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工業高校哀歌

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第三章

「俺達がなるんだ」
「女装してか」
「そうしてか」
「俺達が女子になってか」
「それで代わりになるんだな」
「これならいいだろ」
 落合は仲間達にこうも言った。
「校長も怒らないだろ」
「ああ、扇風機壊さないな」
「自分の拳でな」
「あの人怒ったらとにかく怖いからな」
「周りに誰も近寄らない位にな」
「その校長も怒らない」 
 落合はまた言った。
「そう思うしな」
「そういえば校則でも」
 生徒会書記の牛島壱彦が言ってきた、細い顔で目もそうだ。背はあまり高くなく一見すると穏やかな感じだが工業科屈指の喧嘩上手だ。
「あれだな」
「女装するなと書いてないだろ」
「幸いうちの学園は色々な制服があってな」
 牛島は八条学園の特徴も話した。
「そこから着る服を選んでいいしな」
「俺達もそうしているしな」
「ああ、そうだな」 
 見れば落合は旧帝国海軍の詰襟の士官用軍服の様な黒い前をホックで止める制服で牛島は濃紺の七つボタンの詰襟だ。他の面々もそれぞれの服を着ている。
「そして男子がどうとか女子がどうとかもな」
「書いていないか」
「だからな」
「俺達が女装してもか」
「校則違反にならない」
 牛島はこのことを指摘した。
「校則を全部、細かいところまで読んだが」
「そうか、それじゃあな」
「それは大丈夫だ」
 女装、それはとだ。牛島は落合にも他の面々にも話した。
「安心しろ」
「そうか、わかった」
「じゃあ女装か」
「ああ、校則も問題ないならな」
 それならとだ、落合はまた言った。
「それでいくぞ」
「よし、決まりだな」
 こうしてだ、彼等は自分達が女装をしてそうして女子生徒の少なさを補うことにした。だがその話を聞いてだった。
 星野は全校集会の時にだ、今度は壇を派手に持ち上げて床に思いきり叩きつけたうえで破壊して暴れ回ってからマイクを手に取り真っ赤な顔で言った。
「常識で考えろ」
「駄目ですか?」
「女装するなって校則に書いてないですよ」
「それでもですか?」
「駄目ですか?」
「校則で書いていなくても常識があるだろうが」
 星野は生徒達に答えた。
「女装なんて論外だ」
「折角いいと思ったのに」
「そうなんですか」
「常識で駄目ですか」
「そう言われますか」
「明日から女装して登校する奴はわしの前に来い」
 星野は額をぴくぴくとさせつつ宣言した。
「じっくりと教えてやる」
「わかりました」
「校長がそう言われるんでしたら」
「俺達もしないです」
「そうします」
「とにかく女装も駄目だ」
 この星野のこの考えは変わらなかった。 
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