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儚き想い、されど永遠の想い

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112部分:第十話 映画館の中でその二


第十話 映画館の中でその二

「ですから」
「だからですか」
「はい、だからこそです」
 駆け落ちをしたというのだ。その半世紀前にだ。
「そのことには今も後悔をしていません」
「では。誰が反対をしても」
「結局は本人達なのです」
 婆やのその声が微笑みになった。
「本人達のことなのです」
「そうなるんですね」
「そう思います」
 婆やの真理への言葉は変わらない。
「過激だとは思いますが」
「確かに。それは」
 半世紀前、明治の頃ならばだ。余計にであった。
 だが婆やは後悔していないというのだ。あくまでだ。
 そして自分の口でだ。真理にこうも言うのだった。
「それで家ですが」
「その実家ですね」
「金物屋は妹が継ぎました」
 そうなったというのである。
「そして妹が。その方を迎えられて」
「そうしてですか」
「今も大阪でお店をしています」
「妹さんはお元気なのですか?」
「駆け落ちから。十年程して」
 歳月がだ。それだけ経ってからだというのだ。
「そうして妹が中に入ってくれてです」
「実家のご両親とですね」
「仲直りできました」
 そうだと真理に話すのである。
「時と妹のお陰で」
「そうしてですか」
「私達は和解できました」
 そうなったというのである。
「非常によいことでした」
「そうだったのですね」
「そうした。しがらみと言いましょうか」
「家のことがですか」
「そうしたことはその当人達には絶対のことなのでしょうが」
「そこから離れて考えればですね」
「大したことではないのだと思います」
 自分のことを振り返ってだ。老婆は話すのである。
「そうしたものですから」
「そうですか。それでは」
「それでは?」
「私もです」
 真理もだ。意を決した顔で言うのだった。
「私もそういう時になればです」
「あの、お嬢様それは」
「駆け落ちですか?」
「それはおよし下さい」
 絶対にだとだ。婆やは真剣な顔で話した。
「本当にです。それはです」
「あっ、それは」
「御考えになっていませんね」
「そうしたことはです」
 内心戸惑いながらだ。真理は話した。実はある程度考えてはいたのだ。あくまで最後の手段としてだ。それを考えていたのは事実だった。
 しかしそれを話してだ。真理はだ。
 表情をあらためてだ。こう婆やに話した。
「しかしです」
「しかし?」
「決めた相手にはですね」
「はい、決めた相手にはですね」
「何があってもですね」
「時代は違います」
 婆やは今のだ。大正から話すのだった。
「そんな。家と家のしがらみはです」
「乗り越えるべきですか」
「若し対立している家同士があってもです」
 婆やもだ。強い声で話す。彼女自身の考えに他ならない。
 
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