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シークレットガーデン~小さな箱庭~

作者:猫丸
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シレーナの封じた過去編-終- 

意識が朦朧としてなんだか気だるい。体は横になっていて暖かくふかふかしているものに包まれている感じがする。ベットか何かに横になっているのかな。

「ん……」

薄っすらと瞼を開けると、すぐに目の前いっぱいに割り込んできたのは

「おっはよーーーーー!」
「うわっ!?」

ドアップされたランファの笑顔だった。しかも耳がキーンとして痛くなる、大声つき。
驚き過ぎておもわず、ベットから飛び落ちてしまった。

「ランファ?」

いったた…と尻餅をついて痛い腰の辺りを優しくさすりながら、起こしに来た人物の名前を言ってみる。

「うん。ランファだけど…どうしたの?ハトが豆鉄砲くらったような顔して……」

……。ランファの馬鹿みたいな言動を見ていると、今まで自分が悩み考えていたことが一気に馬鹿らしく感じて来るから不思議だ。
色々な想いや感情が爆発し、気づけば

「ランファ!このっ!」
「きゃっ。なっなにっ!? くすぐったいってば」

ランファにぶつけていた。体をくすぐるという形で。互いをくすぐり合って二人はは数分笑った。なにも考えずに、童心に返って無邪気にお互いをくすぐり合った。

「はぁ…はぁー。こんなに笑ったの久しぶり~」
「ははっ、僕もだよ」

さすがに休憩なしでずっとくすぐり合うのは疲れた。あと息継ぎ無しで笑い続けるのは自殺行為だと今日初めて知りました。笑いすぎて息できない。死ぬ。死んでしまいます、これは。
なるほど、これが笑い死にというものなのでしょうね、うん。

「……も、もうええかのぉ~?」
「あっ! ジェームズお爺さん!?」

聞いた事のあるお爺さんの声がするな、と思えばそれはジェームズ爺さんでした。少し開けたドアの隙間からルシアとランファを見ています。
見られたッ! 先ほどのお馬鹿な遊びをジェームズお爺さんに見られてしまったっと一気に我に返りカァーと顔が熱くなるルシアをよそにランファは平然と

「居たなら参加すればいいのに~」

と言っていましたが

「いやっさすがにジェームズさんには無理あるから……」

と、ツッコミを入れます。

「ワシも若ければ…」
「え?」

何やらドアに隠れてボソボソとお爺さんが呟いているようですが、ここは無視しておきましょう。たぶんここで絡むとろくなことにならない、とルシアの中にいる天使がささやきます。
プリンセシナで大きく成長した、させられたルシアは人の話をスルー出来るようになったのだ。
ある意味のところではパピコのおかげだろうか?

「一言御礼を言いたくてのぉ~」
「お礼ですか?」
「わーい、おれい~」

お礼と聞いて両腕を振り上げて、喜びを表現しているランファの事は置いといて。
お爺さんの方へ視線を向ける。少し間があった後

「……シレーナを助けてくれてありがとうじゃのぉ」

と言われた。助けた。確かに結果論で言えば、ルシアがシレーナを助けた、という事になるのだろう。
ルシアが彼女のプリンセシナに行かなければ、遅かれ早かれシレーナは穢れと呼ばれる、意思の無い暴れるだけの化け物になってしまう所だったのだから。

「いえ…僕は……」

でも救う手段がそれしかなかったとはいえ、無許可でシレーナの心の中に入ったことに後ろ髪が引かれる思いだ。
罪悪感で素直に御礼を言われられない。

「二度も救われた。なにかしたいんじゃがのぉ」
「そ、そんなの…」

申し訳なさ過ぎてお礼なんていいですよ、結構ですよ、と断ろうとしたルシアの前に

「……ヨナちゃん探すの手伝う」
「シレーナ?」

白いフリルのついた女の子らしいワンピースと茶色い大き目のリュックを背負い、長い旅行でも出かけそうな人の恰好のシレーナが仁王立ちしていた。
あまりにもデンッと構えていたので、一回呆気にとられてなにも言えなかった。
が、よくよく考えたら心配かけたくないからと、ヨナが連れ去られたことは誰にも言わないようにしていたことを思い出した。

「いやっ手伝うって…」

とシレーナに言いつつ、隣に座る少女Rをチラリと横目で見てみると「~~~♪」口笛を吹いてそっぽを向いていた。…ああ、やっぱり犯人はこの子か。と納得。
もう一度シレーナの方を向いて

「でもこれは僕の問題だし。…それにシレーナ病み上がりだし…」

丁重にお断りする。だっていつまでかかるか分からない旅。楽しい事ばかりじゃないだろうし、さっきみたいな危険な事もあるだろう。
そんな旅にこれ以上、無関係の人を巻き込みたくない。

「ワシも止めたんじゃがのぉ」とお爺さんもしょぼーんと独り言のように言っているけど、見てわかる通り、まったく効果はなかったようだ。

「行く」

硬い決心の炎がメラメラと燃えている。大人しくあまり自己主張がないシレーナなのだが、昔からこうと決めたことは頑として聞かない、貫き通す、頑固な一面がある。
今回そのレアな一面が発揮されてしまったわけだが…、これは何を言っても無理なパターンですね。そうなんですね、はいっとお爺さんとアイコンタクトとり、大きくため息をついて

「危険な旅になるかもしれないよ? それでも…」
「…医者は必要」
「………」

うん、確かにそうですね。旅の途中で怪我をしても、ルシアとランファでは、出来たとしてもせいぜい応急処置くらいまで。
専門的な知識など微塵もありません。どこかで病気になって行き倒れるのがオチでした。

「よろしくね、シレーナ」
「うん。よろしく」
「わーい仲間が増えたー!」


ルシアの差し出した手に自分の手のひらを合わせシレーナは固い握手をかわした。これから長い、長い旅の新しい仲間が出来たことに大喜びのランファはベットの上でジャンプジャンプと飛び上がり大はしゃぎっ。

今すぐ行こう! と言いだすランファを抑えて、出発するのは明日の朝にした。
やはりお別れの挨拶回りや、旅の準備など色々することがあるためだ。
夜。一人自室へ戻ったシレーナは窓を開け、ふわっと入って風に綺麗な髪をなびかせ、暗黒の夜空を照らす様に綺麗に輝く星々を見上げ

「お父さん、お母さん。…ありがとう。私、もう大丈夫だよ……。もう一人じゃないよ。安心してね」

と、小さく呟くと窓を閉めて電気を消し、ベットの中に沈み静かに夢の中へとおちていきました。


-シレーナの封じた過去編-終
 
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