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KAMITO -少年篇-

作者:redo
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サバイバル演習:出発編

《木ノ葉丸》に影分身を教えてから翌日。

時間は午前9時。大樹家の樹洞内で眠っていたカミトが目覚め、起き上がった。

「ふぁ〜」

あくびの後、眼を擦り、川で顔を洗い、朝食を済ませる。今日はアカデミーで卒業生のための説明会が開かれる日。

開始時間は午前10時。朝の支度で15分ほど経ったが、アカデミーまでは30分もあれば充分。

鎖帷子を着て、青いロングコートの半袖に両腕を通す。籠手と《千切斬(ちぎりざん)》を装備し、アカデミーに向かう。


◇◇◇


アカデミーの教室に辿り着いた時は約10人ほどの新人下忍が集まっており、後に続いて数人ずつ教室に入ってくる。徐々に人数が増えていき、班分けの発表を待ち続けていた。

そんな中、カミトは《彼》の近くの席に腰を降ろした。

「よ、久しぶり」

「………」

カミトにとって初めての友達__《うちはサスケ》。

しかし、カミトが挨拶をしても返事をせず沈黙したまま。

(……変わったな)

昔はすごく仲がよかったが、《例の事件》以来サスケは変わってしまい、まともな会話さえできなくなった。その時は酷く落ち込んだが、お互い下忍になったことを機に友情を取り戻せるかもしれないと少なからず期待していた。

その一方、ガヤガヤと騒がしい教室に集められ新人下忍たちが(あざけ)り言葉を放つ。

「おい、見ろよ。カミトだぜ」

「あいつ落ちたんじゃねぇのかよ」

「ちょっと最悪なんだけど」

「同じ班だけは勘弁ね」

「絶対足手まといよ」

教室中の新人下忍たちが放つ痛い言葉がはっきり耳に届いていながらもカミトは反論せず、ただジッと耐えた。

いつからだっただろうか。カミトがアカデミーで孤立するようになったのは。

以前、アカデミーに通う生徒の親が、我が子に告げ口をしているのを聞いた。

《あの子に関わってはいけない》

それが告げられた言葉。

ただ1人、忍術の出来が悪い生徒。生徒からも教師からも見放される始末。名目上は落ちこぼれという理由で貶されていたが、実際は《九尾の人注力》だったからだ。そんな人間に関われば、何をされるかわかったものではない。

そんな噂が囁かされ、皆から距離を置かれるのも当然の成り行き。

教室中がカミトの悪口で賑わう中、カミトに近づいてくる下忍が1人いた。

「……あの……カミト君……その……」

「ん?」

消え入りそうな声に即座に反応し、振り向いた。すると、刈り込んだ青紫色のショートヘアをした幼気(いたいけ)のある少女が眼に映った。

「キミは確か……《日向(ひゅうが)ヒナタ》」

「覚えててくれたんだ」

《日向ヒナタ》。

アカデミーで同じクラスに所属していた女の子。何度か話しかけられたことはあるが、特に親しかったわけでもない。友達というほどの関係でもないが、他の生徒たちと違って何かとカミトを気にかけてくれる。

緊張しているのか、ヒナタはずっと顔を赤らめている。

「……あの……イルカ先生から聞いたよ。……卒業おめでとう」

「あ……ああ」

正直、同級生に祝福されるとは思ってもみなかった。

「ありがとう」

正直、他人から話しかけられることが滅多にないカミトにとって、ヒナタの祝福は素直に喜べた。

「うん。……あの……その……えっと……」

カミトが頬笑みを見た途端、ヒナタは俯いて口調がガタガタと強張ってしまう。

その時。

「ちょっと、どいてくれる」

「ん?」

突如、ヒナタを押し退けやってきた声の主に眼を向ける。

「ワタシ、アナタの向かい席に座りたいんだけど!」

厳しい一言を掛けてきたのは、ピンク色の長髪、淡い緑色の瞳を持つ少女__《春野サクラ》。

向かい席と聞いた時点で彼女の目当てがわかった。

「はいはい、今どくよ」

文句も反論もせず、皮肉な口調でカミトはすぐさま席を外し、サクラを奥に通した。

「サスケく〜ん!おはよう!」

満足そうにサスケの隣へ座ったサクラは元気よく挨拶するが、当然サスケはしかとする。それでもサクラは陽気なまま。サスケの何事にも動じないという態度が女子たちを惹きつけるのは昔からのこと。

(相変わらずだな。……サスケ、お前は毎日こんなんで苦労しないのか?)

