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儚き想い、されど永遠の想い

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396部分:第三十話 運命の一年その十六


第三十話 運命の一年その十六

「それができている者は僅かだ」
「そうですね。殆どの方がです」
 どうなのかとだ。母も話す。
「時をただ過ごしておられるだけです」
「そういうものだ。それは非常に難しい」
 今をだ。確かに生きることはだというのだ。
「できている者はまことに僅かだ」
「ですが今義正さんは」
 そのだ。彼はだというのだ。
「それができていますね」
「左様でしょうか」
「はい、できています」
 まただ。母は我が子に告げた。
「ですから頑張って下さい」
「このままですね」
「わし等が言うのはこのことだ」
 これもまただ。父としての言葉だった。
「その実りある時をだ。最後の最後までだ」
「過ごせというのですか」
「果たすのだ」
 つまりだ。やり遂げろというのだ。
「わかったな」
「そのつもりです」
 義正は再び話した。
「来年の春まで」
「桜まで、ですね」
「そう決めています」
 まさにそうだとだ。義正は話していく。今は茶を飲んでいない。
 傍にある茶菓子にもだ。手をつけずに話していくのだった。
「来年の春までは」
「その意気だ。まず決めてだ」
「その決めたものにです」
 両親としてだ。話した言葉だった。
「わかったな」
「是非にも」
 これが両親の話だった。それを受けてだ。
 義正はだ。ここでだった。茶を少し飲んだ。
 そうしてだ。抹茶の味を味わったうえで述べたのである。
「このお茶もです」
「飲んでいるか」
「そうされているのですね」
「抹茶だけではなくです」
「他の茶も飲んでいるか」
「そうしています」
 このこともだ。義正は両親に話す。
「様々な味も楽しんでいます」
「他のお茶もか」
「はい、紅茶も」
「そうか。お茶は身体にいい」
 父は目を細めさせて述べた。
「だからそれもだ」
「いいのですね」
「真理さんを最後まで護るのだ」
 その為にだった。茶もだ。
「わかったな」
「わかっています。何があっても」
 両親にも誓ってだった。彼は真理を最後の最後まで護りだ。共に過ごすことをあらためて決意したのだ。そのうえでだ。黄金に向かうのだった。


第三十話   完


               2011・10・23
 
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