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儚き想い、されど永遠の想い

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45部分:第四話 はじまりその九


第四話 はじまりその九

「他人への思いやりと共に」
「同時にだね」
「そうです。ですから」
「その強さはいいんだね」
「持っていなければです」
 佐藤の言葉が強いものになるのだった。
「駄目なのです」
「そうなんだね」
「強さは。何の為にあるのか」
 佐藤はさらに話す。
「決して暴力ではありません」
「暴力の為ではない」
「はい、暴力は何にもなりません」
 それは否定するのだった。全否定だった。
「それは他人を傷付け」
「その身体だけでなく心も」
「そしてやがては己を滅ぼします」
 それこそがだ。暴力だというのである。
「それはあってはならない力です」
「強さではないね」
「暴力は弱さです」
 強さとは対極にあるものだと。そう規定されていく。
「それは何にもならないものです」
「では。本当に強さは」
「成し遂げるものです」
 そうしたものだというのだ。
「清らかなものをです」
「そういうことなんだね」
「旦那様には是非です」
「そうした強さを持ってもらいたいんだね」
「それが私の願いですが」
「わかったよ。清らかなものをだね」
 いつも頷くのだった。彼のその言葉を受けてだ。
 そしてだ。義正はだ。深く考える目になって述べるのだった。
「ロミオとジュリエットではなくて」
「あの二人であって二人ではなくです」
「幸せにだね」
「旦那様が若しロミオなら」
 それならば。どうかとも話されるのだった。
「幸せを勝ち取るロミオになって下さい」
「幸せを」
「ロミオは幸せを勝ち取れませんでした」
 様々な経緯でだ。だが佐藤はそうなれなかった原因をだ。強さがなかったからだというのだ。
「あの時彼はです」
「死を選んでしまった」
「ジュリエットを失ったと思いそれに耐えられなかった」
「それも弱さなんだね」
「私は思うのです」
 ロミオに対しても。そして恋愛に対してもだ。
「想う相手が去ってしまっても」
「絶望に打ちひしがれてはいけない」
「そうです。その愛を心の中に留め」
 そうしてだというのだ。
「生き続けるべきなのです」
「そうならないといけない」
「はい、若しあの時ロミオが生きていれば」
 どうなったかというのだ。
「ジュリエットを手に入れられました」
「そうだね。ジュリエットは仮死でしかなかったから」
「やはり強さは必要なのです」
 踏まえての言葉だった。
「愛にはです」
「一途な強さだね」
「そうですね。一途ですね」
 真っ直ぐな。そうしたものだというのだ。
「そうでなければならないです」
「わかったよ。それじゃあ」
「はい、それでは」
「ロミオになっても僕は」
「死んではなりません」
「弱くては」
「そう思います」
 佐藤の言葉は強い。しかしだ。
 彼はよくここでだ。困った顔になって述べるのだった。
 
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