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ガードマン

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第一章

                      ガードマン
 物騒な世界になっていた。とにかく治安が悪化し夜になると皆不安で銃か刃物でもないと家の中でも安心できないようになっていた。
 窃盗や強盗が相次ぎ殺人事件も頻発した。それを受けてだった。
 あるメーカーがガードマン用のロボットを開発した。そしてそれを大々的に宣伝した。
「これさえあれば強盗も怖くありません!」
「どんな強盗が何人来ても大丈夫です!」
「もう夜に怯える必要はありません」
「一家に一体!」
「これで平和は戻ります!」
 こうした謳い文句が出てロボットは宣伝された。その宣伝はテレビだけでなくネットでも氾濫する様になった。
 そしてその宣伝を見て実際に強盗に怯えていた市民達もこぞって言うのだった。
「これは有り難いな」
「ガードマン雇うのもお金がかかるし」
「それに殺される場合もあるしね」
 そうなっては保障等の問題が生じて色々と厄介なことになる。
「けれどロボットなら高くても壊れるだけ」
「また買いなおせばいいし」
「気分的にも楽だよ」
「それならね」
 誰もがこう言ってその機械のガードマン達を歓迎した。ガードマン達は確かにコストが高かったが車を買うのと同じ感覚で買われていった。
 ガードマンの性能は優秀で暴漢がどれだけ来ても撃退し叩きのめした。平和な世界が戻ったと誰もが思った。
「いや、よかったよかった」
「もう夜が来ることに怯えなくていいんだ」
「強盗の心配はなくなった」
「枕を高くして寝れるよ」
 こう言って皆喜んだ。本当に皆平和が戻ったと思った。
 だが一人の工学者、ロボット工学の専門家であるジミー=クリストファー博士はある日友人にこんなことを言った。
「確かにあのロボットは素晴らしいけれど」
「何かあるのかい?」
「うん、ロボットには絶対に欠点があるんだよ」
 こう友人に言うのだった。
「どんな素晴らしいロボットにもね」
「欠点っていうと一体」
「まずロボットは人間が作っているんだよ」
 クリストファーが言うのはここからだった。
「そう、l完全な存在でない人間がね」
「それでだというんだね」
「その完全でない人間が作ったロボットが完全なのかどうか」
「それはちょっとね」
 友人もクリストファーの話を聞いて述べた。
「ないね」
「そうだろ?完璧なものなんてこの世にはないんだよ」
 人間の世にはだというのだ。
「だからあのロボットも」
「完璧でない」
「そう、何かしらの欠点があるよ」
「故障は殆どないしあれだけ強力でもなんだ」
「それでも人間が作ったものだよ」
 クリストファーは完璧でない人間が作ったものがどうして完璧なのかと考えている。それ故にだったのだ。 
 だがガードマン達は何の問題もなく活躍を続けていた。まさに一家に一体という感じであり市民達を護っていた。
 皆彼等を信頼していた。企業の方もご満悦だった。
「よく売れるよ」
「しかも市民の平和を護ってくれるんだ」
「我々は主語天使を売っている」
「つまりいいことをしている」
「こんないいビジネスはない」
 善行を行っているということはそれだけで心を満足にさせる、少なくとも悪事を行うよりはずっと心にいい。
 それで収益をあげているのなら尚更だ、彼等はこのうえなく上機嫌だった。
「何度もチェックして故障が起こりにくいように製造、開発したしね」
「まさに完全のロボットだ」
「あれさえあれば市民の安全は護られる」
「いいことだ」
 こう言って彼等は喜んでいた。しかし彼等もこのことに油断していた。 
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