耳の届くことのない心の声を響かせながらも、サスケを凝視する。

正直、カミトにとってサクラは苦手なタイプ__と言うより天敵のような存在だった。

彼女はくノ一の中でも優秀な成績を収めており、学力で言えばカミトと互角。しかし、他の生徒たちと同じくカミトを《アカデミー最大の問題児》という視点で捉えており、やたらとカミトに厳しかった。学校という教育場に於いて、優等生と問題児の関係は特別と言える。

いささか不安なカミトの脳裏に恐怖が通り過ぎた瞬間、教室の扉が開いた。

「よし!みんな注目だ!」

ガラガラと音を立て、イルカが緊張の面持ちで教室に入ってきた。一声で騒がしかった教室が一気に静まり、立っていた人たちも席についた。

「今日からオマエたちはめでたく下忍になったが、まだまだ新米の過ぎない。本当に大変なのはこれからだ」

イルカはそう切り出すと、手に持っていたボードを見ながら今後のスケジュールについて説明し始めた。

「これからオマエたちは3人1組の班を作り、各班ごとに1人の上忍が先生として付き、指導することになっている」

(3人1組か。……足手まといが増えるだけだな)

(絶対!!サスケ君と同じ班になるわよ!!)

(果たして誰と一緒になるのか……)

サスケ、サクラ、カミトは内心でそれぞれの思惑を呟いた。

「始めに言っておくが、班編成は力のバランスが均等になるようこっちで決めたからな」

3人の願いは、イルカの言葉に虚しく打ち砕かれた。

「えぇぇ~~~!」

教室中に新人下忍たちの落胆の声が響き渡るが、イルカは気に留めず口元を動かし続ける。

「では、まず1班から順に発表していくぞ」

説明通り1班、2班、3班といった具合に、徐々に発表されていく。


◇◇◇


6班までの発表が終わり、次の班が発表されようとしていた。

「では次、7班。千手カミト、春野サクラ、うちはサスケ」

「「「っ!?」」」

その発表はあまりに衝撃的だった。

(嬉しいような……悲しいような……)

サスケが一緒なのは構わないが、サクラまで一緒となると少なからず気を落としそうだった。

「先生!なんでワタシとサスケ君がよりにもよってカミトと一緒なんですか!?納得できません!」

サスケと一緒の班になれたことに、サクラは間違いなく喜んでいる。だが劣等生のカミトが一緒であることに関しては納得できず、イルカに食って掛かるように抗議した。

(一緒の班になったからってそこまで言うか?)

サクラのストレートな表現に、カミトは心を踏み潰されそうな思いだった。

「あのなぁ、サスケは27番中トップの成績で卒業、サクラはくノ一クラスのトップ、カミトは劣等生。つまり、班の力を均等にするとこうなるんだよ」

「そ……そんなぁ……」

サクラはこの日以上に、自分が優秀であることが疎ましく思える日はなかった。

「せいぜい足引っ張ってくれるなよ」

「勘弁してくれよ」

これから一緒に任務をこなしていかなければならないメンバーたちからの嫌われように、心を折られそうだった。


◇◇◇


イルカの説明と班分けが終了。午後に入ると、次々に上忍の先生たちが教室に入り、受け持ちの班を連れて教室を出て行った。

しかし。

「「「………」」」

第7班の担当上忍は未だに来る気配がなく、他の班が全員出ていった後の教室は、恐ろしくほど静寂になった。サスケは席に座ったままジッと固まり、カミトは読書で満足そうに暇を潰していた。

