである。
「服はどうされますか?」
「今から着替えるつもりですけれど」
「御手伝い致しましょうか」
 彼女に気を配ってだ。そうしての言葉だった。
「そうしましょうか」
「いえ、一人でします」
「左様ですか」
「はい。ただ」
「ただ?」
「御茶を用意して欲しいのですけれど」
「御茶ですか」
 婆やが尋ね返すとだ。それを受けてだ。
 あらためてだ。こう訂正して言ったのであった。
「そうですね。珈琲にします」
「珈琲にされますか」
「はい、今はそれを御願いします」
 こう婆やに告げたのである。
「宜しいでしょうか」
「少し時間がかかりますがいいですか?」
「はい、その間に着替えておきますので」
 それでいいと返す真理だった。
「御願いします」
「では」
「それでは」
 こうしてだ。婆やに珈琲を頼んでだ。真理は自分で服を着替えた。外出用の赤と白の和服、淡いピンクのパラソルも持っていたそれからだ。白いゆったりとした洋服に着替えた。
 そのうえで婆やが来るのを待つ。それはだ。
 すぐだった。彼女はすぐに珈琲を持って来た。そうしてだった。
 笑顔でだ。こう真理に言ってきた。
「どうぞ」
「有り難うございます。それでは」
「飲まれたらです」
 その時の話もだ。真理にするのだった。
「また御呼び下さい」
「いえ、それは自分で」
「御自身で下げられますか」
「はい、そうします」
 真理から婆やに話した。
「ですから」
「いえ、それは」
「いえ、婆やもそこまでしなくていいですか」
「左様ですか」
「はい、お気遣いなく」
 笑顔でまた婆やに話したのだった。
「そうして下さい」
「そこまで仰るのでしたら」
「それで御願いしますね」
 こんな話をしてだ。そうしてだった。
 彼女は部屋の中の椅子に座ってそのうえで珈琲を飲む。その味は喫茶店のそれとは少し違うがそれでもだ。あの時の音楽を思い出させるものだった。
 それを飲み思い出していた。しかしここで。
 咳が出てしまった。六回程度。そうして言うのであった。
「最近どうも咳が」
 多いように感じた。だがそれは今は忘れてだ。義正と共にいた時のことを思い出しその中に浸っていた。


第七話   完


                2011・4・6
 
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