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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第七章 C.D.の計略
  消える魔化魍


鴻上コーポレーションから生まれ、オーズたちを襲撃した、新たに仮面ライダーを名乗る存在。


三枚のコアメダルから誕生した「仮面ライダートーチ」
それを撃破してから、二週間後。

あの時は戦い間近ということもあって無理やり回復した映司だが、それも終わりじっくりと体を休養させてからの「EARTH」であった。






「なにぃ!?三枚のコアメダルによる、新たな仮面ライダーの出現だとぅ!?」

「いや、あの時言ったじゃないですか」

「ん・・・あぁ、そうだったな。おかしいな・・・スッごく忘れてた」

「どういうことなの・・・・・」


「EARTH」局長室にて、そんな会話のやり取りがしてきた。
一応の連絡は入れておいたものの、蒔風に直接言ったほうがいいのではないか、ということでこうして顔を出しに来た映司。

それに対する蒔風の喰いつきの悪さにもう一度内容を簡潔に告げると、今度は驚いて反応してきたのだ。
最終的に解決できたのでどうこうと言及するつもりもなかったが、ここまで気の抜けたことを言われるとこちらも呆れてしまう。



「何があったんですか?」

「二週間前か・・・・確か、オルタとかいう若者の動向調査だな、まずは」


オルタ
津上のもとに現れた、闇の力・オーヴァーロードの生み出した「新たなるアギト」

彼は今、諸国漫遊して人間というものを見て学んでいるところだというのだ。
そして「EARTH」はその行く先を、細かくとはいわずともある程度は把握しているように努めている。


何せ、一度は人類に牙をむいた存在からの使者だ。
信じてやりたいものの、警戒しないというわけにもいかないのが、つらいところである。



「んで、後は睦月がラウズカードなくした」

「えぇ!?」


ラウズカード
ブレイドたちの戦った怪人・不死生物アンデッドを撃破、封印するためのカードだ。

それらにアンデッドたちを封印することで活動を停止させ、さらにそのカードのアンデッドの力を行使するためのアイテム。
そのうちの数枚を、睦月は紛失したというのである。


「それヤバくないか?」

「ヤバい。しかもこれ、紛失というより盗難の可能性もある」

「いったい・・・」

「あと、ファンガイアの殺人事件だな」

「人を襲ってるんですか?」

「いや。ファンガイアによる、じゃなくてファンガイアの、だ。被害者はファンガイア族ばかり」



ここ数週間、断続的にファンガイア族の人物が殺されている。
人間を襲おうとして逆に何者かに襲われた者もいれば、一般人として暮らしていた罪なきファンガイアも犠牲になっている。


「今のところ犠牲者は前者のほうが多い。だが見過ごすわけにはいかないしな」

「そうですか・・・・確かにそれだけのことがあれば、俺のほうには顔を出せないかもしれませんね・・・・」

「いや、それもそうかもしれないんだけど、さ」



映司と会話しているうちに、蒔風が額に手を当てて椅子にもたれかかる。

熱はない。身体も健康だ。
しかし、どうにも何か体調がおかしくなる時がある。



「悪い、映司。今日はこれくらいにしとく」

「あ、はい。顔色悪いですよ?大丈夫です?」

「ん・・・・ちょっと休養するわ・・・・身体ダルイ・・・・」


そういって局長室を出て、自室へと帰っていってしまう蒔風。


何かが起こっている。
そんな気がする。



自分のは、ただの発端に過ぎないのかもしれない。


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この世界には、悪意が満ちている。
悪意とは、人の持つ敵意だけではない。


妬みや怒り、悲しみや恨みといった、いわば「黒い感情」といったものも含まれる。
そして、それはこの世界に人間が存在する以上は決して消し去ることのできないものだ。



そしてそれらを吸い上げ、誕生し、人を食らい成長する、そんな化け物たちがこの世界には存在する。

魔化魍




一時期、意図的に繁殖させられていた魔化魍だったが、それを促していた男女、通称「洋館の男・女」たち。
彼らの姿はある時期を境にぱったりと鳴りを潜め、今ではごく自然に(というのもおかしな話だが)発生する魔化魍のみとなっていた。



そうして、今日も魔化魍を滅するべく、鬼・響鬼は山々を駆け巡る。




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「京介!!どんどん叩き込まないと、音撃は一発だけじゃ意味ないぞォ!!」

