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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第六章 Perfect Breaker
  光の先に


『今戦に、侵入者が発覚いたしました。よって、全兵は直ちに戦闘を終了し―――――』


戦場にアナウンスが響き渡る。
兵士たちはざわめきながらもその指示に従い、武器を降ろして砦へと向かって行っていた。


だが、そんな中



「あなた・・・・何者?」

「ん~、まだそれは言わない、って言われてるからなっ」

冷や汗を流す観鈴に、男は腕を後ろに回して笑う。
その背後の丘からは、リコッタの率いる砲撃隊が砲口を向けているにも関わらず、だ。


「撃ってもいいけど、当たらないよ?」

「そんなことは・・・」

「やめておいた方がいいぞ」

そんなことはない、と反論しようとするエクレールに、往人が止めに入る。
観鈴を一番見てきた彼だからこそ、相手の力の力量は大体図ることができた。


「お前・・・・どういう動体視力だよ」

「厳密にはそれだけでもないんだけど。ま、そろそろあの人が目標を達したらしいし――――」


「待ちなさい!!!」

凛とした声。
その場から逃走しようとした男を、観鈴が即座に回り込んで捕獲にかかる。

男の周囲を、リング状に衝撃波が襲い掛かる。

だが、それを悉く回避し、通常ならば飛び込まない隙間に飛び込み、彼はその全てを見切った。


「これにて失礼っ」

ボンッ!と煙玉を投げつけ、自らの姿を隠す。
それが晴れた時にはもう、軽快なその男はいなくなっていた。


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「はぁ・・・はぁ・・・・・」

「聖剣を担いし騎士王・・・・なんだ、この程度かい」

「なんだと!!」

「うぉ・・・っつっても、いくらなんでも相手が悪い。俺のこの身体は傷つかないようになってんだし」

「なに・・・・・?」


自分の体をさすりながら、男が笑う。
もともと怪我をしないこの土地だが、ダメージが全くないのはそう言うこと。

「出来れば、次はちゃんと戦いたいね」

「待て!!」

ドゥンッッ!!!


身を翻す男に、セイバーのストライクエアが叩き込まれた。
それは確かに命中し、セイバーにも手ごたえがあった。

しかし


『目くらましどーも。じゃあ~』

「・・・・・くッ!!」

その土煙を利用され、まんまと逃げられてしまう。
セイバーは自分の失態に、地面を殴りつけることしかできなかった。



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「理樹!!」

叫び、森を駆ける蒔風。
今彼がいるのは、「EARTH」陣地側の森。

左右にある森だが、理樹がいるのがこちら側なのはわかっている。


だがだからこそ、今こうして森を問題なく「走り抜けている」事が問題なのだ。



(理樹は砦前に立体迷路を敷いていたはず。それがないってことは、それを維持できないほどの相手か――――)

「行かせないぜ!!銀白の翼人!!」

「な!?」


思考し、森をかける蒔風。
その眼前に、いきなり人影が現れた。

蒔風は知らないが、先ほどまでヴィヴィオ達の相手をしていたあの男である。


「邪魔だ!!」

当然、蒔風がその男を相手にするわけもない。
蒔風は軽く跳躍し、目の前の顔面に膝蹴りをブチかましにかかる。

そのままこいつの顔面を踏み、先に進むつもりだ。


「効かんン!!」

「なに!?」

しかし、蒔風のそれは効かない。
男のヘッドバッドが同時に炸裂し、蒔風の身体が一瞬浮いたのだ。


「そ・・・・」

「お?ブッ飛ばないのか。なかなかの威力だったんだな」

ダァンッッ!!!

「ブッ!?」

バガンッ!!!


浮いた蒔風を見て男が感想を述べたのち、蒔風の身体は男によって叩き落とされた。
まるでハエ叩きのように振るわれたその掌をまともに喰らい、蒔風の身体が地面にめり込む。


「ゴホっ!」

「怪我しない世界でよかったなぁ!」

(まったくだ・・・じゃなきゃ肋骨全部イってたぞこれ!?)