「………あぁぁぁぁぁ!!もうっ!!なんでこんなに遅いのよ!!」

とうとう我慢の限界に達したサクラは、爆発したように声を上げた。

「サクラ、落ち着け。イライラするのはわかるが、騒いでもしょうがないだろ」

「だってもう3時間も待ってんのよ!いくらなんでも遅すぎでしょ!」

怒りを振りまくサクラをなだめようとするカミトの行為を振り切り、更に荒ぶる。

「だいたい上忍のくせに時間を守らないなんて最低よ!忍を舐めてんの!?超しゃーんなろーだわ!」

興奮するあまり、《内なるサクラ》が表に出てきてしまっている。

「ごもっともだが、きっと先生にも遅れて来る事情があるんだよ」

「事情って何よ!?」

「それはわからないけど……」

段々と説得力が薄れてきた感じだった。

「いいわね、カミトは楽観的で。こっちはアナタと違って貴重な時間を大切に生きてんの」

「……いや、俺だって貴重な時間を大切に生きてるから」

サクラの一言にまたもや心が踏み潰された。どんよりと落ち込み、俯いてしまった。

「サクラ……」

あまりに怒りまくるサクラに、とうとうサスケが口を動かした。

「そうよねサスケ君。サスケ君からも言ってやって」

「オマエ……ウザい」

「っ!?」

サスケの冷たい一言に、サクラは硬直してしまった。普通、騒がしくすれば誰でも鬱陶(うっとう)しく感じるのは当然だ。

(……嘘……今ワタシ……サスケ君にウザいって……嫌われた……!)

サスケの一言をうまく受け止められないサクラはショックのあまり、落ち込んでしまった。

その直後、教室の扉が開かれた。

「いやぁ〜悪いねキミたち、実はここに来る途中で子供が迷子になってて……」

お気楽な台詞を吐きながら教室に入ってきた1人の上忍が反省する様子もなく、愛想笑いで誤魔化した。

「いや、本当に参るよね、迷子って。そんじゃ改めて自己紹介をって……」

「ず〜ん」

「ず〜ん」

「ふんっ」

教室に入るや否や、3人中2人がどんより状態の異様に驚きを隠せなかった。

「え?何、この状況?」











遅刻上忍に連れられた3人は、アカデミーの屋根に集められていた。

逆立てた銀髪をした長身痩躯。口元全体を覆うマスクを装着し、額当てをずらして左眼を覆う上忍。そんな彼を改めてよく観察してみるが、それで遅刻した理由がわかるわけでもなかった。

「そうだなぁ……。まずは自己紹介してもらおうか」

と言われた矢先、カミトが質問を繰り出す。

「どんな感じで言えばいいんです?」

「そうだな。好きな物、嫌いな物、将来の夢とか……そんな感じで」

「なら、まずは先生が自己紹介してくれませんか?」

初めて会う上忍に興味津々なカミト。

「俺か?俺は《はたけカカシ》って名前だ。好き嫌いをお前らに教える気はない。将来の夢って言われてもなぁ……。趣味は……ま、色々だ」

まるで意味のない自己紹介の上、結局わかったのは名前だけ。呆気に取られた3人だが、気を取り直して自分たちの自己紹介が来るのを待った。

「次はそっちの番だ。まずはお前から」

カカシの人差し指に差されたカミト。

自分が指名されたことを認識したカミトは自己紹介の言い分を暗記するように考え、わずかに緊張の色を見せながらも話し始めた。

「名前は、千手カミト。好きな物……と言うより趣味は、草笛、読書、料理。嫌いな物は色々あるから、追々に教えるってことで。将来の夢はまだ決め兼ねているけど……目標はある」

この時、カミトは真剣な表情を剥き出し、強い口調で言う。

「誰もが認めてくれるような忍になること!」

「……なるほどね」

思っても見なかったカミトの人物像に、カカシは心を打たれた。

(こいつ、なかなか面白い成長をしたな)

10年近くもカミトを見ていなかったが、純粋な心を持ち合わせていることに感心した。

「よし、それじゃ次」

今度はサクラに向けて人差し指を指した。自分の出番を待ってました、という感じで自己紹介を始める。

「名前は春野サクラです!好きな物はぁ……て言うか、好きな人はぁ……。因みに将来の夢も言っちゃおうかなぁ……きゃ〜!」

1人で勝手に盛り上がるサクラに、カカシは呆れそうだった。

(この年頃の女の子は……忍術より恋愛だな)

