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儚き想い、されど永遠の想い

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220部分:第十六話 不穏なことその十二


第十六話 不穏なことその十二

「まことにな」
「そうですね。では私達は」
「願おう」
 それだけだというのだ。
「そしてだが」
「そして?」
「今度は上海に行く」
 今度は仕事の話だった。
「来てくれるな」
「では」
「義美もな」
 義正の妹のだ。彼女もだというのだ。
「連れて行こう」
「最近はどうもあの娘がいないと」
「仕事にならないか」
「頼りになります」
 そうした娘になっているというのだ。
「穏やかですがとてもよく気がついて」
「そうだな。あれは見事な娘になった」
「そうですね。本当に」
「後は」
 その立派になっただけでなくだ。さらにというのだ。
「あの娘にもだ」
「然るべき伴侶をですね」
「得たいものだな」
「ええ。あの娘にも」
 二人の願いは。末娘にもかけられていた。
 彼女についてはだ。こうであった。
「相応しい婿を見つけて欲しいな」
「そして幸せに」
「誰だろうか」
 父はその相手のことを期待半分、不安半分に考えていた。
「果たしてな」
「あの娘もまた」
「あれに相応しい相手を選ぶか」
「人を見る目は確かです」
 実は義美は兄弟達の中でそうしたことが最も秀でているのだ。兄達よりも出来物であると。親達も内心では認めている程なのだ。
 その彼女だからこそだと。こう話すのである。
「では。今度も」
「楽しみにしていればいいかと」
「ではそうするか」
「はい、その様に」
 妻は微笑み夫に応える。
「そうしましょう」
「是非共な」
「では。今は」
 妻は話が終わったと見て話を変えてきた。その話は。
「今宵はどうされますか」
「今夜か」
「何処かに行かれますか?何かご予定は」
「今夜はない」
 それはないとだ。誰かに会う約束も宴の話もないというのだ。
「静かなものだ」
「左様ですか」
「昨日料亭でだ」
 そこでだというのだ。
「大阪府の知事閣下とお話をしてだ」
「百貨店のことがですね」
「さらにいい話になった」
 微笑んでだ。このことを話すのだった。
「既に府庁ともだ」
「お話はできていますか」
「後はいい百貨店を建てるだけだ」
「計画通りにですね」
「今回は計画を先走りにさせた」
 知事と話をする前からだ。どうした百貨店にするか計画していたというのだ。性急といえば性急な、だがあえてそうしたというのである。
「だがそれでもだ」
「それがよくなりましたね」
「よかった。かえってな」
「百貨店の計画を知事閣下にお話されたのですね」
「すると興味を持って来られてだ」
 それでだというのだ。
 
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