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儚き想い、されど永遠の想い

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248部分:第十八話 相互訪問その十五


第十八話 相互訪問その十五

「お兄様、お久し振りです」
「そうだな。久し振りだな」
「そしてお義姉様ですね」
 真理はこう呼んでだった。そのうえで。
 頭を深く下げて。こう言うのだった。
「はじめまして」
「義正さんの妹さんでしたね」
「はい」
 その通りだとだ。義美もにこりと笑って答える。
「義美といいます」
「はじめまして」
 今度は真理が頭を下げた。
「真理といいます」
「お話には聞いていました」
 今度はこう言った義美だった。
「ですが」
「ですが?」
「思っていた以上です」
 にこりと笑っての言葉だった。
「お奇麗で落ち着いた方ですね」
「そんな、私は」
「お兄様に相応しい方です」
 真理にこうも言ったのだった。
「そしてお兄様も」
「僕もなんだね」
「はい、この方に相応しい方です」
 そうだというのだ。彼もまた。
「神様がそれぞれ」
「引き合わせてくれた」
「そうしてくれたと」
「そう思います」
 これが義美が二人に言うことだった。
「では。これから宜しく御願いします」
「こちらこそ」
 女同士での挨拶だった。それを見ながらだ。
 義正は笑顔でだ。真理にこんなことを話した。
「実はこの娘はです」
「義美さんは?」
「今でこそこうして落ち着いた雰囲気ですが」
「それは違ったのですか?」
「子供の頃はお転婆で」
 よくある。そうした話をするのだった。
「木に登ったり草原を駆け回ったり虫を捕まえたり」
「そうしたことをですか」
「いつもしていました。姿もです」
 今のそのおしとやかな。お嬢様そのものの姿もどうかというのだ。
「まるで男の子の様でした」
「そうだったのですか?」
「そうです。いや、袴を穿いていてもそれがズボンの様で」
「嫌ですわ、お兄様」
 義美は兄のそうした話にだ。顔を赤らめさせてだ。 
 そのうえでだ。こう兄に言った。
「その話はもう」
「ああ、駄目だったか」
「私も今は」
 違う。だからだというのだ。
「止めて下さい」
「わかったよ。それじゃあね」
「すいません、兄が下らないことを言って」
 真理にだ。打消しの話をするのだった。
「確かに子供の頃はそうでした」
「ですか」
「けれど今はこうして」
 務めて。そうした感じだった。
「やはり淑女でなければなりませんね」
「撫子ですね」
 真理も言った。
「そうですね」
「はい、我が国の女性はそうあるべきです」 
 義美は姿勢を正して真理に話した。
「お義姉様はおわかりなのですね」
「実際にできているかはどうかですが」
「いえ、そうあるべきですから」
「ですか」
「では。これからも」
「はい、これからも」
「御願いします」
「こちらからも」
 こうした話をしてだった。二人はお互いにはじめて顔を見合わせたのだった。これも大きな出会いになっていくのを二人は微かに感じていた。


第十八話   完


               2011・7・21
 
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