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儚き想い、されど永遠の想い

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102部分:第九話 知られたものその八


第九話 知られたものその八

「御相手がいまして」
「許婚ですか」
「その方がおられるのですか」
「これまでお話していなくて申し訳ありません」 
 喜久子はこのことは素直に謝った。
「お話する機会が見当たらなくて」
「いえ、そのことはです」
「御気になさらずに」
 それはいいと答える二人だった。そうしたことにいちいち怒ったり咎めたり不機嫌に思う程だ。二人は器の小さい娘達ではないのだ。
 むしろ優しい笑顔でだ。彼女の話を聞くのだった。
「それでなのですが」
「許婚の方とですか」
「将来はですね」
「結ばれるのですね」
「そしてです」
 さらにだと話す喜久子だった。彼女も今は笑顔になっている。
 そしてだ。こう二人に話すのだった。
「もう挙式の日も決まっていまして」
「早いですね」
「そのこともなのですか」
「はい、決まりました」
 それもだ。既にだというのだ。
「決まりました」
「そうですか。それなのですが」
「どういったものになるでしょうか」
 二人はここでだ。その挙式のあり方について喜久子に尋ねた。
 それが一体どういったものかだ。そこに関心を向けたのである。
「やはり神前で、でしょうか」
「式を挙げられるのでしょうか」
「日本のもので」
「そうされるのでしょうか」
 まずはそれではないかと考えられた。そしてだ。
 次にはだ。この時代になって入っただ。それについても言及された。
「それとも。あの」
「欧州のあれでしょうか」
「純白のドレスに身を包んで」
「基督教の教会での式になるでしょうか」
「どちらもです」
 喜久子はだ。幸せそのものの笑顔で答えた。
「どちらもすることになりました」
「神前も教会もですか」
「どちらもなのですか」
「はい、両方でなのです」
 喜久子はその笑顔のまま二人に話していく。
「それが決まりました」
「凄いですね。両方とは」
「それで行うとは」
「ですがそれは」
「かなり手間取ったものになるのでは?」
 二人は憧れからだ。現実に戻った。むしろ現実に憧れていたがだ。現実のもう一つの一面にその考えを移したと言うべきであろうか。
「神前から教会に移るのもその逆も」
「場所が離れているでしょうし」
「服も着替えないといけませんし」
「それは」
「そのことはです」
「それですが」
 そのことについてもだった。喜久子は笑顔で二人に話した。
「実は神前でも教会でもないのです」
「式を行い場所はですか」
「違うのですか」
「はい、式場で行います」
 そこでだというのだ。
「結婚式場において」
「そういえば最近そうしたものもできていますね」
「ですね。式を挙げる場所も」
 できてきていたのだ。明治になって大正になりだ。結婚式というものもだ。そうした場所で挙げるものになってきていたのである。
 
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