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体重の秘密

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第三章

「君のは上半身のだよ」
「そっちの脂肪率ですか」
「そう、下半身、ウエストとか足はね」
「特にですか」
「深刻にはついていないよ、君は水泳をしているよね」
 女の先生が事務的に話していくが口調自体は温かい。
「いつもお水の中にいるから」
「あっ、だから」
「身体を冷やさない様にね」
「脂肪がですか」
「つくんだよ」
 自然にというのだ。
「それはね」
「そうだったんですか」
「そう、だからね」
「私の脂肪率はですか」
「身体全体についているから」
「じゃあ太ったのは」
「今は三月、まだ寒いでしょ」
「それで二ヶ月前は」
 二キロ太ったその時はというと。
「一月で」
「寒かったでしょ、寒い時に毎日温水でも泳いでいたでしょ」
「走ってもいましたけれど」
「自然と脂肪もつくわよ、というかね」
 先生は若菜に聞いた、保健室で自分に話してくれる彼女に。
「痩せた後寒かったでしょ」
「はい、どうにも」
「脂肪が減ったからよ、だからそうしたことまでね」
「考えてですね」
「ダイエットをしないといけないの」
「そうだったんですか」
 若菜は先生に言われてだった、そのうえで。
 自分の身体を見てだ、こうも言った。
「わかりました、それじゃあ」
「そう、ダイエットはね」
「そうしたことも考えないと駄目よ」
「寒いと脂肪がつく」
「貴女食べるのは減らしてないでしょ」
「はい、ダイエットの時も」
「それはいいけれど冬は自然と脂肪がつく」
 寒さを凌ぐ為にというのだ。
「特に貴女はそうした体質みたいだから」
「そういえば夏にダイエットしたことないです」
「そうでしょ、冬はそれでいいから」
「冬のダイエットはしないことですか」
「寒いのが嫌ならね」
「そうなんですね」 
 言われて頷いた若菜だった、それでもう冬にダイエットはしないことにした。実際に冬は太っていたが。
 しかしだ、春になるとだった。
 体重は戻った、それで若菜はある日学校に行く時に家で母に話した。
「もう冬にダイエットはしないから」
「あれっ、そうするの」
「ええ、何か先生に言われたら冬は脂肪がある方がいいからって」
 その分体重が増えてもだ。
「いいっていうから多少位ならね」
「そうするのね、今度からは」
「ええ、じゃあもうね」
「そうよ、変に神経質になってもね」
「よくなみたいね」
「だからね、冬はダイエットしないで普通にいくわ」
 食べてそうして運動をしてというのだ。
「やっていくわ」
「そうしてね、じゃあね」
「今日の晩御飯楽しみにしてるから」
「今日はステーキだから」
 若菜の好きなそれだというのだ。
「果物も一杯あるし」
「そうなの、じゃあ楽しみにしておくわね」
「そうしてね、よく食べてよく動く」
「変に体重や脂肪率のことは気にしないで」
「そうしていってね」
 こう娘に言って送り出した、送り出された若菜も明るい笑顔で学校に行った。


体重の秘密   完


                   2017・11・22 
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