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儚き想い、されど永遠の想い

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19部分:第二話 離れない想いその四


第二話 離れない想いその四

「将校さん達のお話だとね」
「それで船のお話を聞いてですか」
「海軍の船は実際に中までは見ていないけれど」
 それでもだというのである。彼もだ。
「けれど。それでもね」
「細部まで清掃が行き届いていた」
「いい店だね」
 そこまで見てだ。話すのだった。
「あのお店が流行るのは当然だね」
「あの店長さんはやり手なのですね」
「父さんだったね。あの人を店長に選んだのは」
「はい、そうです」
「成程ね。細かい部分まで見られる人だから店長さんにしたんだね」
 義正はそのことにだ。深いものを見出していた。
「人を見る目は。本当に大事だね」
「それはその通りですね。では旦那様」
「うん、僕もだね」
「はい、人を見る目を養って下さい」
「難しいことだろうけれど。それでもだね」
「まず第一はです」
 執事はすかさずだ。主にこう話したのだった。
「御相手を」
「相手。結婚だね」
「御見合いの話が間も無く来るかと」
 このことを話すのだった。
「ですから。よく御覧になられてです」
「結婚か」
 それを聞くとだ。義正の顔が微妙なものになった。
「それだね」
「考えておられますね」
「ううん、実はまだあまり」
「考えておられませんか」
「実感が湧かないね」
 こう述べるのであった。
「どうにもね」
「結婚はですか」
「どうしてもね。現実のものには」
「左様ですか」
 それを言われてだ。執事も微妙な顔になった。そうしてだ。
 彼もだ。ここで己のことを話したのだった。
「実は私にしてもです」」
「君もそれはだったね」
「はい、まだです」
 つまりだ。彼も独身だというのである。実際にそうなのだ。
「結婚は。それは」
「交際している相手は?」
「それはいます」
 こう主に述べた。
「幼い頃から。決められた相手ですが」
「許婚だね」
「そうなります。実際に」
 まさにその通りだと答える彼だった。
「その相手と。やがては」
「結婚するんだね」
「ですが。やはりです」
「君も実感はできないんだね」
「はい、残念ですが」
「実際に経験できないものを実感することは難しいからね」
 義正はだ。そのことから述べた。経験は何よりも勝る学問である。
「それは仕方ないね」
「申し訳ありません」
「謝る必要はないよ。けれど」
「けれど?」
「それも仕方ないね」
 こうも述べた彼であった。
「僕にしても。知らないから」
「どうしていいかわかりませんか」
「恋愛もまだなんだよ。一体どんなものか」
 知らないと。言葉となって出ていた。
 
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