いよいよ最後に残った者に指を差す必要はなかった。

「じゃあ、最後」

「名は……うちはサスケ」

渋々と自己紹介を始めた。

「嫌いな物はたくさんあるが、好きな物は別にない。……それから……夢なんて言葉で終わらせる気はないが、野望はある。一族の復興と……ある男を必ず……殺すことだ!」

場の空気が一気に暗くなり、カミトは何か恐ろしく冷たいものを見た気がした。

(……一体、お前の身に何が起きたんだ?)

(サスケ君ってやっぱりカッコいい)

サスケの影に潜む恐ろしい野望に、サクラは気づいた様子もない。それどころか、ある意味でのサスケの魅力にまた惹かれた。

(やはりな……)

サスケが殺したい男のことを知るカカシには、その野心から不穏な物を感じ取っていた。そういう意味ではカミトも同じだった。

「よし!3人とも個性豊かで面白い!明日から任務やるぞ!」

「どんな任務ですか?」

サクラの問いに、カカシは率直に答えた。

「まず、この4人だけであることをやる。忍なら誰もが通る道……サバイバル演習だ」

「サバイバル演習?」

《任務》ではなく《演習》をすると言った。当然、3人とも理解が追い付かなかった。

「任務で演習やるんですか?演習ならアカデミーで散々やったのに……」

サクラのもっともな問いに、カカシは即座に答えた。

「これはアカデミーでやったような生温い演習じゃない」

「と言うと?」

カカシは薄気味の悪い笑みを浮かべている。

「ちょっと先生?何がおかしいんですか?」

「いや……まぁ、これ言ったらオマエら絶対引くから」

「「「?」」」

カカシの意味不明な答えに3人とも疑問を浮かべる。

「オマエら3人を含め、卒業生27名中……下忍として認められるのはたったの9名。残り18名はアカデミーに戻される。つまりこの演習は、脱落率66%以上の超難関テストだ」

「「「っ!?」」」

カカシからのあり得ない言葉に、その場の空気が一瞬にして凍りつく。

「はははっ!ほら引いた」

「なら、なんのための卒業試験だったんですか?」

面白がるカカシに対し、サクラは当然の疑問をぶつける。

「あれか?あれは下忍になる可能性のある者を選抜するだけ」

あまりに率直すぎる答えに、3人は呆気に取られて言葉を失った。そんな3人のことなど気に留めず、カカシは無責任な口調で説明を続ける。

「とにかく、明日は演習場でオマエらの合格、不合格を判定する。忍道具一式持って朝5時に集合するように。ああ、それと……朝飯は抜いて来いよ。じゃないとお前ら……吐くぞ」

最後の一言を、カミトは恐ろしく受け止めた。

(吐くって……そんなにヤバい演習なのか?)

「じゃあ、解散」

3人に伝えるべきことを伝えたカカシは、ドロンと姿を消した。

(……アカデミーに戻ったとしても、また不登校生活を送るだけなんだろうが……やっと忍として大きな一歩を踏み出せたんだ。……乗り越えてみせる)

(この演習で落ちたら、サスケ君と離ればなれになっちゃう。これは愛の試練だわ!)

(……やってやる)

3人はそれぞれ決意を固めた。











サバイバル演習、当日。

翌日の朝5時、《第3演習場》に着いた第7班。しかし、さすがに朝5時ではまだ眠く、眼を擦り続ける。

しかし、どういう訳か5時間が経過してもカカシが一向に来ない。太陽は登り、木ノ葉の演習場は晴天に恵まれている。こんな日は、自然と清々しい晴れやかな気分になるものだ。

