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提督はBarにいる・外伝

作者:ごません
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サラトガ救出作戦~青葉の受難?~

 どうも、恐縮です!重巡洋艦・青葉ですぅ!青葉は今、何故かビデオカメラ担いでスカイダイビング中です。正直言って何の罰ゲームかと。青葉の背中には青葉の所属している鎮守府の司令がいます。何で戦場に指揮官が出てきてるのか、って?そりゃ頼りになる戦力だからですよ!青葉じゃ勝てる気がしません。そんな事を考えている間にも、地面がグングン近付いて来ます。ウチの司令の方針で、鎮守府に所属している艦娘は皆白兵戦の訓練をしてます。その中に今回みたいな落下傘降下……簡単に言えばスカイダイビングの訓練もありました。でも、青葉この訓練が大の苦手だったんです。どんどん近付いて来る地面に激突するんじゃないかとか考えちゃうと、オイル漏れ(意味深)してないか心配になります。まぁ、今回は司令がパラシュート開いてくれるので大丈夫でしょ……多分。

「うっし、とっとと避難民とかサラトガが捕まってる所を探すぞ」

 何事も無く着地。着地したのは島の中央よりやや東寄りの森林地帯の中でした。事前調査によると、この島は常からトラック泊地の物資集積所兼レーダー基地のように扱われていたらしく、東の海岸沿いに港湾施設が建築されており、そこから中央にある山の頂上にあるレーダー観測所までの間の森林地帯の中にポツポツと高射砲陣地や住宅地等が存在するようです。恐らくですが、サラトガさん達や避難民の皆さんが捕まっているとするならば、東の港か住宅地の何処かに押し込められていると考えるのが普通です。そしてこの司令、そんな敵地のど真ん中に降りてるじゃないですか!何してんの!?




「あの~、司令?どうやって探すんです?」

「とりあえず、敵もアホじゃねぇ。恐らくだが……脱走や侵入者を警戒して歩哨が歩いている筈だ。そいつらの行動パターンを見て、敵のいる辺りを割り出す」

 成る程、すごく合理的な気がします!

「……ってやりゃあいいんだろうけどなぁ。上陸部隊の選抜メンバー血の気の多い奴だらけだったからなぁ、上陸と同時にドンパチおっ始めたらそれどころじゃねぇやな」

 うわぁ、凄くわかりやすい。そしてほぼ確実にそうなるだろうなってフラグが立ちましたよ。そしてその懸念は的中しました!青葉と司令が着陸して数分後、港の方から銃撃戦みたいな音と、爆発音が聞こえて来ました。見ると港の方から黒煙が上がってます。

「ありゃ重油のタンク発破しやがったな。ったく、ウチの鎮守府の資源じゃねぇからって容赦ねぇな」

 全くもって同意します、司令。っていうか難民救出のはずなのに騒がしくしてどうすんですか!?普通こういう作戦って見つからないように静かにやるんじゃないんですか!

「ま、しゃーねぇやな。俺が好きにやれって言っといたし!」

 原因司令じゃないですかぁ!ツッコミが追い付きませんよコレ。だれか助けてください。

「で、どうするんです司令?手順滅茶苦茶ですけど」

「そうだなぁ……恐らくだが今の騒ぎに敵さんが引き付けられるだろうから、こっちは森の中の住宅地を捜索。その上で遭遇した敵は出来る限り排除って感じかな」

「つまり?」

「サーチ&デストロイ!って奴だな」

 あぁ、やっぱり司令は通常運転でした。完全に大暴れする気満々ですよこの人。青葉はその様子をカメラに納めればいいわけですね?わかります。司令は煙草に火を点けて、ぷかぷかふかしながら散歩でもするように歩き出しました。慌ててその後ろを追いかけます。

 森林地帯の中を進みながら、遭遇した敵は司令一人で葬ってるんですが……一言言わせて下さい。司令は本当に人間ですか?だって、敵がこちらに気付いていない内にそっと後ろに回り込んで、刀を背中側からブスリとやったり、首をキュッと絞めた後で思いっきり首を捻ってます。かと思えば正面で対峙した時には敵の砲撃を躱して突撃し、膝を蹴り砕いて頭を斬り落としてます。どこのバーサーカーですか、正直敵さんが憐れに思えてきました。

