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儚き想い、されど永遠の想い

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80部分:第七話 二人きりでその十


第七話 二人きりでその十

「同じだと思います」
「では魚が好きであり野菜が好きなのと」
「同じだと思います。言い換えれば」
 真理はだ。こうも話した。
「私達は今珈琲を飲んでいますけれど」
「珈琲ですか」
「珈琲も多くの種類がありますね」
 豆によってだ。種類がある。そういうことだった。
「ですがそれぞれの珈琲を好むのと同じで」
「歌もまた」
「そうではないでしょうか」
 こう義正に話す真理だった。
「例えが低俗かも知れませんけれど」
「いえ、そうだと思います」
「それで正しいですか。食べ物や珈琲と同じだと」
「音楽はそういうものだと思います」
 彼はだ。音楽と食べ物を同じものだとして今はこうして話した。
「心の糧となるものですから」
「心の」
「食べるものは身体の糧になります」
 心と身体をだ。共に話すのだった。義正はその二つを同格、同一のものとして真理に話す。
「ですから。同じですから」
「そうですか。では」
「貴女の言われたことはその通りだと思います」
 それでだ。正しいというのである。
「多くの音楽を愛するのは多くの料理を愛するのと同じですね」
「そういうものなのですね」
「そう思います。ただ」
「ただ?」
「愛は別でしょう」
「愛はですか」
「はい、それはです」
 義正の言葉が強いものになった。そのうえでの言葉だった。
「愛は一つでなければなりません」
「一つですね」
「それは絶対にして一路でなければならないと思います」
 こうだ。彼は言うのである。
「愛とは即ち真実一路です」
「真実一路ですか」
「はい、それが愛だと思います」
 己のその考えを真理に話すのだった。そうしていくのであった。
「私はそう思うのですが」
「料理は音楽を数多く愛せても」
「女性への愛は唯一です」
 それはだ。一つしかないというのだ。
「その考えは間違っているでしょうか」
「いえ」
 義正のその言葉にだった。真理だは。
 首を小さく横に振ってからだ。こう答えた。
「その通りです」
「そう思われますか」
「はい」
 静かに微笑んでの返答だった。
「そうでなければ。愛ではないと思います」
「与謝野晶子ですね」
 彼もだ。この名前を出したのだった。
「あの人もまたそうですね」
「あの愛は素晴らしいものですね」
「理想です」
 その愛のだ。理想だというのだ。
「素晴らしい理想です。そして」
「そして?」
「現実です」
 それでもあるというのだ。理想であり現実であると。
 義正はさらに話していく。その理想と現実についてだ。
「私は完全な理想、完全な現実はないと思います」
「といいますとどれもですか」
「そうです。どちらも離れてはいません」
 彼の考えだった。離れてはいないというのだ。
「理想は現実になり現実が理想を生み出すのですから」
「ではどちらもですね」
「はい、人の中にあるものです」
「愛もまた」
 真理は義正のその話を聞きながら述べていく。彼女の言葉をだ。
 
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