相手の力量を、あの再生の男と同じほどだと見た失策。
想定外の攻撃力に、蒔風の脳が揺れる。

「だが足止めは成功。もう少しなんだ。じゃますんな」

『そうもいかん』

「な・・・・に?」

他にいないか、と周囲を見渡す男だが、聞こえてきた声に足元を見やる。
そこにいたはずの蒔風はおらず、声が森全体から響いてくる。


『じゃあな』

「あの一瞬で離脱するのかよ・・・・・・・」

蒔風がすでにその場におらず、自分には捕捉できないことを悟った男は連絡端末を取り出して話しかける。
二言、三言交えたのち、茂みの向こうへと男も姿を消す。




一方

「くっそ・・・・!!」

ダメージを抱えたまま、蒔風が理樹の気配を察知してその方向へと向かう。
もはや半分飛ぶかのように状態で森を抜け、蒔風がその中で理樹を発見した。


「理樹!!」

「舜!?」

蒔風が飛び込んできたとき、理樹は腕を抱えて血を流していた。
その理樹の傍らにしゃがみ込み、小指ほどの小瓶でその血を掬い取る、別の男。


「・・・てめぇか」

「やあ、蒔風」


敵意を剥きだす蒔風に、まるで長らく知っていた間柄のように声をかける男。

「今はこれ以上、彼に危害を加えるつもりはないから安心してくれ。ああ、君の仲間に差し向けた彼らか?君がこうして来ないよう、足止めしてもらっていたんだよ」

聞かれる前に、聞かれるであろうことを答えておく男。
蒔風には、この男の真意が今ひとつ読み取ることが出来なかった。


(嘘はついてな――――)

「嘘はついてないよ。それは君ならわかる事だろ?」

「・・・・」

まるで思考を読まれたかのような、奇妙な感覚。
否、もしかしたら本当に―――?


「お前の目的はなんだ・・・・」

「当面はこれで済んだよ。あとはこれらを使って実行するだけだ」

「なに?」


そう言って、男が懐から取り出したものを蒔風は見た。

木の枝、カラスの羽根、光の入った小ビン、パンフレット、赤いリボン
そして―――理樹の血

それら六つが光り、地面に六芒星の陣を描いていく。


「あまり目の前でやるのもあれなんだけど・・・・どうも、心が昂ぶって待ちきれないんだ」

ゴォッッ!!


魔法陣が回転し、突風が吹き荒れる。
その風に理樹が飛ばされ、蒔風が受け止めた。


気付く。
理樹の――――血・・・・


「血だと!?」

「そうなんだ・・・あいつ、この世界なのに――――!!!」

そう。本来なら、ここで血が流れるはずがないのだ。
いくら喰らっても、身体には疲労感。大ダメージなら、衣服がはじけ飛ぶ。


だと言うのに、この男はフロニャ力のあるこの大地の上で、血を流させて見せたのだ――――


「フロニャ力に変動はなかったか?」

「全然・・・あいつ、それがあるうえで攻撃をしてきたんだ・・・・!!」

「ああ。だってそうして油断してないとさ、理樹はガード硬すぎるのだもの」

「気安く・・・呼ぶな!!」

蒔風の時と同じように、気軽に声をかけてくる男。
そうしているうちに魔法陣の回転が高まり、六つのアイテムから光が空に伸びる。


見上げて、蒔風がそこで見慣れたありえないものを見た。


「グレーの・・・オーロラ・・・・!?」

世界の越え方にはいくらか方法がある。

時空管理局のように、科学技術の航行で
個人の持つ能力や渡航力を使って
翼人のように、ゲートを開けて

そして、真上にいまあるのは

ディケイドやディエンドの使う、灰色のオーロラそのものだった。


「バカな・・・お前、仮面ライダーか!?」

「え?違う」

まただ。
軽く返してくる言葉。嘘のない言葉。

蒔風の頭が完全にこんがらがってきた。


すると目の前のアイテムの光が一つに束なり、オーロラに向かって伸びて行った。


「少女よ・・・やはり最大世界にいるのか・・・・」

そう呟き、ふわりと浮いて素性のオーロラに向かう男。
唖然としながら、蒔風がそれを睨み付ける。


「追ってきてもいい、と言うのがこの構図なんだろうけど、できれば来てほしくない。邪魔をされると困るんだ」

「ッッ!!」


そして、蒔風の目の前でオーロラが閉じる。
我に返った蒔風が、即座に通信機を「EARTH」につなげる。


「空に光が見えないか!?」



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最大世界。
そう呼ばれるこの世界は、実に広大だ。

遠くには自然に包まれた「トゥスクル」
大都会と言えば「ミッドチルダ」
工業の街を挙げるなら「ミッドガル」
世界に誇る大都市「東京」

その中に、「EARTH」本部ビルもある。

大きな世界になったはいいがその分、そこに暮らす人々も多くなる。
問題も起こるが、特に大きな軋轢は起こっていない。

ただ、困ると言えば


「――――人を探すのが困難なんだよな」



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「蒔風さんから入電!!空に光を見つけたら、即座にその先へと向かってくれとのこと!!通信繋げます!!」

