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偉いつもりが

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第三章

 二人で食事をよそった、その間奥野は怒っていたがそれでもだった。 
 その感情を抑えて御飯までよそってだった、食堂の端で椎名と向かい合って座って食べはじめた。そこでだった。
 椎名は奥野にだ、こう言った。
「あそこで怒ったら」
「かえってか」
「奥野さんが言われますよ」
「怒ったら負けか」
「はい、そうです」
「難儀だな」
「自衛隊ばそういうの五月蠅いですから」
 暴力やそうしたことにだ。
「怒ったら駄目ですよ」
「ああした時はか」
「はい」
 そうだというのだ。
「絶対に」
「わかってるけれどな」
 奥野にしてもだ、彼も普段は冷静だ。
「それでもな」
「あれはですね」
「ないだろ」
 こう椎名に言った、怒りながら食べている。
「あんなのは」
「そうですね、私もです」
「そう思うよな」
「だって食事をよそうのも」
 それもというのだ。
「給養班の仕事ですから」
「そんなの他の部隊じゃしてるぞ」
「はい、船でも航空隊でもそうですよね」
「そうだよ」
 教育隊からすぐにここに勤務になった椎名に話した。
「普通はな」
「この教育隊はちょっと、ですか」
「確かに飯炊き何処でも威張ってるけれどな」
 給養班への蔑称も出した、とかく奥野は給養員が嫌いだ。彼は自分のその感情を理解しつつさらに言った。
「しかしな」
「さっきのはですね」
「列出来て料理の前にいてもだからな」
「よそわずにお喋りしてて」
「あれはないだろ」
「完全に職務放棄してますね」
「ふざけるな」
 奥野は忌々し気な顔でこうも言った。
「本当にな」
「まあ奥野さんはちょっと」
「怒り過ぎか?」
「そうは思います」
 椎名はそんな奥野に忠告もした、どう見ても個人的感情に基づいて感情的になっているからだ。
 だがそれでもだ、椎名は公から考えて奥野に同意していた。
「けれど職務放棄ですから」
「あれはな」
「やったらいけないですよ」
「そうだよな」
「はい、本当に何様なんでしょうか」
「飯炊きが飯作るのは当然だろ」
 また給養員への蔑称を出した。
「それで偉いとか思うな」
「食事をよそう人が来ないから働かないとか」
「余計にないだろ、本当にふざけるな」
 奥野は起こりながら食べていた、そしてだった。
 彼は当直室に戻って自分と一緒に当直についている幹部と兵士にこのことを話した、すると幹部も顔を顰めさせて言った。
「それは確かにね」
「酷いですよね」
「うん、困ったことだね」
「あんな連中何とかしないと」
 奥野は当直室でも怒って言っていた、怒りは収まっていない。
「駄目ですよ」
「そうだね、ちょっと報告しておこうか」
「お願します」
「私からもね、ただそれで怒るのは私達よりも」
 幹部は若い三尉だ、パイロットだが今は航空隊勤務を一時離れて教育隊勤務になっているのだ。 
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