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死後の恋

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第三章

「そして死んでからもだ」
「それからも」
「お祖母ちゃんと一緒にいる」
「そうするのね」
「そうなる」
 絶対にというのだ。
「ずっと一緒にいる、わし等は」
「そこまでお母さんのことが好きなんて」
「今もそうで」
「天に召されてからも」
「それからも」
「六十年以上一緒にいたが」
 結婚してだ、金婚式を終えても二人は共にいてダイアモンド婚式も過ごすことが出来たのだ。
「しかしな」
「それで終わりじゃない」
「今も一緒で」
「天国でも」
「一緒にいたい、だからわしはな」
 その今もというのだ。
「最高に幸せだ」
「本当みたいだね」
「今もお母さんと一緒にいて」
「それじゃあね」
「私達にも言うことはないわ」
「このまま二人でね」
「幸せにね」
「そうしてくれ。そしてわしが死んだらな」
 その時のこともだ、彼は子供や孫達に話した。
「イカリナの隣にな」
「わかったよ」
「そのこともね」
「だからこのまま」
「二人で幸せにね」
 家族としてだ、彼等も頷いた。こうしてシェラレフコスはイカリナと共に暮らし続けた、そして数年後だった。
 彼は死の床についた、やはり老衰によってだ。だがこの時に周りにいる子供や孫達、そして曾孫ややしゃ孫達にまで言った。
「では埋葬はな」
「うん、わかってるよ」
「お祖母ちゃんと一緒にね」
「埋葬するから」
「安心してね」
「そうさせてもらうよ」
「それだけだ、ではな」
 ベッドからすぐ傍のソファーに座っているイカリナに目をやって彼女に対して優しい声で言った。
「天国でもな」
 最後にこう言ってだった、シェラレフコフは世を去った。その顔は至って穏やかなものだった。
 二人はシェラレフコフの遺言通り並んで埋葬された、その二つ並んでいる墓標を見て残された者達は二人が天国でも並んで笑顔でいられることを心から願い信じた。生前の笑顔を思い出しながら。


死後の恋   完


                 2017・8・20 
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