『その先に「少女」がいるはずだ!!いいか――――その少女を見つけ次第保護!!敵とは絶対に「戦闘をするな」!!!』


その通信を聞いた、誰もが驚いていた。

基本、蒔風は命令をしない。
一応立場上の上下はある物の、「EARTH」そのものが本人の言うとおり「蒔風舜の友達集団」に近いため、命令と言うよりはお願いに近いのだ。

その彼が、命令を下してきた。

少女を保護せよ、と言う方は口調からして「誰かお願いだ!」という感じなので命令とは思えないが、後者の方が明らかに命令だった。
彼がここまでして言ってくる、その男とは何者なのだろうか―――?



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[Gate Open---Grand World]

バッ!!

「あいつはどこに・・・・・!!!」

理樹たちを任せ、そのまま最大世界に一人帰ってきた蒔風は、即座に空を見上げて光を探した。

全身が、鈍痛と疲労感に苛まされているが、アドレナリンがそれを打ち消していく。
額から流れる汗を、鬱陶しそうに拭い払う。


そして

「あれか!!」

『舜さん!!あの光はミッドのショッピング街に伸びているみたいです!!』

「近くに誰が!!?」

『私がいます』

『俺もいる!!氷川君も一緒にいるぞ!!』

空に光を見つけ、それが伸びる先を知る。
現地にはティアナが、少し離れて名護、そして氷川がいるらしい。


『人口密集地です!!避難が完了するまで、戦闘は控えてください!!』

「そうじゃなくても、少女ってのを見つけたら逃げろ!!全力だ!!」


叫び、光の方向へと飛翔する蒔風。
耳には彼らの現状が、音のみではあるがリアルタイムで流れてきた。

いくらそれに向かって蒔風が叫んでも、帰ってくる声はない。



『ティアナ君!!』

『名護さん!!氷川さん!!』

『彼女が?』

『はい。この人も一緒に――――』

ドォン!!

『なに!?』

『くっ、ティアナ君は二人を連れて逃げろ!!』

ザ――――

『名護さん!!』

『うぉぉおおお!!!』

ドルルルルルルルル!!
バギョッ!ガシュン――――!!!


『このッ・・・あなたたちは逃げて!!クロスミラージュッッ!!!スターライト―――ブレイカー!!』

・・・・



ザザ


ザザザザザザザザ


ザーーーーーーッ・・・・・・・



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「ッ、みんな!!!」

辿りつく。
場所はミッドチルダの繁華街。

「若者の街」と言うのが、もっとも正しい表現だろう。
様々なビルが並び、様々な店が立ち並ぶ、観光スポットとしても知られる街だ。


だが、誰一人としていないこの状況では見る影もない。
「EARTH」のアナウンスによって市民は避難させられ、この場には誰もいないはず。


しかし


――――ヒュンヒュンヒュンッッ!!ガギッ!!

立体交差する、ビルとビルとをつなぐ橋。
その上を走る蒔風だが、目の前を見覚えのある剣が回転して飛んできた。


飛んできた方向は、この先の曲がり角から。
剣はそのまま、反対側のビルの壁に突き刺さっていた。


「イクサカリバー・・・・?」

わかりきったことなのに、蒔風は疑問形で言葉を漏らす。

わかっている。
今この状況を見て、それがわからない蒔風ではない。

しかし、それでも頭のなかには疑問ばかり。


それがこうして飛んできたということは、つまりはそう言うことだろう。
だがそれを認めたくないとばかりに、蒔風が疑問を持ち――――解決のため、振り向いた。


そこに、答えがあった。




「おや」

そこにいたのは、先ほどの男。
こちらに背を向け、何かを片手で持ち上げて吊るしている。

離れた場所には、体当たりを敢行して吹き飛ばされたのか。ガードチェイサーが炎をあげて燃えている。
さらには下の道路を見ると、パワードイクサーがひっくり返って火花を上げていた。

