華やかと思ったら
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第三章
「止めなさい、喧嘩なんて」
「それにここ何処だって思ってるのよ」
「人様の迷惑になるでしょ」
「そんなことは止めなさい」
「何だこの姉ちゃん達」
「俺達を止めるってか?」
「おい、嘘だろ」
不良達は笑ってだ、二人を見て言った。
「そんな細い姉ちゃん達がな」
「出来る訳ないだろ」
「俺達を誰だって思ってるんだ」
「亀田高校だぞ」
県でも知られた不良達だというのだ、彼等にしてみれば誇りだ。
「飽きる位喧嘩してるんだぞ」
「その俺達に勝てるってか?」
「止められるってのか」
「そんなこと出来る筈ないだろ」
こう笑って言う、しかし。
早紀も友希も一歩も引かない、それでだ。
不良達を鋭い目で睨み付けている、太志はその二人の目を見て恐怖を感じてビクッ、となった。そして。
一緒に見ていた友人達にだ、こう言った。
「おい、あの目」
「ああ、何かな」
「凄い目だな」
「ガン飛ばしてるみたいな」
「いや、そんなものじゃないだろ」
それこそというのだ。
「あれは」
「あの目は」
「鬼みたいな」
「凄い目だぞ」
「急に目が変わったぞ」
「何なんだ?」
太志達は皆二人に異様なものを感じた、ここではじめて。
そしてだ、ここでだった。
不良達の一人がだ、不意にだった。
二人をまじまじと見てだ、仲間達喧嘩の相手だった面々にも囁いた。
「おい、この人達ひょっとして」
「何だよ」
「どうかしたのかよ」
「桑田中、佐久間高の二人じゃないのか?」
「えっ、あの鬼女姉妹か?」
「従姉妹同士だったっていう」
「合わせて千回の喧嘩に買って」
不良達はここで剣呑な顔になって話した。
「姉の方は十人の男相手に無傷で勝った」
「妹の方は空手六段のヤクザ屋さんを叩きのめした」
「その人達か?」
「まさかあの伝説の」
「卒業したよな、もう」
「そこからどうなったか知らなかったけれどな」
「何かな」
話を出した者が言う。
「俺その人達の写真見たけれどな」
「この人達か?」
「そうなのか?」
「ああ、そっくりなんだよ」
それこそというのだ。
「あの時は随分派手な恰好だったけれどな」
「面影はあるってか」
「そのままだっていうのか」
「じゃあ今はか」
「ここにいるっていうのか」
「先輩達も何度も挑んでもな」
亀田高校のOB達もというのだ、言うまでもなく彼等も札付きの不良揃いだった。
「叩きのめされるばかりでな」
「一度も勝てなかったんだよな」
「しかも誰も指一本触れられなかった」
「女だてらに滅茶苦茶強かった」
「だから鬼女って言われてたんだよな」
「その人達じゃないのか」
伝説の不良達ではないかというのだ。
「まさかな」
「じゃあ俺達じゃか」
「とてもか」
「勝負にならないか」
「そんな人達だと」
「ああ、とてもだよ」
それこそというのだ。
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