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儚き想い、されど永遠の想い

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212部分:第十六話 不穏なことその四


第十六話 不穏なことその四

 それだとだ。主にも話すのだった。
「その宗教を信仰していますので」
「では共産主義は」
「少なくとも彼等とは主義主張が違いますね」
「そうだな。確かにな」
 義正もその言葉を聞いて頷く。
 そしてだ。こんなことも言うのであった。
「しかし。天理教の教会か」
「旦那様も御存知だったのでは?」
「前に話をしたことがあったか」
「そうだったと思いますが」
「済まない、忘れていた」
 そうだったとだ。佐藤に対して謝罪の言葉も述べた。
「そうしたこともだ」
「そうでしたか」
「天理教か。その宗教は」
「落ち着いた平和な宗教です」
「暴れたりする宗教ではないか」
「むしろその逆です」
 かつての基督教の様にだ。ああしたことはないというのだ。かつての基督教はそれこそだ。軍やその他の組織で多くの血を流させてきたのだ。
 佐藤もそのことを知っている。それで話すのだった。
「あの様なことはありません」
「そうか。平和か」
「その八条町の教会に時々通っていますので」
「私も行った記憶があるが」
「ではそれを思い出させる為にも」
「少し行ってみるか」
 こんな話もするのだった。義正にしてみても興味のある話だった。
 何はともあれ彼は幸せだった。そしてだ。
 その幸せは真理と共にいるからだ。屋敷に帰りだ。
 すぐにだ。真理の笑顔での出迎えを受けるのだった。
「御帰りなさいませ」
「はい、只今帰りました」
 笑顔で応える彼だった。
「留守の間何か」
「音楽を聴いていました」
 笑顔でだ。こう彼に話すのだった。
「蓄音機で」
「あれでなのですか」
「はい、それで聴いていました」
 そうしていたというのだ。
「モーツァルトの音楽を」
「あの作曲家のですか」
「三十五歳で死んだと聴いていますが」
「それでもその音楽は多いですね」
「はい、とても」
 没した年齢と比較してその音楽は多い。モーツァルトはかなりの多作家でもあった。何しろ楽譜が見えていてそれを書くだけだと言っていた程なのだ。
 そのモーツァルトをだ。真理は聴いていたというのだ。
「あのフィガロの結婚だけでなく」
「他の音楽もですね」
「素晴しいものですね」
 笑顔で話す真理だった。
「聴いていると心が」
「清らかにですね」
「なります。それに」
「それに?」
「その心が楽しくもなってきます」78
 聴いていてだ。そうもなるというのだ。
「ですから。今日は」
「それを聴かれてですか」
「あとお菓子を作っていました」
 それもしていたというのだ。
「西洋のお菓子を」
「お菓子もですか」
「クッキーをです」
 そのだ。クッキーをだというのだ。
「それを作っていました」
「作られたのですね。お菓子を」
「実は。昔から趣味でした」
 少し気恥ずかしそうにだ。真理は夫に話す。
 
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