「って言ったって!!こいつ揺れるから中々・・・うわっ!?」

「っとぉ!!危ないな。だが今のはいいバランスだ。その調子で重心をしっかりどっしり!!そうすりゃいくら打ったってよろけねーから!!」

「あぁもう・・・相変わらず実戦形式すぎるよあの人は!!!」

ドドドドン!!と、奥深い山の中から、二人の男との声がしていた。
あまりにも深く、そして何より立ち入り規制がされているため、この声を聴く人間はいない。


とはいえ、人がいても聞こえたかどうか。
今この場を支配している音といえば、大地を駆ける重量級の巨大魔化魍・オトロシの地鳴りと雄叫びだからだ。


この小山ほどの大きさもある魔化魍に音撃を叩き込むのは至難の業。
本来ならば、全身に同時に音撃を送り込める「菅」の武器を持つ威吹鬼などの鬼が担当するところなのだが、これも修行と言って響鬼が対処することになった次第だ。


現在、オトロシの上でその振動にまともに跨っていられない変身した京介がおり、並走する道路をバイクで追いかける生身のヒビキ、という構図だ。


これまで長くヒビキのもとで鬼の修業をこなし、そして無事に鬼と認められ「強鬼」というコードネームももらった京介だが、それでもまだまだ新米の鬼。
本人の強がりな性格もあってヒビキからは早く卒業したがるが、実際には未だこの通りである。


「くそォ、あの人俺にできないと思ってんなぁ・・・・これでも、夏の大量派生した河童は俺のほうがスコアは上なんだ!!やって見せる!!」

イヨォ、ヨォーーー!!!

「ハッ!!!」

オトロシの背にまだがる強鬼。
バランスをとるのにいっぱいいっぱいで、音撃を叩き込むこともままならなかったものの、今度こそ音撃鼓・火炎鼓をセットすることができた。

そして音撃棒・猛火を取出し、次々に音撃を叩き込んでいく。


「音撃打・猛火怒涛の型!!!」

一撃一撃を強く、そしてテンポ良く刻んでいく音撃。
それにより一撃ごとにより奥に、より奥にと音撃は浸透し、ついにオトロシの全身へと響いた。

ズズゥ・・・と勢いが死んでいき、そして完全に止まったところで、大量の木の葉と土くれとなってオトロシは木端微塵に吹き飛んでいった。



「った!!ふぅ・・・!!」

スタッ、とそこで飛び降り、道路に難なく着地する強鬼。
首だけ変身を解き、ヒビキから変えの私服を手渡された。


「どうですか、ヒビキさん!!」

「んー、まだちょっと危ういかな。でも、一人であれを倒せたなら十分じゃない?」

「っしゃ!!」


ゴソゴソと着替えながら、ガッツポーズをとる京介。
と、そこでふと気が付いた。

ヒビキのバイク・凱火に積んである、着替えの量がいつもより多い。



「あの・・・それは?」

「ん?ああ、このまま次の魔化魍も行くから!!」

「えぇ!?」

響鬼たち鬼のライダーの欠点の一つ。
それは、変身するたびに身に着けていた衣服が吹き飛んでしまうことである。

ある者は炎で焼けてしまい、ある者は雷に切り裂かれ、ある者は疾風で吹き飛ぶ。

結果、もしうっかり全身変身解除なんてことをしてしまうと、全裸で外に出ていることになってしまうのだ。
基本的に魔化魍が出現するのはこうした人里離れた山の中だったりすることが多いので、大勢にみられることはないがそれでも気になるものは気になる。

故に、鬼に変身できるようになった者は、次に首から上だけの変身解除を会得するのだ。
そして鬼のままでいるわけにもいかないので、変えの服を持ち込むのも当然のことである。


