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儚き想い、されど永遠の想い

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257部分:第十九話 喀血その九


第十九話 喀血その九

「心が清らかで」
「それはですね」
「最初からわかっていました」
「私もです」
「しかしそれだけではなく」
 それに加えてだった。
「御二人はです」
「非常に心豊かな方々ですね」
「大人。そうした言葉では言い表せないです」
 佐藤は義正と真理を、今は目の前にいない二人を見つつだ。それで話した。
「立派な方です」
「私が心配する様な方々ではありませんね」
「私もです。それでは」
「見守ることですね」
 真理の言葉をだ。そのまま言ったのだった。
「やはり」
「そうだと思います。それがです」
「正しいですね」
 婆やは今このことを言った。
「そうですね」
「そう思います。では」
「これからは」
「そうしていきましょう」
 こうだ。二人は夕暮れの中で話すのだった。
 屋敷の外は急に赤くなりそこから夜の帳を迎えようとしていた。黄昏の時だった。
 その黄昏から夜になりだ。再び太陽が戻って来た。
 心地よい朝だった。その朝にだ。
 義正は朝食を終え身だしなみを整えてからだ。真理に笑顔で挨拶をした。
「では今から」
「はい、今から」
「行って来ます」
 こうだ。出勤の挨拶をしたのだ。そうしてだ。
 義正は出勤し真理が家に残った。佐藤は彼と共に行く。
 そうして婆やと二人になるとだ。
 すぐにだ。婆やはこう彼女に言ってきた。
「それではですね」
「はい、今日は」
「まだあの本は読まれているでしょうか」
 こう真理に尋ねてきたのだった。
「それはどうでしょうか」
「小説のことですか」
「確か今読まれていたのは」
「小説も読んでいますが今は」
「今は?」
「詩を読んでいまして」
 今主に読んでいるのはだ。それだというのだ。
「そうしているのですが」
「詩をですか」
「藤村を」
 まずはその下の名前から話す真理だった。
「昔の詩集ですが」
「あの、お嬢様」 
 彼の、島崎藤村の名前を聞いてすぐにだった。 
 婆やは顔を顰めさせてだ。こんなことを真理に話した。
「その方ですが」
「何かあるのでしょうか」
「どうも。女性に対してです」
「ふしだらだというのですか」
「そうしたところがあるようです」
 実際にだ。彼は後に姪との恋愛沙汰が発覚している。それが騒動にもなっている。
「ですからあまり」
「読むのはですか」
「はい、お勧めできません」
 作者のだ。品性からの話だった。
「そう思います」
「そうですか」
「そうです。ですから」
 婆やは真理にさらに話していく。
 
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