周囲のビルには、多くの弾痕。それと、いくつかの黒焦げた跡。



男の正面のビルには、クレーターが出来ている。

叩きつけられたのか、ティアナがその下で足を投げ出して座り込んでいた。
クロスミラージュを握り、しかしその指に力は込められない。


氷川は、男の足元後ろに転がっていた。
G3-Xの装甲はバラバラに飛び散っており、もはやアンダースーツしかない。

弾痕の正体であるガトリング・GX-05ケルベロスは、その銃口から煙を上げながら、中ほどで曲げられて沈黙している。


そして、男の腕にはライジングイクサへと強化変身している名護が、首を掴まれ、ぶらりと足を投げ出している。

装甲からは火花が上がり、その効力をすでに失っていた。
マスクは砕け、名護の左顔面が日光にさらされている。



「来たのか?蒔風」

特に驚くことなく、しかし目を見開いて男は言う。
「来てしまったか」と、予想していたがそうなってほしくなかったかのような響きを含んだ声だ。

ガシャン、と脇に名護を落とし、足元の氷川と一緒に押しやった。



「てめぇ・・・・」

蒔風の脳内が、沸々と湧きあがって行く。
その中、男が踵を返して蒔風に向き合う。

チラリと視線だけを後ろに回し、ビルの影を見る。


「動くな!!(ジャカッ)」

蒔風がどこから出したのか、即座に銃を構えて男に銃口を向ける。

そして、男の視線の先から大体を察する。


「そこに「少女」ってのがいるのか・・・・」

「だから邪魔しに来てほしくなかったんだ。面倒になるのは目に見えていたから」

「じゃあ甘んじてそれを受けていくんだな。ここで終わりだ」

「ところがまあ・・・・そうでもない!!(ブゥワッ!!)」


男が羽織っていた上着を翻す。
それと同時に蒔風が左手にも銃を取りだし、一斉に発砲した。

が、男の上着はマントのようにまで伸び、その体を銃弾の嵐から守った。


蒔風は右手の銃を撃ちきるとそれを捨て、左手のマシンガンのみを撃ち続けながら右手はポケットから何かを取り出した。
それは極細の、しかし超強靭な繊維―――糸だ。

先端には、極小の鎌のような刃がついており、蒔風が口で加えてビィンと伸ばした。


そしてそれを投げるかのように振るい、先端の鎌が男に向かって伸びていく。



銃弾をマントで受けながらも、それを察した男は少しほくそ笑んだ。



面倒と言うのはなにも―――――できない、と言うわけじゃないんだぜ。蒔風。




to be continued
 
 

 
後書き

タイトル詐欺入りました!!
全然イメージと違う!!不思議!!

蒔風
「でもなんでもねぇよ」


立体交差の町って描写が難しい。
ああいう構図って見てて楽しい。

首都高とか

ミッドの町は変体的で面白そう。



狙った少女は一体誰なのか!?
と言うかこの男の能力はなんだ!?

・フロニャ力を無視(無効ではないらしい)
・魔法?(六芒星)
・世界を越えるオーロラ(彼自身はディケイド系ではないらしい)
・G3-X、イクサ、ティアナを完封する実力

やばい、自分でも何が何だかわからない。

そこ、G3-Xは仕方ないって言うな。
アギトとかに隠れてるけど、かなり強いんだぞ!G3-X!!

アギトの中では氷川さんが好きです。
「ただの・・・人間だ!!」


強さの話


武闘鬼人のイメージ(イメージなので確定ではないですが、多分このままいくと思います)

強さの位置づけコンセプトは「赤銅以下ですが、チートとしては赤銅以上」です。
言ってる意味が分からない?

私も何となく言ってます。あくまでイメージですので。
単純にHPとかステータスがバカ高い敵ではなく、特性とか手順を踏まないと勝てないタイプです。

ようは赤銅よりも厄介、と言うことです。
比べる相手が悪いだけで、もちろん強いですが。



というか、他のメンバーの戦興行シーンすっ飛ばしたなぁ・・・・・
楽しみにしていた人、ごめんなさい。




ショウ
「次回、守るべき対象の少女とは」

ではまた次回
 
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