そしてヒビキの言う通り、後ろに積んである多くの私服は、それだけこの先で変身回数が多いということにほかならず


「よっし!!今日はどんどん行こう!!早くしないと、被害が出ちまうかもだしな!!」

「げぇえ・・・この人ホントスパルタだ・・・・」


げっそりしながら、それでもヒビキの後ろに乗る京介。
そして、次の任務後へと急行するのだ。

鬼の修業は、なってからだって半端ではないのだ。



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「う~ん?どういうことだぁ?」

「ヒビキさーん!!こっちにもいませんよー!!」

「おーう!!わかったー!!」


オトロシ撃破からすでに八時間が経過していた。
日は落ち掛け、あと30分もすれば山の向こうのうっすらとした日の光も消え、あたりは闇に包まれるだろう。

場所は、先ほどの土地から遠く離れてはいるが、山奥であることは変わらない。
ただ一つ特筆すべき点があるとすれば、ここはトゥスクル周辺だということだろう。


魔化魍は「悪意」を吸って自然発現する場合もある妖魔だ。
つまり、人が存在すればその地方に現れることは珍しくなく、地脈などの流れに乗って一点に集まると具現化する。

なので、鬼たちの組織「猛士」も全国に支部を持っており、各エリアに十数名の鬼が在籍している。


「あいつはできるようになると調子に乗って失敗する奴だから」と、鬼になった京介を追い立てるように魔化魍にぶつけるヒビキは、関東支部範囲内の任務を次々に受けていた。
出来るだけタイプの違う魔化魍を選び、京介にぶつけることで経験を積ませようという算段だろう。

しかし、最初のオトロシを撃破してから数時間かけてバイクで向かった先の半島の海岸では魔化魍を発見することはできず、そのまま今度は内陸へと向かい廃村と湖を調べたが、そこでも魔化魍は見つからなかった。
そしてさらに奥地へと入り二人はトゥスクル入りをしたわけだが、そこでも魔化魍は見つからなかった。


「どういうことだろ。な?」

「俺に聞かれても」

「いやぁ、俺は倒す専門だからさ。そういうの詳しいだろ?」

「ヒビキさんはもっと勉強してください。っていうか俺もかじった程度しか知らないですよ」


とはいえ、このままここで言葉を交わしているだけではキリがない。
一応は明かりとなる道具もあり、また野営道具も簡易だがもってきている。だが、この山の中では星の光もさえぎられるので真っ暗だ。あまり長居はしたくない。


「う~ん、今回は帰るか。京介、ここまだ電波通じる?支部のほうに連絡と、あと調査班の派遣依頼ね」

「あー、ギリ大丈夫です。りょーかいしました」

そうして、この場を後にする二人。
その二人を、闇夜の中から見つめる眼光が一対――――――



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「ふぅ、どうにか日を跨ぐ前に宿につけたな」

「何言ってんですか。もう二分もしないで12時回るじゃないですか。あぁ・・・早く水浴びだけでもしたい」

「男子なんだからそれくらい我慢しろぉ。そういうとこまだ都会っ子なのな」

トゥスクル国内のある村。
宮殿の城下町ではなく普通の農村だが、貧しいというよりも長閑というイメージのほうが強い。

ここトゥスクルから広がる、元をハクオロのいた世界とする土地は、近代化することもなく、しかし発展しないわけでもなく、その特色を色濃く残した状態で進歩を続けている地域だ。
よって電気などの供給もなく、バイクで来ることは可能だが帰りの燃料などは補充できない(とはいえ所謂鎖国状態ではないため、宮殿や商人に事前に頼めば手に入る)


「今夜はここに泊まって、明日くる調査団の人を待つとしますか」

「はぁ・・・身体洗いたい・・・」

「いつまで言ってんだ。ほら寝た寝た。明日も早いぞ~」

そういって布団に潜るヒビキ。
ハァ、と溜息をついて、続いて布団にもぐる京介。

(食ったのは携帯食料だけ。水浴びもなしか。あ~、俺まだ日和ってんのかなぁ)



夜は更に更ける。



夜には気を付けなければならない。
それは、人に非ざるモノの刻だから。



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こんなところにもいたか。

こんなものが、いまだに出でたる世とは。



某の時代(とき)と変わらぬ・・・・
否。彼の時よりより醜悪、より悪辣なる妖魔。



人の世は、ここまで穢れたか。
ならば、某は――――


「悪を断つ。断絶する事こそ、某の使命也」





仮面ライダー響鬼
~謳嘆の鬼の涙~









to be continued
 
 

 
後書き

ほんの少しの日常編と、即座に始まる響鬼編。

地味~に魔化魍の説明はオリジナル解釈入ってます。
あれ、あくまでも発生源不明ですからね。


ちなみに言い忘れていたこと。

オーズ編のトーチのイメージCV:福山潤でした。
ルル○シュですよ!ル○ーシュ!まあ作者はあのアニメ見てないんですけど。

今回の鬼はどんな感じの声がいいかなぁ?
渋い系ですからね。渡哲也さんとか?


蒔風
「怖すぎるだろ!?」

じゃああれだ。
高橋秀樹さん

ショウ
「桃太郎侍かよ」

あ、それあながちはずれじゃないよ
ちょっとだけ正解。


てなわけでどぞ


京介
「次回。俺ゼクロスじゃねぇよ!」

次回予告になってねぇよ!?



では、また次回 
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