__これさえなければ。

「やぁ諸君、おはよう」

「「おっそ〜い!!」」

カミトとサクラは、ようやく到着したカカシに対して言おう言おうと思っていた台詞を一斉に吐き出した。

本を読んでいたカミトは、それほど時間を長く感じなかったが、時刻はすでに10時を回っている。さすがにこれでは抗議の声を上げずにはいられない。

「集合時間は朝5時って言ってましたよね!?」

「そうよ!5時間も遅刻するなんて冗談じゃないわ!!」

2人の意見はもっともである。サバイバル演習が行われるこの日、カカシが前日に間違いなく集合は朝5時と言った。しかもよりにもよってカカシ自身が遅れたのだから、2人が怒るのは当然である。

「いや〜、ここに来る途中で道に迷ってるおばあさんがいたもんだから……」

まるで子供のような言い訳をするカカシに、カミトは素直に納得した様子で、さっきまでの腹立ちがパッと消えた。

「なるほど、それなら仕方ないですね。お疲れ様でした」

「あなたバカなの!?嘘に決まってるでしょ!絶対寝坊よ!」

結局、カカシが遅刻する理由は皆無。

「はいはい、そこまで。そんじゃ、演習の説明するから」

自分が原因だというのに悪びれもせず、カカシは演習の説明を始める。

タイマー時計を12時にセットすると、ポーチから2つの鈴を取りだし3人の前にぶら下げて見せた。

「ここに2つの鈴がある。これを俺から奪い取ることが試験だ。制限時間は12時までの約2時間。もし時間内に鈴を奪えなかった者は、昼飯抜き。あの丸太に縛りつけた上で、俺が目の前で弁当食うから」

カカシはビシッと演習場に並び立つ、3本の丸太を指差した。

朝飯を食べるな、という理由が今やっとわかった。カカシの悪意たっぷりの説明に、3人はようやく騙されたことを知ると、急激に腹の虫が鳴るのを感じた。

「でも、なんで鈴が2つだけなの?」

空腹で顔色が悪いサクラの問いに、カカシは悪戯っぽく笑みながら答える。

「2つしかないから、最低1人は丸太行きになる。そいつは、任務失敗ってことで失格。つまり、アカデミーに戻ってもらう」

(これじゃまるでチーム内の争いじゃないか)

(この中から1人!?絶対落ちるわけにはいかないわ!)

(そういうことか。……嫌な野郎だぜ)

3人は皆、突きつけられた課題の厳しさに言葉を失いそうだった。そんな3人の様子など気にも留めず、カカシは余裕な口ぶりで続けた。

「手裏剣使ってもいいぞ。俺を殺す気で来ないと、取れないからな」

「でも!危ないわよ先生!」

確かにこの演習は、アカデミーの演習とはまったく違う。本当に命を懸けた過酷な演習の内容に、サクラは困惑しそうだった。

「いいのいいの。どうせオマエらのへなちょこ手裏剣なんか当たる訳ないんだからさ」

カカシの余裕な態度にサクラはそれ以上何も言えなかった。

すると突然、カミトが声を上げ、カカシに意見を述べる。

「先生、この演習の内容は理解しましたけど、納得はできません」

「納得できないって?」

頭を傾け、カカシの頭上にクエスチョンマークが浮かび上がった。

「せっかく班を編成して仲間になったというのに、まるで互いを蹴落とし合うみたいじゃないですか。忍者にとって大切なのは、チームワー……」

カミトがそこまで言いかけた途端。

「はい!!そこまで!!」

カカシが今までにない大声でカミトの言葉を無理矢理遮った。これ以上カミトに口を開かれると、この試験の真の目的が露呈(ろてい)しそうだった。

(今のは危なかった。こいつ、なかなか鋭いな。この試験の本当の目的に、気づいていたりして……?)

ここに来てカカシは、3人を混乱させるためにわざと挑発した。

「世間じゃ、実力のない奴に限って競争するのを嫌がるものなんだよね。ま、落ちこぼれはほっといて、よーいスタートの合図で始めようか」

カカシの言葉に、3人が一気に身構える。カカシの挑発が頭に来たのか、カミトだけは真剣にカカシを睨みつけている。

「それではスタート!」

シュバッ!

カカシの合図に一斉に3人ともが風を切り飛び去った。
 
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