「てか司令、砲撃なんてどうやって躱してるんですか?」

「あぁ、あれは敵の砲口を見て、その射線に入らないようにしてるだけだ。この近距離なら砲撃はほぼ直線に飛んでくるからな……射線にさえ入らなければ回避なんて楽勝だよ、っと!」

 そう言いながら司令は片手で構えたショットガンをぶっぱなします。狙っていたのは敵の偵察機……どうやら、近くに空母が潜んでいるようです。司令が言っていた回避方法は、言うのは簡単でも実行できる人なんてそうそう居ないと思うんですがね?

「三笠教官の突きに比べたら、あんなの温い温い。ノーモーションからいきなり目の前に突きが飛んできてたりするからなぁ……アレに比べたら可愛いもんだ」

 以前からちょくちょく聞く三笠教官の逸話。これって本当なのでしょうか?元帥……いえ、先代元帥の付き添いでたまにいらっしゃるのを見ても、美人の奥様って感じの印象しか受けないんですが。司令曰く、

『アレは擬態だ。敵が油断して襲いかかって来るのを待ち構える為の擬似餌……中身は中〇主水もビックリの剣客だぞ』

 と、若干青ざめて語ってましたっけ。余程怖い目に遭わされたんでしょうね……司令の言葉を信じるなら。そんな事を考えつつカメラを回していると、司令の大暴れっぷりが本当に凄いです。今もヲ級が振り回した杖?を刀で受け止めて、腹に膝蹴りを入れてます。態勢が崩れた所で腰からアーミーナイフを抜いて、首筋をスパッと切り裂いてます。何かを確かめるような感じで戦っているのを見ると、どうやら人間の急所が通用するのかを確認しているようです。何だかその作業は酷く事務的で、見ているだけで背筋が寒くなった気がします。





「さて……小休止にすっか」

 ナイフに付いた血を払い、腰の鞘に納めた司令が青葉の隠れている茂みの中に戻って来ました。どうやら、青葉の手荷物の中に食糧や飲み物も入っているようです。食糧は司令お手製のサンドイッチ……しかも2人分ありますよ!青葉も食べていいんですかコレ!?ってかもう食べてますけど!

「一応無理矢理お前を連れてきたからな。バイト代の代わりにはならんかも知れんが……そのつもりでな」

 司令が持っていた魔法瓶の中身はホットのコーヒー。司令のサンドイッチも相俟って、戦場なのになんだかピクニック気分です。

「そういえば……司令って柔道がベースの割に変な戦い方ですよね?」

 そう、前々から疑問だったのです。司令が昔格闘技……柔道をやっていたのは知っていますが、何だかそれだけじゃないような違和感?を感じていました。投げた相手の胸部に肘打ちを決めたり、関節技の掛け方も抑え込むというよりも関節その物を壊すような技の掛け方をしてます。当然、両方柔道のルールでは反則のはず。どこでこんなに実戦的な技を身に付けたんでしょうか?

「あ~……何というかな。俺が柔道を教わってたってのは、半分位嘘なんだよな」

 気まずそうにBLTサンドをかじりながら、提督がそう言いました。

「どういう事です?半分位嘘って」

「俺が柔道を習ってた師匠な……実は専門は柔道じゃなくてな?戦国時代辺りから伝わる古武術の継承者だったんだ」

「それってアレですか、ケ〇シロウ的な?」

「流石にあんなマネは出来ねぇがな。ガキの頃は普通の柔道を教わってたんだが……どうやら俺は筋が良かったらしくてな、中学の頃からはもっと実戦的な、相手を殺すような技なんかも教わってんだ」

 いや、それ十分凄くないですかね?

「ま、その時に剣術とか槍とかの扱いなんかも少し教わってな。それが活きてんのさ」

 そう言ってコーヒーを飲み干した司令は、再び茂みから出て周囲の気配を探りながら進んで行きます。青葉、司令の強さの秘密を少しだけ知れた気がします! 
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