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儚き想い、されど永遠の想い

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456部分:第三十五話 椿と水仙その七


第三十五話 椿と水仙その七

「自然の中の生ものだ」
「それもあることが」
「わかった」
 微笑みだ。義正は答えた。
「今になってな」
「今になってですか」
「最初はそれは遅いと思った」
 そのことがわかることがだ。しかしだった。義正はすぐにこうも言ったのだった。
「だが今は違う」
「適格な時期だったというのですね」
「そう思う。実はそうだったのだ」
 そうした考えに至っていた。今の義正はだ。 
 そうしてだった。静かに遠くを見てだった。
 佐藤に話していく。その話すことは。
「それを知り今のこの一年を過ごせているのだ」
「奥様と共にですね」
「それ以前に知っても使うこともできなかっただろう」
 その知ったことをだ。そうだというのだ。
「とてもな。だからよかったのだ」
「深いですね」
 ふとだ。佐藤は言った。
「それはとても」
「深いか」
「そう思います」
 佐藤もだ。温かい目になっていた。その目での言葉だった。
「人が。並の者ではわからない」
「そうしたものがあるか」
「何かを知ることは大事ですが」
「時期があるな」
「それはその人がそれだと決められない」
 では誰が決めるかというと。
「神が決められるのでしょうか」
「そうだろうな。おそらくな」
「人ではありませんか」
「このこともよくわかってきた」
 ここでまた言う義正だった。
「人は小さな存在だ」
「小さいからこそですね」
「運命やそうしたことは自分では決められない」
「それに従うことしかですか」
「だが変えることはできる」
 それはだというのだ。
「それ自体はだ」
「人はそれはできるのですね」
「辿る運命は変えられなくとも」
 真理の病のことだ。それに他ならない。
「だがそこに至る道、そして見るものはだ」
「変えられますか」
「そう思える様になってきた」
 深い目になり話す義正だった。
「大きく変わったな。私も」
「そうですね。旦那様はより」
「より、か」
「素晴らしい方になられました」
 世辞ではなくだ。心から言う佐藤だった。
「深いものを身に着けられましたね」
「人生においてか」
「はい、とても」
 そうだとだ。義正に話すのである。
「そして今度はです」
「水仙だな」
「それを御覧になられますね」
「水仙を見て。そうして」
「そうしてですね」
「水も見よう」
 水仙は水の中に咲く花だ。だからこその言葉だった。
 そしてだ。それに加えてだった。
 
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